氏名 |
機関名 |
所属部署名 |
役職名 |
研究課題名 |
米田 忠弘 |
東北大学 |
多元物質科学研究所 |
教授 |
低次元ナノマテリアルと単一分子の振動分光・ESR検出装置開発 |
重川 秀実 |
筑波大学 |
大学院数理物質科学研究科 |
教授 |
フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡技術の開拓と極限計測 |
下山 雄平 |
北海道教育大学 |
教育学部函館校 |
教授 |
多量子遷移ESRによる巨大分子の構造解析 |
高田 昌樹 |
(財)高輝度光科学研究センター |
利用研究促進部門I |
主席研究員 |
反応現象のX線ピンポイント構造計測 |
高柳 邦夫 |
東京工業大学 |
大学院理工学研究科 |
教授 |
0.5Å分解能物質解析電子顕微鏡基盤技術の研究 |
並河 一道 |
東京学芸大学 |
教育学部自然科学系 |
教授 |
高いコヒーレンスをもつ軟X線レーザーを利用した新固体分光法の構築 |
五十音順に掲載
総評 : 研究総括 田中 通義(東北大学 名誉教授、東北大学多元物質科学研究所 研究顧問)
新機能性物質等の開発には継続的に大きな資金が投入され、多くの成果がありました。その一方において、物質開発に必要な評価・分析技術には十分な手当てはなされてきませんでした。研究手法、技術の開発が重要なことは、スキャンニングトンネル顕微鏡(STM)の発明が、その後どのくらい波及効果をもたらしたかを見れば明らかです。またノーベル賞の多くが研究の方法開発に対する受賞であることも再認識する必要があります。資金投入の方向性のために、装置開発を主目的にしてきた多くの研究室が方向転換を迫られ消滅していきました。一度消えた日を再度点火することはほぼ不可能に近いと言えます。
やっと機器開発の重要性が再認識され、今回、計測・分析基盤技術の研究領域が立ち上げられたことは、評価技術・装置の開発を頑張って続けてこられた研究者にとって光明のはずです。研究の成果がナノ計測・分析の基盤技術で世界をリードするものでなければならないことは当然ですが、これまで、こつこつと努力していながら日の当らなかったあるいは注目されてこなかった計測・分析技術の研究者に配慮し、勇気付けるような採択に心がけました。
本領域はこれまでの研究領域とは異なり分野横断型の領域であるため、異なる分野の研究に序列をつけなくてはいけないという困難な作業を迫られました。将来もっと分野を絞った評価・分析技術とその装置開発の研究領域が立ち上げられるようになれば、もう少し単純化され明快な審査が可能になるはずで、そのような方向に科学政策が進んでくれることを願わずにはいられません。
採択の基準として、手法に新規性があって世界に先駆ける計測・分析基盤技術の研究、今後世界標準になりうる計測・分析技術の研究、従来技術を高度化するものであっても、それによって新しい展望が開ける研究、世界的な競合関係にあって推進しなければならない研究、近未来に社会への成果還元につながる研究かどうかなど、いろいろな視点があり、選考はこのような多様な判断基準を考慮して行いました。
申請金額は総額10億円までとされておりますが、研究計画や研究体制のコスト対成果のバランスにも留意し選考しました。来年度以降もこのような方針で選考する考えです。採択した課題の助成金額につきましても研究班の構成等を精査し、厳しく査定しました。
今年度の応募は122件あり、10名の領域アドバイザーに書類審査をお願いし、12件の提案を選択し、最終的には面接審査を行ってアドバイザーの採点をもとに合議して6件の提案を採択しました。採択テーマの内分けは、X線回折1件、電子顕微鏡1件、軟X線レーザ1件、走査探針顕微鏡2件、電子スピン共鳴1件でした。いずれも分析技術、装置開発に十分実績のある研究者に率いられた極めて質の高い提案でした。
その結果、採択されてしかるべき提案も相対的評価のために落とさざるをえないという状況になりました。また、採用に至らなかった提案の中にも、画期的、意欲的な研究構想がありました。そのような研究は次年度以降に採択できればと思います。しかし、一方で提案の中には、本研究領域の趣旨からかけ離れた提案もありました。また物質・材料開発が主眼の提案や、すでに開発が済んでいる要素技術を複合化する提案も多くみられました。提案は先進的であっても本当に実現可能とは思えないものもありました。
来年度以降も、今年度と同様の方針で選考したいと思いますが、特に、今年度に採択できなかった分野からの研究提案を期待します。
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