研究領域 「資源循環・エネルギーミニマム型社会システム技術」

 

1.

総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域が存在したことの意義・メリット)

 

 本研究領域は総括して、人類の最大の課題であるとともに研究総括の最大関心事でもある「地球温暖化抑止」に直結するテーマばかりであり、本研究領域で進めてきた熱の高効率利用(コージェネレーション)や水素利用など、それら全ては「地球温暖化抑止」へ帰着するものと考えられる。また、成果発表の場であり、一般にも公開されたシンポジウムでのアンケートからもこの領域への理解者が社会に定着したことも認められる。

 一方、このような大きなテーマの研究は全体で何を目指しているのかを、節目ごとに議論・確認しながら前進させることや、国際的な研究の中での位置づけを確認することも必要であろう。また、領域全体としては、それぞれの成果をインテグレートした総体として、社会にどのような寄与ができ得るのかを十分にまとめておくことも必要であろう。

 なお、本研究領域が科学技術政策として存在したことにより、その後の科学技術イニシアティブ(例えば燃料電池、バイオマス等)に好ましい影響を与えたという側面も、何らかの形で将来まとめられることが望まれる。

 

 

2.

研究課題の選考(アドバイザーの構成、選考方針及び課題の選考、課題のバランス等)

 

 人類がこれまで創り上げてきた文明は、資源の大量消費に支えられており、その結果大気汚染や水質汚濁、地球温暖化などの環境問題を引き起こしている。人類が持続的な発展を維持するためには、資源の循環利用やエネルギーの効率的な利用、つまり大量消費社会の是正を図る以外に方法は無い。

 そこで本領域は、エネルギーを有効利用する方法、つまりミニマムのエネルギーで最大の効果を生む研究を対象とした。期待した奇想天外な提案はやや期待に反したようだが、アドバイザーを交えて、17倍以上の応募数の中から課題を厳選した。結果として、比較的若く意欲的な研究者による独創性豊かな“実験的研究”ばかり16件が採択された。これは、アドバイザーを含む選考者全員の基本的選考方針であったといえる。

 課題選考において研究総括のリーダーシップが発揮されたことは望ましいものであった。選考前に戦略目標を達成するためのロードマップを作り、これにもとづいて各提案課題のポジショニングを行って選考することにより、全体の整合がより図られたと思われる。また、研究総括が選考方針の中に「地球温暖化抑止」への寄与へのシナリオをより一層明確にしておくことや、提案者が科学技術の発展のフェイズをどのように意識し、研究の中間段階(3年)や終了段階(5年)における戦略目標の達成到達度をどの程度目指しているのかのミッション・ステートメントを提案時に明確にしておくことが必要であったであろう。

 アドバイザーの先生方は、いずれも資源論、あるいはエネルギー論の権威であり、研究者あるいは技術者として社会をリードしてこられた方々が人選されたと判断できる。欲を言えば、各分野の第一線で活躍している人やハードの各論にもたけた専門家をも配置し、個別のハード技術の状況や世界の状況を踏まえた観点からの学術的評価や議論ができる体制があれば、なお充実した体制となったであろう。

 

 

3.

研究領域の運営(研究総括の方針、研究領域のマネジメント、予算配分とチーム構成等)

 

 研究総括はアドバイザーと共に、16課題の研究実施場所を5年間の研究期間中にそれぞれ平均2回のサイトビジットを行い、研究の進捗状況を把握するとともに、成果の公開を推進してきた。16チームの発表論文数は国内・海外合わせて1,074編、口頭発表が2,342編、特許出願件数は国内・海外合わせて84件の多数に上ることからも、成果の公表を重視した指導・運営は効果を上げたと評価出来る。

 一方、「地球温暖化抑止」を最大の目標とする以上、目標達成に向けた体系やロードマップなどの中長期シナリオの中で、各研究テーマがどのような位置付けにあり、どのような温暖化抑止への貢献(量的CO2削減寄与)につながるのかを明確にしていくことも必要であったと思われる。また、研究領域は10年近く続くため、関連研究の進捗によってはロードマップの適宜修正が必要である。そのために、他の研究者や研究機関、国際的なアカデミア、さらに資金提供側の組織の動きを観察して取り纏めた結果を研究総括に的確に伝える役割を担ったメンバーを運営体制中に取り込むという仕組みも考えられたかもしれない。これらを踏まえて、課題中間評価での予算の拡大・縮小も含めた研究の見直しや、課題選択のスクリーニングを行うことも必要であったと考えられる。

 

 

4.

研究結果(研究領域の中での特筆すべき成果、科学技術・周辺分野・国民生活・社会経済等に対する意義・効果に関する今後の期待や展望・懸案事項等)

 

 5年間で最大8億円を超えるほどの大型予算を投入することで実現可能となった大規模な実験などにより、大きな成果を得られた。また、温暖化対策として科学技術を評価する場合には、新しい芽、基礎研究、個別分野の成果、そしてシステムとしての評価とデザイン、実用化にむけての実証などの段階があるが、個別の研究成果としてはきわめて意義の高いものが多いと評価できる。

 一方、研究成果のレベル自体は非常に高いものの、当領域の戦略目標の達成に貢献しているとは言いがたいものも見受けられ残念である。これは、最初の目標設定に明確さが不足していたのではないかと思われる。また、基礎研究もシステム研究もそれぞれ個別研究としては相当な成果を上げているが、個別の研究成果をどのように統合して地球温暖化抑止のシナリオに具体的に寄与するのかという視点が欠けていると思われる。CRESTの成果を社会へ還元する上でも、このような視点での作業・整理が不可欠である。

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This page updated on July 26, 2006

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