<用語説明>

注1)量子もつれ 複数の粒子間に量子力学的な相関がある状態。量子絡み合いともいう。量子もつれを持つ粒子間では、一方の粒子の状態と他方の粒子の状態を独立に切り離して考えることはできず、一方の状態を測定すると、空間的に離れた他方の粒子の状態も定まってしまう、この特異な性質を利用して盗聴されない(量子暗号)量子情報通信や、現行のコンピューターで1万年かかる計算を1秒でやってしまう量子計算などで非常に重要な役割を果たす。
注2)光子 光の量子。光量子ともいう。光の持つ量子情報である偏光状態などは外乱に強い。この情報保持能力を生かした量子情報通信が期待されている。
注3)2光子吸収 物質に光を照射したとき、光子のエネルギーが電子のエネルギーに変換され、光子が消滅する現象を光吸収と呼ぶ。通常は、個々の光子が独立に吸収される過程(1光子吸収)が支配的であるが、レーザーのような強い光を用いると、一度に2個の光子が吸収される過程(2光子吸収)が観測されるようになる。本研究では、2光子吸収を用いて励起子分子(注5参照)を直接生成(共鳴励起)した。
注4)励起子 半導体が光によって励起され生成された電子と正孔がクーロン力で結合したもの。水素原子のような離散的エネルギー準位をもつ。
注5)励起子分子 上述の「励起子」が2個で相関を持ったペアになった状態。最も安定な励起子分子は、励起子の角運動量(スピン)が互いに逆向きになって結合したものである。励起子分子から放出される光子は、2個の励起子の角運動量を反映した量子もつれをもつことになる。
注6)量子トモグラフィ 量子的な状態は、起こりやすさの分布や量子相関の強さなどを視覚的に表すことができる「密度行列」と呼ばれる量で表現される。この密度行列を測定によって求める方法を量子トモグラフィという。トモグラフィとは,医学の分野で盛んに用いられている断層写真術と同義である。
注7)忠実度 量子もつれの程度を評価する量のひとつ.英語ではFidelity.最大の量子もつれを有する状態にどれだけ近い状態かを数値で表す.最大の量子もつれをもつ理想的な場合は忠実度が100%であり,全く量子もつれをもたない古典的な状態では,忠実度は最大でも50%にしかならない。
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