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I.研究の概要
本プロジェクトは、第一の目標として、生命現象を広義の共生系と捉え、遺伝子発現の調節、代謝、神経回路網の形成等に対しシステムとしての解析を加えることによって、システムとしての生物の理解を志向する新たな学問分野として「システム・バイオロジー」という分野の確立を目指す。さらに、それによってもたらされる新たな知見を工学的に応用する新概念の提唱を狙う。同時に、知能を共生系という概念で捉え直した時に、どのような知能の理論が成立し得るかの、探索的研究も行う。
システムバイオロジーグループでは、国際会議や大学等での授業、北野著書「システムバイオロジー」などで、コンセプトの構築と普及を行い、生物システム・シミュレーションシステム、遺伝子ネットワーク・仮説推定システム、システム・バイオロジー・ソフトウエア標準化コンソーシアム、自動細胞系譜特定システム、線虫の発生に関する遺伝子カスケードの特定、Gプロテイン・カスケード・モデル、細胞内タンパク質局在高精度測定システム、ガンの疾病モデル構築等の研究を進めている。また、システムバイオロジー研究の展開を目的とし、この研究領域を指向する研究者の連携・ネットワークづくり、教育、広報活動、普及等を目指す特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構が、2001年4月設立登記された。
共生系知能グループでは、音環境理解・ヒューマノイド認知、二足歩行ヒューマノイド、分散協調システム・災害救助システムカーネル等の研究を進めている。2001年夏には、極めて高い運動性能を有するmorphという新型ヒューマノイドが完成した。産業展開では、二足歩行ヒューマノイドPINOを中心とし、本プロジェクトで生み出された二足歩行ロボットの技術の産業化・技術移転を行う会社、株式会社ZMPが、2001年1月に設立された。また、PINOの技術情報を、Open PINOとして11月22日からGNU GPLライセンスで公開した。これは、ヒューマノイド・ロボットのLINUXプロジェクトを目指した動きである。さらに、国際ロボットデザイン委員会(IRoDA)を設立するなど、ロボット・デザインという新分野の創設という明確な成果展開を行い、デザイン関係者に大きなインパクトを与えた。中心メンバーであった松井研究員は、2001年10月にスピンアウトし、ロボット・デザインおよびサイエンス・プレゼンテーションを専業とする企業、フラワー・ロボティックス株式会社を設立している。
II.研究体制と参加研究者(平成13年11月現在)
| ◆ 研究体制 |
| ・ |
システムバイオロジーグループ |
| 【「生命をシステムとして理解する」というシステムバイオロジーの方法論の確立】 |
| (Tokyoユニット)研究員数:大浪 修一、他3名 |
| (CALTECHユニット)研究員数:John Doyle、他7名 |
| ・ |
共生系知能グループ |
| 【高度知能の研究としてのヒューマノイド・ロボットの開発を通した認知・運動システム的理解】 |
| 研究員数:奥乃 博、他8名 |
| ◆参加研究者(グループリーダー、研究員) ( )内は発足時からの通算 |
| 企業 | 大学・国研等 |
外国人 | 個人参加 | 総計 |
| 0(0) | 1(2) | 7(10) | 5(9) | 13(21) |
III.研究成果の概要(平成13年11月現在)
| ◆外部発表件数 |
| 国内 |
172(論文: 5、総説・書籍:60、口頭発表:107) |
| 海外 |
77(論文:13、総説・書籍: 7、口頭発表: 57) |
| 計 |
249(論文:18、総説・書籍:67、口頭発表:164) |
【発表主要論文誌】
Genome Informatics / New Generation Computing Journal / Journal of Theoretical Biology / Journal of Computational Neuroscience / Artificial Intelligence / Advanced Robotics / AI Magazine /人工知能学会誌 / 日本ロボット学会誌
主な研究成果
| A.システムバイオロジーグループ |
| 1) |
システムバイオロジーのコンセプト構築
国際会議、連載、慶応大学などでの授業「システム・バイオロジー概論」、北野著書「システムバイオロジー」や”Foundations of Systems Biology”(The MIT Press)、http://www.systems-biology.org/の立上げ、2000年11月14日~16日の科学技術振興事業団の国際会議である第一回システムバイオロジー国際会議(The 1st International Conference on Systems Biology;ICSB )の提唱・主宰などを通して、システムバイオロジーのコンセプトの構築と普及を行い、この分野の創設とリーダーシップの確立を目指している。 |
| 2) |
システム・バイオロジー・ソフトウエア標準化
標準化を目指しているSBML(Systems Biology Markup Language)の、レベル1仕様を2001年3月に決定し、レベル2仕様を2002年4月に公開の予定である。この仕様に基づく総合環境システムバイオロジーワークベンチ(SBW)を開発、β版を2001年11月にリリースした。 |
| 3) |
自動細胞系譜特定システム
線虫の発生段階での細胞や核の位置情報を自動的に収集し、細胞系譜などを自動的に生成するシステム。従来10年~30年かかっていたプロセスを数時間に短縮するシステムで、画期的な研究上の展開をもたらす。昨年度後半、最初の分裂から2時間まで100%の精度でトラッキングに成功し、2時間以降も十分なめどがたった。さらに改良を重ね、いくつかの視覚的にあいまいな画像に対する処理能力の向上と計算速度の向上を行った。 |
| 4) |
線虫の発生及び酵母に関する遺伝子カスケードの特定
遺伝子ネットワーク推定システム、遺伝細胞系譜特定システム、シミュレーターを統合的に運用し、線虫の発生段階に関わる遺伝子ネットワークの完全特定を目指す。これは、昨年度後半に本格化し、プロジェクト終了まで継続。この分野での非常に大きな成果になると思われる。昨年度後半は、酵母の大規模発現プロファイルからの回路推定のアルゴリズムの試作が完了し、従来手法に比較し、画期的な性能の向上が達成された。推定されたネットワークの実証を行うために、個別遺伝子の破壊の実験を開始した。実験結果は、推定仮説を支持するものであった。 |
| B.共生系知能グループ |
| 1) |
音環境理解・ヒューマノイド認知
音環境理解と視覚・聴覚融合の研究は、当グループが世界でも最も進んでいるものとなっている。既に、従来の音響処理に付随する人為的な制約を取り外す手法の開発に成功している。産業界からも引合がある。本研究は、音源方向同定と顔の認識の視覚システムが実時間で融合処理を行う性能を得ることに成功した。 |
| 2) |
二足歩行ヒューマノイド
共生系知能グループの研究の発展として、今まで上半身だけであったロボットを全身に拡張した。ヒューマノイド・ロボットPINOの基本機構は、極めて短期間に開発する事に成功し、2000年6月に完成した。二足歩行実験は、モーターが脆弱な状態での簡単な歩行は実現したが、スムーズな歩行にはさらに高価かつ強力なモーターに置き換えることが必要であり、現在これに関わる改造を行っている。また、トルクに制約のあるモーターで歩行を可能とする理論の研究、さらに、進化的に歩行パターンを学習する研究を開始した。これらの方法と従来型の三種類の歩行方式の優位性評価を行い、我々の方式が、エネルギー効率的に優位であるという結果を得た。
PINOを中心とし、本プロジェクトで生み出された二足歩行ロボットの技術の産業化・技術移転を行う会社、株式会社ZMPが、2001年1月30日に設立された。また、PINOの技術情報をOpen PINOとして11月22日からGNU GPLライセンスで公開した。これは、ヒューマノイド・ロボットのLINUXプロジェクトを目指した動きである。
また、2001年夏には、morphという新型ヒューマノイドが完成した。これは、35cm程度の大きさであるが、従来発表されているヒューマノイドを遥かに上回る運動性能を有するものになった。 |
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