JST(理事長 濵口 道成)は、科学技術分野(エネルギー分野、環境分野、システム・情報科学技術分野、ナノテクノロジー・材料分野、ライフサイエンス・臨床医学分野)における俯瞰調査を実施し、その結果をまとめた「研究開発の俯瞰報告書(2017年)」を作成し、公開しました。
わが国の科学技術振興とイノベーション創出に向けた研究開発戦略を立案するうえでは、その土台として、科学技術分野のトレンドを把握し、今後科学技術がどのように発展していくのかを見通すことが必要です。JST 研究開発戦略センター(CRDS)ではこのような問題意識のもとに、科学技術分野ごとに俯瞰調査を行い、2年ごとに報告書として発行してきました。
今回作成した「研究開発の俯瞰報告書(2017年)」では、注目する168の研究開発領域について、国内外の研究開発動向の詳細や科学技術的・政策的課題等とともに、日・米・欧・中・韓等の国際比較の情報などをまとめました。さらに、俯瞰調査の結果から浮かび上がった「世界の技術革新の潮流」、「科学技術における日本の位置づけ」、「日本の挑戦課題」を抽出しました。その主なポイントは以下のとおりです。
- ● 世界の技術革新の潮流:情報技術の進展が科学技術の革新のスピードを速めるだけでなく各分野における研究開発のパラダイムシフトを起こしていること、SDGs(持続可能な開発目標)のような人類的課題への科学技術の貢献の期待が増していること、科学技術の世界では精緻化・先鋭化が進み、膨大な知識の蓄積を社会にどう生かせるかというシステム化の考え方が重要になっていることが把握されました。
- ● 科学技術における日本の位置づけ:日本の相対的地位の低下が懸念される一方で、日本が世界にリードする研究・技術開発として、蓄電池や燃料電池、耐熱材料、温室効果ガス観測衛星、情報セキュリティーにおける暗号技術、物質創製・材料設計技術や計測・分析技術、免疫研究やiPS関連研究などを特定しました。
- ● 日本の挑戦課題:各分野の革新的な基礎研究・開発課題のほか、AI/IoT時代の到来に伴う技術革新や計算・データ科学系の研究者の育成、技術革新の進展や社会ニーズへの対応を見据えた研究開発基盤の整備が急務だと導き出しました。
JSTでは今回浮かび上がった検討課題をさらに深掘り調査・検討していきます。また、本報告書が政策立案にたずさわる関係者とともに、研究者、政治家、企業人、学生など関係するステークホルダーの方々にも大いにご活用いただくことを期待しています。
公開URL
- (概要版)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-08.html - (エネルギー分野)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-02.html - (環境分野)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-03.html - (システム・情報科学技術分野)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-04.html - (ナノテクノロジー・材料分野)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-05.html - (ライフサイエンス・臨床医学分野)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-06.html - (主要国の研究開発戦略)
https://www.jst.go.jp/crds/report/report02/CRDS-FY2016-FR-07.html