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別紙4

平成26年度 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

環境・エネルギー分野 研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

研究課題名 持続可能な資源開発実現のための空間環境解析と高度金属回収の融合システム研究 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
石山 大三
(秋田大学 国際資源学部 教授)
相手国名セルビア共和国 主要相手国
研究機関
ボール鉱山冶金研究所
研究課題の概要

世界では産業に必要不可欠なレアメタルなどの資源需要の増大による資源開発の活発化とともに、広域的な環境汚染が資源の安定供給に対する阻害要因となりつつある。本研究では資源開発の行われている地域において、先進リモートセンシングデータと地表データを組み合わせた3次元的な環境評価・解析と高度な金属回収技術を融合し、持続的な資源開発に不可欠な、開発と環境との両立を目指した広域環境評価修復システムの研究開発を行う。具体的には、資源開発により環境への深刻な影響が広域におよんでいるセルビア共和国において、鉱業廃棄物の拡散と環境汚染の評価および高度な金属回収技術の適用による、鉱業廃棄物や廃水の無害化と資源化のための実証を踏まえた上で、鉱山地域における環境の評価修復システムを構築する。

環境・エネルギー分野 研究領域「低炭素社会の実現に向けた高度エネルギーシステムに関する研究」

研究課題名 インドネシアにおける地熱発電の大幅促進を目指した蒸気スポット検出と持続的資源利用の技術開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
小池 克明
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
相手国名インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
バンドン工科大学
研究課題の概要

低炭素化社会の実現のために世界的に地熱発電への需要が急増しており、火山国であるインドネシアでも地熱資源利用の急速な促進が国策として掲げられている。しかし、発電に適したサイトを特定するためのボーリング調査のコストが高く、その促進を阻害している。この問題の解決、および環境調和型の地熱発電の稼働を目的とし、本研究では①リモートセンシング・地球化学・鉱物学での最先端手法を統合して発電に最適な蒸気スポットを高精度で検出できる技術、②地熱発電所周辺の広域環境モニタリング技術、③長期にわたる地熱エネルギーの持続的利用・産出を可能にするための最適化システム設計技術、の3つをバンドン工科大学などと共同で開発・実証する。

研究課題名 高効率燃料電池と再生バイオガスを融合させた地域内エネルギー循環システムの構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
白鳥 祐介
(九州大学 大学院工学研究院 / 水素エネルギー国際研究センター 准教授)
相手国名ベトナム社会主義共和国 主要相手国
研究機関
ベトナム国家大学 ホーチミン市校 ナノテク研究所
研究課題の概要

ベトナムの持続的社会経済の発展のためには、電源構成の多様化を通じた安定的な電力供給と省エネルギーの推進が不可欠である。本研究では、バイオエネルギーで作動する高効率燃料電池を開発することにより、①従来の小型エンジン発電機の倍以上の発電効率の達成が期待できること、②発電システムの簡素化・コンパクト化により地域住民が簡単に利用できること、③廃棄物系バイオマスを地産地消のエネルギー源として適用できることに着目している。国際共同研究を通じて、有機性廃棄物由来のバイオガスの直接供給で作動する燃料電池を導入した、当該地域社会への受容性が高いエネルギー循環システムを構築し、地球規模のエネルギー・環境問題の解決に貢献する。

生物資源分野 研究領域「生物資源の持続可能な生産・利用に資する研究」

研究課題名 ベトナム在来ブタ資源の遺伝子バンクの設立と多様性維持が可能な持続的生産システムの構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
菊地 和弘
(独立行政法人 農業生物資源研究所 上級研究員)
相手国名ベトナム社会主義共和国 主要相手国
研究機関
農業農村開発省 畜産研究所
研究課題の概要

ベトナムは、ミニブタの原種地であり世界第4位の豚生産国である。しかし、経済発展に伴う外国品種の導入により、山間地域で古来、飼養されている希少品種豚の絶滅が危惧されている。本研究は、繁殖・生殖工学技術を活用した希少品種豚の維持(ジーンバンクシステムの構築)を主たる目的とし、山間地域の小規模養豚農家の振興を通じた純品種の維持・増産に取り組む。また、安全な移植用代替臓器として期待されるブタ内在性レトロウイルスに感染していないミニブタの発掘およびベトナムから他国への医用動物の販売の可能性を探る。単なる食肉材の生産という形から、高付加価値な医用動物の生産という道を現地に残すことを目指す。

研究課題名 乾燥地に適応した魚種・作物種を用いたアクアポニックスによる水の有効利用と持続的食料生産 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
山田 智
(鳥取大学 農学部 准教授)
相手国名メキシコ合衆国 主要相手国
研究機関
メキシコ北西部生物学研究センター
研究課題の概要

乾燥地域では、水資源が乏しい上に過剰な潅漑や施肥により土壌の塩類化が進行し、同時に地下水の塩分濃度が上昇し作物の生産性が急速に低下している。この負の連鎖は、研究対象国のメキシコでも引き起こされている。本研究では、養殖と農業を結合させるアクアポニックス法を導入する。まず塩分を含む地下水を用いてその塩分濃度に適した魚種の養殖を行い、次にその排水を利用して、塩分を吸収する特性をもつ作物を栽培することにより水質浄化をはかる。最後に浄化された水を作物露地栽培に利用する。このような乾燥地に適した新しいアクアポニックス法により、水資源の量・質の改善と農水産物の安定的な生産を同時に実現する。

防災分野 研究領域「開発途上国のニーズを踏まえた防災に関する研究」

研究課題名 コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
熊谷 博之
(名古屋大学 大学院環境学研究科 教授)
相手国名コロンビア共和国 主要相手国
研究機関
コロンビア地質調査所
研究課題の概要

南米大陸の沈み込み帯に位置するコロンビアは、1906年の超巨大地震(M8.8)や1985年のネバドデルルイス火山の噴火など、地震・津波・火山噴火による災害を繰り返し受けてきた。この研究課題では、南米大陸で先進的に地震・火山観測を進めてきたコロンビアの防災関係機関と連携し、地震・津波・火山の監視能力の高度化、太平洋およびカリブ海の沈み込み帯における地震・津波発生ポテンシャルの評価、ボゴタ市における強震動被害予測などの研究開発を、理学と工学の最先端の知見を融合させて包括的に行う。これらの研究を通して、コロンビアの災害軽減技術を向上させるとともに、周辺諸国との連携を通して南米における災害研究の進展に貢献する。

研究課題名 ミャンマーの災害対応力強化システムと産学官連携プラットフォームの構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
目黒 公郎
(東京大学 生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 教授・センター長)
相手国名ミャンマー連邦共和国 主要相手国
研究機関
ヤンゴン工科大学
研究課題の概要

本提案課題では、ミャンマーの安全な都市の形成とそれを基盤とする安定的経済成長に貢献すべく、ハード・ソフト・人材育成の各面から同国の災害対応力を強化するシステムを開発する。急速かつ大規模に変化する同国の都市開発に対応すべく、これらの変化が将来の洪水と地震の災害脆弱性におよぼす影響をシナリオ解析するとともに、その被害軽減策を提示する。そして、ヤンゴン工科大学に産学官連携のコンソーシアムを設立し、研究成果の相手国政府および産業界での導入を進めるとともに、大学から継続的に人材が輩出される環境を構築する。最終的には我が国の産業界を含めた国際連携の推進を目指すビジネス・プラットフォームを運営する。

感染症分野 研究領域「開発途上国のニーズを踏まえた感染症対策研究」

研究課題名 結核症撲滅へ向けた宿主と菌のゲノム情報の統合的活用 研究期間 4年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
徳永 勝士
(東京大学 大学院医学系研究科 教授)
相手国名タイ王国 主要相手国
研究機関
タイ保健省医科学局生命科学研究所
研究課題の概要

タイ国はWHOが指定する結核高蔓延国22ヵ国に含まれ、結核症撲滅対策のニーズが高い。すでにタイ国との共同研究では、ゲノム全域の多型解析法や次世代シークエンサーなどの新しい技術を活用して、宿主と菌の両方のゲノム解析を進めてきており、アジアでは最大規模の研究ネットワークを構築し、国際的な結核症に関するゲノム全域のメタ解析に参加している。本提案課題では、宿主と菌のゲノム情報を統合的に解析し、タイ国において結核症患者の発病危険度の予測プログラムを開発する。さらに、ゲノム薬理学的研究から、副作用を回避した有効な結核症の治療法と予防法を開発する。これにより、タイ国内にとどまらず日本を含めて国際的に応用可能な結核症撲滅対策の構築を目指す。

研究課題名 インドネシアの生物資源多様性を利用した抗マラリア・抗アメーバ新規薬剤リード化合物の創成 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
野崎 智義
(筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授)
相手国名インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
インドネシア技術評価応用庁 バイオテックセンター
研究課題の概要

本研究では、インドネシアの有する極めて多様な生物資源の価値と、微生物から新規薬剤を創成する日本の知的基盤と最先端技術とを融合し、マラリアを始めとする地球規模で重要な感染症の制圧に不可欠な薬剤を開発する。具体的には、マラリアと赤痢アメーバ症に対する新しい薬剤の創成を目指し、インドネシア国内の多様な放線菌・糸状菌資源などを利用し、酵素阻害活性と抗原虫活性をもつ新規阻害剤の探索、精製、構造決定を行う。さらに、大量生産・動物実験により薬効が高く、原虫への選択毒性の高いリード化合物を選択し、企業との共同研究により社会実装を目指す。

研究課題名 地球規模飛行オオコウモリを対象とした狂犬病および関連ウイルスの網羅的解析とその防圧 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
本道 栄一
(名古屋大学 大学院生命農学研究科 教授)
相手国名インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
ボゴール農業大学
研究課題の概要

狂犬病を代表とする狂犬病関連感染症(リッサウイルス感染症)は、全世界で毎年3万5千から5万人の死者を出している最も危険なウイルス感染症の1つである。統計に上る数は氷山の一角ともされ、世界規模の対策は急務である。リッサウイルスの自然宿主として、食肉類の他、近年コウモリが注目されるようになった。本研究では、数千キロにおよぶ地球規模の飛行能力をもち、広範囲にウイルスを散布する可能性のあるオオコウモリに焦点をあて、インドネシア共和国研究機関と共同で世界最高速レベルの網羅的ウイルス解析システムの構築を行う。得られた情報をもとに新規の遺伝子組換えリッサウイルスワクチンを開発し、同感染症の防圧をはかる。