研究領域 「免疫難病・感染症等の先進医療技術」

 

1.

総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域が存在したことの意義・メリット)

 

 免疫、感染は、伝統的に日本による国際的な貢献が大きい領域であり、研究者の層も厚い。本課題では、比較的若手の優秀ないわば働き盛りの研究者を集めて、アドバイザーボードの大御所が指導・鞭撻する構図となっているようであるが、その目的は十分に達成されており、免疫難病や感染症の制御に向けた斬新な治療法や予防法の開発がすでに試みられているなど、総合的に大変高く評価される成果を上げつつあることから、今後当該分野の進展に大きく貢献するものと期待している。

 いずれのメンバーも独創的な基礎研究を展開する中から、治療薬やワクチンの開発を目指しているので、基礎研究と臨床応用研究の両面での進展が期待され、その存在意義は極めて大きい。

 なお、本領域はライフサイエンスの中でも治療法や医療面への応用に近い研究領域であり、基礎研究から実用化への時間的ラッグが比較的短い特色を持つ。このため、残りの研究期間にどの程度の社会貢献が実現するのか大いに注目される。

 

 

2.

研究課題の選考(アドバイザーの構成、選考方針及び課題の選考、課題のバランス等)

 

 領域アドバイザーは免疫難病/感染症分野の最高指導者的立場の研究者より構成され、本研究領域の推進に的確な指導・助言を与えることができる人材である。

選考に当たっては、難治性免疫疾患ならびに感染症制御を研究課題とする中から、独創性と新規性に優れ、且つ、先端的医療法・医療技術の開発に繋がる課題が選択されている。さらに、採択課題はこの分野の第一線を担う研究者によるもので総じてレベルが高く、領域の目指すところも良く反映されており、本研究領域として極めて妥当と判断される。

 また、病原微生物に関しても原虫、細菌、ウイルスと広く網羅されていると共に、免疫学と病原微生物学の接点での研究課題も含まれていて、バランスのとれた課題となっており、選考時点において十分な配慮がなされたものと見て取れる。これらはいずれも現在、医療の分野で新しい治療法の確立が期待されている分野であり、国民的な期待も大きい課題である。

 唯、この研究分野はわが国としては得意な領域であり、且つ裾野の広い分野であると思われるが、その割には競争率が10倍くらいであったのはその理由はともかく、他のCRESTなどと比べ低かったのは意外な感じである。

 

 

3.

研究領域の運営(研究総括の方針、研究領域のマネジメント、予算配分とチーム構成、今後の取り組み等)

 

 現在までのところ研究総括の方針に沿ってマネジメントされ、研究も極めて順調に推進されているようなので、特に問題が有るようには思われない。

 毎年開催する研究成果報告会や総括のsite visitingなどで、研究の進捗状況の評価と今後の進め方が討議され、研究総括の方針に沿った助言(修正・再考)も的確に行われていると判断される。また、メンバー間での共同研究もみられ、課題間での研究協力関係や情報交換も充分に行われていると判断できた。

 予算の配分については、研究総括が個々の課題の進展状況を見て、飛躍的な進展が期待される研究課題に対して予算の重点配分がなされており、妥当な予算執行と思われる。但し、予算配分で多少のメリハリをつけているのはよいが、これについては極端にならないようにすべきとも思われる。なお、経費の配分が細分化されておらず、それぞれの研究代表者のリーダーシップが発揮され易い組織体制を取っていることには好感がもてる。

 

 

4.

研究進捗状況(研究領域の中で生み出されつつある特筆すべき成果、科学技術・周辺分野・国民生活・社会経済等に対する意義・効果に関する今後の期待や展望・懸案事項等)

 

 研究代表者には既に優れた研究を展開してきていた我が国のトップレベルの研究者が選ばれていることもあって、現時点でも幾つもの重要な成果を出していることは高く評価したい。

 感染症の制御に向けた研究では、社会的問題として報道されたインフルエンザウイルスの感染過程の解明に大きく前進した研究、難治の感染症対策への応用が期待される高親和性単クローン抗体作成技術の実用化への展開、赤痢菌・結核菌などの感染に対する自然免疫の一つとしてのオートファジーの役割の発見、エンドトキシン(病原体糖脂質)認識機構の分子レベルでの解明、TLRにより誘導される「抗がん免疫」など世界で最先端の多くの興味深い知見が得られている。

 他方、免疫難病の制御に向けた研究では、IgL受容体、IL-18、セマフォリンなどの新たな免疫制御分子の重要性が解明され、また、制御性T細胞によるアレルギー・自己免疫の発症制御が解明された。上記研究は、感染防御や免疫疾患の治療法開発にも直結する結果と言える。

 さらに、研究成果の論文発表、特許申請、この間の各種受賞者(12名)などからも、本研究グループの順調な進捗状況が示されている。

 従って、このプロジェクトが終了する頃には更なる研究の進展と成果が期待できると共に、「画期的な治療法や医療の創成」の観点から国民が注目する成果を上げることを期待したい。

 ただ、研究課題のスケールに多少大小があり、謳いあげたことをどれだけ実現できるかについてはばらつきもでよう。

 また、全体の中で2課題ほど、非常に基礎的なものがみられていたが、これらについては長期的な視点から見るべきであろうと思われる。

 

 

5.

その他

 

 このプロジェクトはタイトルが技術開発主導型の研究であるかのイメージが持たれるので、今後タイトルを決める時には一考を要する。

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This page updated on July 26, 2006

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