第2部 評価結果


おわりに
委員会は、評価対象となる事業をその性格ごとに個別に分析、評価した。その結果、それぞれの事業ごとに改善点や検討すべき課題を指摘したが、全体としていうならば、事業団は様々な制約の下で、これらの事業に誠実かつ上手く取り組んでいると評価できる。昭和33年以来提供してきた文献情報は、販売額からみても我が国唯一の網羅的な科学技術文献情報の提供事業としての役割を確立してきたといえるし、省際ネットワークや電子ジャーナル等の新規事業も社会のニーズと事業目的が合致しており、評価する声がきこえる。
今回の評価は先ずこれまでの事業に対して行ったが、評価の過程で委員会としては、事業団の過去の実績を評価するよりも、明日の姿を考えることが重要ではないかという認識を次第に深めるようになった。
その第1の理由は、我が国の科学技術情報流通政策が先進諸国に比べるとまだ見劣りする段階にあることである。このことは科学技術立国の大きな障害になっており、具体的には第25号答申などで指摘されている。事業団は我が国の直面する課題の解決に寄与できる数少ない国の機関であり、大きな可能性を秘めている。しかし、現在のところその強みは十分認識されていないし、その強みを発揮しようという主体的な動きも鈍い。
第2の理由は、インターネットに象徴される情報科学技術の急激な発展により科学技術情報流通のあり方が急激に変化していることである。こうした変化は、今回評価の対象としたほとんどの事業に大きな影響を及ぼすようになってきている。ここにおいて、過去を評価するより、明日にどう備えるかが重要かつ緊急の課題となってきている。
第3の理由は、2001年に予定されている省庁再編等の行政改革の影響である。それは、国立情報学研究所との関係や、独立行政法人となることが予想される国の試験研究機関や大学の図書館や情報部門との新しい関係である。改革の実現後は、省庁間の人的、機能的協力関係を深めるとともに、ワンストップショッピング的な機能の実現をはじめとして、真に省庁横断的な情報流通施策がとられなければならない。
こうした現在起きつつある情報科学技術の大変革と国家レベルの仕組みの大きな変化を考えると、事業団の使命とその仕事に大きな変化が早晩起きることは明らかである。今回の評価作業に当たっても委員会としてはこのことを考慮しつつ評価を行ったので、委員会の明日への提言がどれだけ事業団に受け入れられ、今後実行に移されるかに関心がある。
 とはいえ、科学技術情報の流通をめぐる事情は、これからも劇的に変化し続けることが予想される。今回明らかにした問題意識は暫くは古くならないかもしれないが、今回の提言の多くは、直ぐ古くなり、見直しが必要になるだろう。さらに、現在保有している人材、施設、予算によって全く新しく事業を考えるなら、今とは異なる目標の設定や進め方がありうるであろう。それ故に、事業団は事業運営と技術面で、外部の識者による事業の見直しを継続的に続ける体制を考えるべきであろう。この報告書が、そうした継続的なレビューに参照されることになれば幸いである。

This page updated on June 15, 2000

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