JST(理事長 中村 道治)は、国際科学技術共同研究推進事業(SICORP)注1)「日本-米国共同研究」において、米国国立科学財団(NSF)注2)と共同で「ビッグデータと災害」に関する36件の共同研究課題の募集および審査を行い、平成26年度新規課題として以下の6件を決定しました(別紙1)。
(1) 「災害対応・復旧のための人間中心型状況認識プラットフォーム」
(研究代表者:国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授 北本 朝展、
南カリフォルニア大学 統合メディアシステムセンター 所長 サイルス・シャハビー)
本研究は、災害への対応において意思決定者が直面する情報欠乏問題と情報過剰問題を解決するため、多様な関係者間での情報収集・解析・共有を支援する人間中心型状況認識プラットフォームの実現を目指すものです。
(2) 「災害時応用のための効率的かつスケーラブルなビッグデータの収集・解析・処理」
(研究代表者:大阪大学 情報科学研究科 准教授 原 隆浩、
ミズーリ科学技術大学 計算機科学科 教授 サンジャイ・クマー・マドリア)
本研究は、災害時において膨大なデータの収集・解析・処理を可能とする基盤技術を確立することで、災害・防災に関する情報活用を飛躍的に改善し、防災計画の立案、災害時の避難経路などの検出、救助活動などの応用を支援することを目指すものです。
(3) 「乱流中におけるスカラー源探索アルゴリズム最適化のためのビッグデータ数値実験室」
(研究代表者:東京大学 生産技術研究所 講師 長谷川 洋介、
ジョンホプキンス大学 機械工学専攻 准教授 タマー・ザキ)
本研究は、災害時において有害物質が環境中に放出された場合を想定し、乱流物質拡散の数値シミュレーションにより得られるビッグデータの解析を通じて、放出源特定のアルゴリズムの開発、実証を目的とする。
(4) 「スマートフォンを用いた緊急通信ネットワークの動的な構築・進化メカニズム」
(研究代表者:会津大学 産学イノベーションセンター 准教授 王 軍波、
テンプル大学 コンピューター・情報科学部 教授 クリシュナ・カント)
本研究は、通信基盤が損傷した際に、通信基盤の未損傷部分および専用通信機器などを利活用した緊急通信網について、Twitterと緊急時アプリから収集したビックデータを分析することで、ネットワークの状況と進化を把握し、緊急通信網の適用範囲や通信能力などの最大化を目指すものである。
(5) 「ビッグデータ解析と強いネットワークによる災害への準備と対応」
(研究代表者:国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 教授 計 宇生、
アリゾナ州立大学 コンピューティング・インフォマティクス・ディシジョンシステムエンジニアリング学部 教授 グォーリアン・シウェ)
本研究は地震や水害などの大規模災害に対処するための有効な手段と信頼できるメカニズムの提供を目的に、ビッグデータ解析と頑強なネットワーク構築を独創的なアプローチによって目指すものです。
(6) 「被災官民ネットワークにおけるデータ駆動型の重要情報交換システムの開発」
(研究代表者:東京大学 空間情報科学研究センター 特任准教授 ソン・シュアン、
フロリダ国際大学 コンピューターサイエンス学部 教授 タオ・リー)
本研究は、災害時の情報配信・分析において、情報の受け手個人が固有に持つニーズや、情報の背景にあるコンテクストや状況に対処・適応できる、インテリジェントなソリューションを開発しセキュリティや災害時の救助への応用を実現することを目的とする。
今回の選考では、応募のあった36件について、日本と米国双方の科学技術の発展を目的として、日本側および米国側の専門家による評価を行い、その結果をもとにJSTおよびNSFが慎重に評価・協議を行い、新規課題を決定しました(別紙2)。
今回採択した各研究チームは、日本と米国の研究者グループで構成され、研究アプローチや独創性、チームの相乗効果や研究分野に与える影響などさまざまな評価基準を考慮し、選出されました。研究期間は支援開始から3年間を予定しています。