研究領域 「エネルギーの高度利用に向けたナノ構造材料・システムの創製」

 

1.

総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域が存在したことの意義・メリット)

 

 本研究領域は、「エネルギー」と「ナノ材料」をキーワードとしており、持続可能な社会の実現に向けて「エネルギーの高度利用」は最重要課題の一つであり、その面からも着実に目的に沿った成果を上げており、この分野の進展に大きく寄与していると考えられる。個々の研究課題の成果を見ても、国際的には最先端レベルにあり、関連分野への指標としての役割も十分に果たしていて、今後もこのまま順調に進展していくものと評価できる。本研究領域からの論文掲載や特許出願の件数も多いが、研究総括が強調する「学術的な基礎研究の裏付けを十分行いながら、インパクトあるアウトカムを目指す。」を実現しており、実用化に向けた産業界との共同研究なども推進されている。より一層の発展を期待したい。

 

 

2.

研究課題の選考(アドバイザーの構成、選考方針及び課題の選考、課題のバランス等)

 

 アドバイザーは総勢10名で、うち5名が企業出身の研究者である。この構成は、基礎研究のみならず応用面にも重点を置いた研究、すなわち、研究成果が世の中に役立つことを重視する研究を目指す(インパクトの大きなアウトカム)という研究総括の明確な方針に基づいている。

 課題の選考基準は、研究代表者として独創性が豊かで熱意溢れることとされており、特に、研究者の熱意に重点が置かれていることは、このような期間が限られたCREST研究においては重要なことである思われる。各課題の設定目標が極めて明確であり、バランス的にも、「光エネルギー変換」、「新しい電池」、「機能材料」の3本の分野で均衡がとれた選考がなされている。

 

 

3.

研究領域の運営(研究総括の方針、研究領域のマネジメント、予算配分とチーム構成、今後の取り組み等)

 

 研究チームをグループ分けして行うオンサイトミーティング、領域全体の研究進捗会議、研究チームごとで行う外国人研究者の招聘、毎年発行されるニュースレター、若手研究員との個別面談等々、研究総括の強力なリーダーシップと明確な運営方針に基づいて、活発な領域運営がなされている。これらを通じて、研究進捗上の方向付けの確認がされて、目的に添った効率の良い研究領域の運営に結びついている。研究領域のマネジメントは、非常にしっかりしていると評価できる。

 予算配分も始めから年度予算全額を配分するのではなく、研究総括とアドバイザーの評価が行われ、高い評価を得た研究グループに一層の成果が引き出されるような重点配分が行われるなど、望ましい運営が行われているといえる。

 反面、今後は研究成果の収穫時期に入るので、研究活動へ集中させる意味を含めて、研究者の報告などの負担を少し軽減してもよいのではないかとの意見もあった。

 

 

4.

研究進捗状況(研究領域の中で生み出されつつある特筆すべき成果、科学技術・周辺分野・国民生活・社会経済等に対する意義・効果に関する今後の期待や展望・懸案事項等)

 

 目的に添った成果が順調にあがっている。特に、材料研究として、磁性半導体チタニアナノシートやコバルト酸化物超伝導体の開発(佐々木ら)、全固体型リチウム電池の開発(金村ら)、高温超伝導体における最高の臨界電流密度の達成(松本ら)など、周辺科学技術分野から大きく注目される成果が上がっている。

 また、可視光水分解に関する研究では、紫外線照射下タンタル酸ナトリウム光触媒による水分解水素発生、硫化物固溶体触媒を利用する可視光による水分解を可能(工藤ら)にし、硫黄廃棄物の還元剤としての有効利用が十分期待される。その他のチームも成果を着実に上げている。これらの成果をもとに、省エネルギー、新エネルギー技術開発の目標を達成されることが、大いに期待される。

 

 

5.

その他

 

 研究代表者に対して研究に対する熱意とリーダシップが求められており、結果として、インパクトあるアウトカムを求めている研究総括の強い意志が反映された選考・進捗管理・資金配分などがなされており、CRESTの趣旨に十分合致した運営が行われている。

 本プロジェクトによる研究推進によって、エネルギー・環境問題に大きく貢献しうる成果が期待される。

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This page updated on July 26, 2006

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