【語句説明】

注1)炎症性サイトカイン: 病原体の生体内への侵入があった際、自然免疫系は炎症反応を惹起することにより病原体を排除させる。炎症反応の原因となる液性因子が炎症性サイトカインである。病原体の侵入がTLRファミリーにより察知されると、細胞内シグナル伝達分子が活性化され、炎症性サイトカインが産生される。その結果、発熱などの炎症反応が惹起され、細菌などの病原体が排除される。
注2)Toll様受容体(TLR)ファミリー: ショウジョウバエにおいて真菌感染に対する生体防御反応に必須の受容体であるTollと相同性のある哺乳動物の受容体で、現在TLR1-TLR11までの11種のファミリー分子が報告されている。それぞれのTLRが、病原体の構成成分を特異的に認識することが明らかになってきている。例えば、TLR4はグラム陰性菌に存在するリポ多糖やウイルス由来のタンパク質、TLR7/8はイミダゾキノリン誘導体やウイルス由来一本鎖RNA、TLR9は微生物由来のDNA(CpG DNA)を特異的に認識する。
注3)病原体の構成成分: 病原体に特有に存在し、ヒトやマウスには存在しない構造成分で、グラム陰性菌のリポ多糖、微生物由来のCpG DNA、リポタンパク質、ウイルス由来の二本鎖RNAなどがその例である。各病原体の構成成分は、TLRにより特異的に認識され、自然免疫系の活性化を誘導する。
注4)I型インターフェロン(インターフェロン-α/β): サイトカインの一種で、特に抗ウイルス活性を有するサイトカインとして知られている。ウイルスに感染した種々の細胞から産生される。
注5)形質細胞様樹状細胞: ウイルス感染やTLRリガンドの一つである微生物由来CpG DNAによりインターフェロンαを多量に産生し自然免疫応答の増強に関与する樹状細胞の亜集団。
注6)TIRドメインを有するアダプター分子群: 細胞内に存在する分子で、TLRファミリーの細胞内領域と相同性の高いTIRドメイン(領域)を有する。MyD88は、TLR3を除く全てのTLRが認識する病原体の構成成分に対する炎症性サイトカイン産生に必須の分子である。TRIFはTLR3、TLR4からのシグナルにおいてMyD88非依存的に誘導されるインターフェロンβの産生に必須の役割を果たしている。TIRAPはTLR2、TLR4からのシグナルにおけるMyD88依存的経路に位置し、TRAMはTLR4からのシグナルにおけるTRIF依存的経路に位置する。
注7)IRFファミリー: 多くのインターフェロン誘導遺伝子のプロモーター領域に存在するIRF-EおよびISREと呼ばれる領域を標的とする転写制御因子ファミリーである。末端のアミノ酸部分において高い相同性を示す因子であり、これまでにIRF1-9までの9種類が報告されている。特にIRF3はウイルス感染やTLR3、TLR4からのシグナルにより活性化されインターフェロンβ遺伝子の発現を調節している。一方、IRF7はインターフェロンα遺伝子の発現誘導に関与していると考えられているが、その分子機構は不明である。
注8)TRAF6: TRAFファミリーに属するアダプター分子であり、IL-1受容体やTLRからのシグナルにおいてMyD88の下流に位置するシグナル伝達分子であり、炎症性サイトカインの産生に必須の分子である。
注9)ユビキチンリガーゼ活性: タンパク質にユビキチンを結合させる酵素活性。タンパク質のユビキチン化はタンパク質分解の誘導やシグナル伝達分子の活性化といった多様な生物活性を持つことが示されている。近年、TRAF6はユビキチンリガーゼ活性を有することが示された。
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This page updated on September 8, 2004

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