第2部 評価結果


既存個別事業
(1) 文献情報関係事業
情報基盤整備事業
(ア) 収集事業関係
科学技術はその発展に伴い分野の広域化・細分化に向け常に変化をしている。また、成果の発表媒体も多様化している。この様な中で、限られた原資をもとに、各分野の主要な文献を中心に科学技術情報を網羅的に収集・管理している本事業は、我が国の科学技術の振興にとって重要な、しかもこの様な形としては唯一の事業として大きな役割を担っている。
科学技術の変化に対応し、内外における新規ジャーナルの発刊等に関する状況を継続的に調査し、有用な文献を情報資源として柔軟に収集・管理するためには、文献を適切に取捨選択することが求められる。取捨選択にあたっては、@投稿数が一定規模以上あり、かつ投稿に対して採択率の厳しいジャーナルを重視すること、A利用率の低いジャーナルの場合であっても利用者や科学技術の動向に造詣の深い有識者の意見を聞き判断すること、等を考慮すべきである。また、科学技術の各分野におけるコアジャーナルが漏れなく収集されているかの評価を定期的に行うことが求められる。
情報提供事業において提供内容の主要な部分となっている医療情報について利用者の観点から見ると、症例や副作用報告等を網羅的に収集し提供する必要がある。不完全に内外の文献を収集するよりは我が国で公表されている文献をさらに網羅して収集することに重点を置くべきである。
情報資源としての文献の収集・管理は、逐次情報の提供という役割だけでなく、将来への継承の役割もある。事業団はデータベースの作成のもととなる文献を管理しているが、その永久的な保存が義務づけられているわけではない。しかし我が国にとっては研究開発を進める上でも、過去のオリジナルな文献の存在は遡及検索を行う上で不可欠であるので、国立国会図書館との間で入手すべき文献の選定についての調整を行うとともに、国立国会図書館の保有しない文献については事業団が責任をもって保存する必要がある。
情報伝達媒体は紙媒体から電子媒体へと移行している。しかも多様化している。特に学会誌ばかりでなく、ウエブサイトのみで提供される報告も存在するようになってきている。このような状況をふまえデータベースの対象としてウエブサイトも考えるべきではないか。その場合には書誌事項として当該URLを記載することとなろう。
(イ) 加工事業関係
内外の主要な科学技術文献を対象に文献情報の提供を目的とする当二次情報の加工事業は、非常に重要な事業である。特に検索ツールとなる索引データの作成、情報内容を紹介する日本語抄録データの作成は、人手と経費を要する大変な事業であるが、情報流通の観点から意義ある事業である。
情報提供の基本的責任として、網羅性とともに迅速性と正確性を保証する必要がある。索引データの作成および抄録データの作成は知的作業であり、基本的には人手で行わざるを得ない。この結果、やむなく情報提供までに相当の時間的な遅れが生じている。ただし、この問題を回避するためには次のような検討課題があると考える。
資料の入手から、情報の加工、提供までの工程管理の改善、革新に対する常なる創意工夫の必要性
情報処理技術の研究開発成果の応用に伴う情報加工方法の改善
 具体的に下記の事項の検討が急がれる。ただし、提供情報の内容とも係わりがあるので、常にマーケット調査を行い利用者の要求を反映する必要がある。
(a) 索引データ付与の自動化の検討
 近年のテキスト処理技術の発展に伴い、インターネット対応の検索ロボットに代表される様に、索引データの自動抽出処理は実現している。ただし、現時点においてその精度には多くの問題があるが、自動抽出処理方式においては検索システムの機能(特に、レレバンス・フィードバック機能)と組み合わせ、Pre-indexing(事前索引法)を回避する方式で情報提供がなされていることから、フルテキスト検索システムの動向を視野に入れ、新たな技術を利用して情報の加工工程の短縮化、経費の削減を図る必要があると考える。
(b) 抄録データ作成の自動化
 抄録データの作成に関しては、既に要約の自動作成が実現している。索引語の自動抽出に比べその精度は現時点では落ちるが、採用の検討の価値はあると考える。
 ただし、上記2件の自動化には、正確さを保証するため、処理結果を人手によりチェックし直す機能が当面の間必要と考える。
著者抄録利用の検討の必要性
 著者抄録は内容が偏向する危険があるが、時間的な遅れを回避するために利用する価値はある。このことは経費削減にも大きく寄与する。
抄録データそのものの価値の検討の必要性
 抄録データの意義は文献内容の紹介にある。しかし、現時点の抄録データは、いわば指示的抄録であり、この程度の抄録であれば当該分野の専門家にとっては著者名・標題から想定される原文献の価値判断に対して付加的な意味があるとは言えず、抄録データ作成の費用対効果から考え、有効価値を見い出せない。抄録データを作成するのであれば、著作権の保護との整合性を確保した上で、例えばケミカル・アブストラクツにおける構造式のようなものを付加するなどの工夫をして内容に意味のあるものとすべきである。また、MEDLINE(米国国立医学図書館の運営する医学文献情報システム)の索引法のように、索引データ自体に意味を持たせる工夫も必要であろう。このことは、英語記述の文献の抄録に対してもいえるが、特に日本語記述の文献の抄録データに対してこの感は強い。一方、抄録データは科学技術振興の一翼を担う情報資源として、科学技術に関する基本的な知識を得られるという観点から、社会人教育を含む教育資源としての役割もある。これらの視点をふまえ、現在の形の抄録データの価値については、費用対効果の観点から根本的な検討を行う必要がある。
情報提供事業
情報提供事業の効率化に当たっては販売システムとマーケティング活動を有効に機能させるべきである。そのためには、販売システムを適切に構築するとともに、需要サイドの要求・要望を早く、的確に掴む必要がある。前者については JOIS(JICST Online Information System)のSTN(Scientific and Technical Information Network)への移行が予定されている。移行自体は利用者に対するサービスの向上が伴うものであれば肯定的にとらえるべきものであるが、その際には、@コマンドの変更等に対応できるようユーザーに対して十分な支援を行うこと、A今後STNのバージョンアップが行われる場合はJST系ファイル(JICSTファイル、JMEDICINEファイル等の日本語データベース)についても他のファイルと同等に行うことを契約上確保しておくこと、B利用者の情報の保護に関し契約だけでなく、運用上の対処の検討を行うこと、の3点を措置しておく必要がある。後者については事業団のマーケッティング活動を見ると潜在的需要者の把握なども十分にできているとはいいにくい状態にある。このことは事業団組織の本質的問題とも考えられ、場合によっては提供事業を民間企業に行わせることも検討すべきではないか。その際に当該企業から事業団に支払うべき金額の算定方法は、別途政策的に決定すべき課題である。
網羅的な情報提供は重要なことであるが、価格設定は例えば情報分野別に行い価格が費用を反映する形とし、利用者と事業団の間で文献情報に関する適切なマーケットを形成していく必要もある。この際、例えば科学技術文献速報の各編を学問分野別に分けるなどデータベースの細分化も検討すべきではないか。
価格やサービス形態の決定に当たっては、利用者の使用形態を踏まえた上で柔軟な料金体系やシステムとすべきである。適切な対応がなされないと、例えば、現在よく利用されている医療関係情報についても、これまでの保険制度に支えられた医療経済事情が厳しさを増していき、医師個人がインターネット接続によって自ら検索するようになると、現在のJOISシステムでは価格、検索システムからみて、他の情報提供システムなどに取って代わられることになろう。
サービス形態については、例えばインターネット経由で検索した文献情報について、クレジットカードによる決済を可能にすることが考えられる。
教育利用の促進を一層進めるべきである。全国の大学で情報リテラシー教育の必要性が高まりデータベース検索演習などの試みも増えているが、良質な教育資源がない。JOIS等の資源は良い教材となるので、教材用に無料IDを配布してJOISを知ってもらう必要性がある。また、研究利用に際しても、非営利団体や学術利用での割引を考慮することが望まれる。事業団が現在試行的に進めている大学・国公立試験研究機関等に対する固定料金制は効果があると思われるので推進すべきである。
複写サービスは工学分野での利用が多く、特に外国誌の複写依頼が多い。複写サービスは手に入りづらい情報を素早く入手するためにぜひ必要であり、国内でセンター的な機関が必要である。大学図書館でも分野毎に拠点はあるが(分担収集方式)、必ずしも網羅できないほど学術誌は増加している。関係機関(国立情報学研究所(旧学術情報センター)、国立国会図書館)と調整して、事業団でなければ入手できない学術誌を揃えてほしい。
複写サービスについては、著作権法に新設された公衆送信権を含め著作権処理について、著作権関係団体と検討する必要がある。より簡便な著作権処理を行うためには集中的な権利処理体制を整備することが望まれている。
翻訳サービスは、民間事業との兼ね合いを考慮する必要がある。
英文データベースサービス事業は、近年の機械翻訳システムの精度向上から、検索語を日本語へ翻訳するシステムを検索システムのインターフェース機能として提供し、検索結果を利用者自身が機械翻訳システムを利用し翻訳する方式を周知徹底させることで十分と考える。
総括的事項
事業団は12年ファンド計画に基づき、事業開始以来初めてコスト意識に基づき原価の縮減に努めているとのことであるが、データベースサービスや複写サービスについてはサービス方式の改善に更に努力し、より一層利用しやすい価格とすることが望まれる。
諸外国における同種事業の運営・営業形態を研究し、参考にすべき事項があればいつでも導入するような努力が日頃から求められる。
科学技術の発展に伴う分野の広域化・細分化や発表媒体の多様化により、文献の種類は増加している。これに対して収集原資の増加には限界がある。一方、科学技術の振興および国家の安全保障的な観点からは、科学技術情報の網羅的な収集・管理が要請される。このような相対する矛盾に対応するには、特にインターネットの発展に鑑み、当事業の将来へ向けての根本的な見直しが必要になる。具体的には、電子ジャーナルを主に選択を行い、版元にて標準化二次情報を提供してもらい、それを文献情報として提供し、検索結果を利用者自身が版元から直接得る方式に変換することが考えられる。このためには、出版物の納本制度の様に、二次情報の提供義務の制度化、版元においては電子化、その上での二次情報内へのURLの取り込み等の整備が必要になる。これらのことは事業団の電子情報発信・流通促進事業(電子ジャーナル)で行われることになったので、その普及、拡充が不可欠である。
国の重要施策である科学技術の振興を図る上で科学技術に関する情報はまさに基盤資源であり、その流通事業(情報の収集・管理・提供)は基盤的な事業として位置付けられる。科学技術の研究開発成果の記録物である文献は、人類の共通知的資源として将来に継承すべき資産である。また我が国の教育資産としても重要な資源である。国はこのような事業が我が国において全体として確実に遂行されることを確保する責務を有している。このような観点から、関係機関の連携、協力の強化が必要であり、例えば国立国会図書館との間では、先に述べたように収集に当たっての調整を図るとともに、国立国会図書館が保有していないものは事業団が責任を持って保存すべきである。また文献情報関係事業の実施にあたっての国の資金はすべて産業投資特別会計で賄われているが、これは必ずしも適当とは思われない。産業投資特別会計は、将来的には自ら採算の取れるような事業へ出資することを目的としているが、科学技術情報の中には利用者が負担するという考え方では維持できないような知的資源としての価値を有するものがある。このような情報を対象とする事業は、出版物の納本制度に伴う書誌サ ービス事業(国立国会図書館所管)、気象観測に伴う気象情報提供事業(気象庁所管)や学術情報サービス事業(文部省国立情報学研究所所管)等から明らかなように一般会計、あるいは一般会計資金の繰り入れの行われている国立学校特別会計で運用されている。科学技術文献情報の場合もこのような範疇に属するものは、国際的な責任も考えあわせると、一般会計での運用を検討すべきである。
(2) 一般会計事業(公募型事業を除く)
高機能基盤データベース開発事業
(ア) 高機能基盤物質データベース
金属、合金、無機物質、高分子について、測定データとスーパーコンピュータによるシミュレーションデータを編集、整理したものであり、他にあまり類を見ない有用なデータベースである。まだ試験段階であるが、スペクトルデータ等さらに高度なデータを含むことにより一層の発展が期待できる。
内外の機関との協力によりデータを充実させることが重要と思われるが、協力に当たってはイニシアティブをとれる程度にまで本データベースの内容を高めておくべきである。なお過去のデータの蓄積と新しい技術に対応するためにはスタッフの充実も必要になる。
(イ) 高機能生体データベース
事業団が中心となって進めてきたヒトゲノムに関する解析結果のデータベースであり、世界の公開データの約5%を占め、ヒトゲノムプロジェクトのわが国における重要な役割を担っている。
本事業を価値あるものとするためには、ヒトゲノムプロジェクトに参加している内外の研究機関と協力し、研究にとって有用なデータベースとする必要がある。また今後は、遺伝子の個体差と健康状態の関係(多型情報)についてのデータベース作りなどに関しての高度な活動が期待されている。
(ウ) スーパーコンピュータシステムの運用
既に非常に混雑しており平均稼働率は80%にも及んでいるため、現有設備の有効利用をはかるとともに、早急なシステムの増強が必要である。
研究情報流通促進システム開発事業(分散型デジタル・コンテンツ統合システム)
インターネット上に分散しているデジタル・コンテンツを集約する技術はいわゆる検索ロボットとして民間で広く開発が進められている。そのような中で事業団が新たなシステムを開発するという以上は民間検索エンジンに対して十分差別化できなければならず、そのためには、辞書を高度化するとともに、このシステムが研究情報の内容を認識し、知的な処理を行ってその結果を発信する必要がある。電子ジャーナル、文献データベース、化合物データベースなどとのリンクも欠かすことができない。
この事業は公的機関の活動の納税者に対する情報開示という側面があり、無料で提供すべきものと考える。
各研究機関のホームページを充実させるための支援も必要である。そのような支援が情報公開の効率的な実施を促進するとともに、本事業の有用性をより高めることになる。
電子情報発信・流通促進事業(電子ジャーナル)
経済的にも技術的にも基盤の弱い学協会が利用しやすい形で我が国が遅れをとっていた学術雑誌の編集の電子化及び電子ジャーナル化を促進する事業であり、電子ジャーナル化で先んじている外国の支配に我が国の学術出版活動が屈することのないよう先手を打ったことは高く評価される。今後、様々な分野の学会誌に広げるとともに、広く学協会への技術的支援を進めることが重要である。
論文提出から出版にわたる電子ジャーナル化について、国立情報学研究所の方式はソフトを提供し運営は学協会に任す方式であり、事業団の方式は24時間サービスの全天候型である。両者の分担および相互協力については常に調整を図る必要がある。事業団の方式については多くの学協会が利用できるシステムとすることが重要である。我が国の学協会の財政基盤が貧弱であることを考慮すると、このような形での支援は日本的解決方法として有効である。
電子ジャーナルが広く利用されるか否かは、海外の有力ネットワークとのリンクの如何にかかっている。世界的な基準となりつつあるPDF(Portable Document Format )方式を採用したことにより、海外に向けての情報発信メディアとして可能性を秘めている。また、本事業により電子ジャーナル相互および文献データベースとのリンクを張ることが可能になるが、遡及分の電子化が問題となろう。電子ジャーナルデータの永久保存を保証するシステムも必要である。
我が国の学会誌を国際的に競争力のあるものとしていくためには、投稿から出版までの期間を短縮していかなければならないが、そのためにも本事業は大きな意味がある。そうしないと良い論文が集まらない。
今後はPDFの内容まで含めた全文を任意のキーワードあるいはJICSTシソーラスで検索するような付加機能をもたせたり、逆にJICSTファイルに自動的に抄録情報を吸い上げるシステムなどを開発し、事業団独自の情報資源と有効にリンクさせることが望ましい。
論文提出から出版まで、また出版後の引用検索など、学協会により様々なスタイル、習慣、作法があり、これらに統一的に対応することは困難であるので、できるだけ柔軟なシステムにするとともに、学協会にメリットを与えつつ論文のフォーマットの標準化を事業団が中心となって進めてほしい。また、各学協会ごとにロイヤルティ、複写料を決められるシステムとすることが望まれる。
事業団の事業の評価としては前述の点を指摘した。ただし、我が国の学協会発行の論文誌が有する課題は電子ジャーナルや事業団のセンター機能の提供だけでは解決しえない問題点を含んでおり、それぞれの学会が学会誌のあり方を含めて真摯に自己点検を行うとともに、国としては、刊行物助成のための科学研究費補助金の充実などを図る必要があると思われる。
現在のところ、民間が発行する科学技術関係の雑誌は対象に入っていないが学術的なものについては事業団が対応する可能性も考えられる。
学会誌の電子化の離陸を図ることを目的とする本事業はそもそも民間ベースでできるのではないかとの意見もあるので、ある程度軌道に乗ったら民間に委譲するなり、適当な料金を設定するなりして、民業とのバランスを考慮すべきである。この事業は、国際会議などの開催にあたってのプロシーディングス(予稿集・報告集)の発行と重なる面があるが、コンベンション事業についてはすでに民業が立ち上がっており、民間に任すのが適当であろう。
新産業創出総合データベース構築事業(ReaD等)
かなり多くのアクセスがあり、広く利用されていることは評価できる。
 この種の情報公開は、国の機関の公開性を高める意味で必要なことであるが、研究者の個人情報の開示と裏腹の関係にあり、企業の営業活動に利用されるなど不適切な使用により被害を受けることもあり得る。網羅的で有効なデータベースとするためにできるだけ多くの研究者からデータを集めるためには、当該研究者の承諾を得た上で公開するだけではなく、個人データの不適切な利用を防ぐ工夫が望まれる。
公的な研究機関の研究者や研究活動のデータベースは種々あり、研究者は毎年数種のデータの提出や入力を求められうんざりしている。他省庁や大学関係も含めて、どれか一つ、例えばこのReaDに統合すべきである。
研究情報流通高度化事業(省際ネットワーク)
省際研究情報ネットワーク(IMnet:Inter-Ministry Research Information Network)を、省庁の壁を越えた情報インフラとして構築し、運営していることは高く評価される。今後とも、日進月歩のネットワーク技術を採り入れ、より高度なネットワークにすべきである。
現在のサービスを今後とも継続し、増加するニーズに応えるよう一層の強化を望む。アジア太平洋高度研究情報ネットワーク(APAN:Asia-Pacific Advanced Network)や TransPACプロジェクトなどの国際的な共同プロジェクトを積極的に進めるべきである。
学術情報ネットワーク(SINET:Science Information Network) やギガビットネットワーク (JGN:Japan Gigabit Network)、商用ネットワークなどとの緊密な相互運用を進めるとともに、全国にアクセスポイントを増設し、地方自治体の公的試験研究機関等との接続も推進すべきである。
研究情報国際流通促進事業
この事業は、本来国がイニシアチブをもって情報発信すべき内容であり、これまで採算性を必要とする予算で行なわれてきたことは不適切である。現在は一般会計事業として継承され、これまでのデータも統合されるとのことで、今後の発展が期待される。
APEC諸国のニーズについて充分把握することが必要である。また、一部では既に利用されているが、機械翻訳システムの活用が有効であろう。
共通事項
一般会計事業(公募型事業を除く)は、データベース、ウェブ、計算サーバ、ネットワーク、電子出版支援など多くの異なる事業を含んでいる。それぞれ、さまざまな経緯を経て事業団の事業に取り入れられたものであり、個別的には積極的な意義が認められる。しかし、あまりにも多様であるために、全体としては事業団がこの分野で何を目標に活動しているかが不明確になっている。
委員会としては、事業団が多様な事業を整理し直して、より明確な形で再構成することを提案する。もちろん、各事業毎の予算の執行目的との整合性を考えると、実際には難しい面もあるが、外部に対して活動を情報提供する時は、予算の論理ではなく、利用者の視点に立った展開をすべきであろう。
データベース、学会誌の電子化、検索エンジンすべてを含めると新しいビジョンが見えてくるはずである。そのような新しいビジョンを描き事業を進めていけば、ある時点で質的な変化を起こすことができよう。
(3) 一般会計事業(公募型事業)
計算科学技術活用型特定研究開発推進事業
この事業の目的は、特定分野の研究開発の推進とされている。事業団の指定する物質・材料、生命・生体、環境・安全、地球・宇宙観測の4分野が重要なコアとなる分野であることは認めるとしても、事業団が従来から進めてきた文献情報関係事業の最重要分野である医薬関係の専門家が課題選考委員に存在しないことは従来事業との関係が希薄であることを物語っている。
本事業の狙いは必ずしも明確ではないが、一例を挙げれば、3年間という限られた期間の中で特定の研究開発を行うにあたってモデルを組立てシミュレーションの手法を用いて結果を予測するとともに実験で検証し、その結果をシミュレーションモデルの高度化にフィードバックすることを狙いとしているものと考えられる。しかしながら計算科学技術の活用という名称から、得られたソフトウエアを直ちに一般的活用につなげることや、全く新しいOSの開発等をこの事業に期待する考えも強くある。そういう意味で本事業を実施するに当たっては、シミュレーション機能の高度化を初めとする新しいソフトウエアの開発を目指すのか、あるいはネットワーク利用の高度化に重点があるのか、それとも特定分野の研究開発のレベルを上げるのか、そのいずれを本質的な目的とするのか課題応募者に対し明らかにする必要がある。
もし、この事業がシミュレーション機能の高度化を一義的な狙いとするものであれば、成果が現実の社会に役立てられるという側面をより重視すべきであり(例えば長大橋等の大型構造物の設計に当たってのシミュレーションに役立てられることなど)、ユーザーニーズにマッチした課題選定を行う必要があろう。そのようなニーズを踏まえた上で得られた成果をライブラリー化し流通させることにより事業として成り立たせることをも条件とすべきではないか。
我が国における計算科学技術の水準が米国等と比べて劣ることは広く認識されているところであり、事業団としては折角の機会であるので、既存分野で地位の確立した研究者が若干ネットワークの利用やソフトウエアの作成に関与しているからというような観点から課題を採択するということではなく、計算科学技術の発展をもたらすというこの事業の新規性を深く認識した上で事業の運営に当たってほしい。当然のことながら、そのためには年間4課題という現在の採択数ではあまりにも貧弱である。
研究情報データベース化支援事業
民間に情報を提供できる観点からテーマを選択すべきではないか。
データベースはメンテナンスしないと無意味であり、貴重ではあるが活用されるような状態になっていないデータベースを国としてどう位置付けるのかという視点からの政策を持つことが必要である。現実にはメンテナンスに対する支援への期待は高い。そのためにも民間に役立つようなデータベースとなる課題を選定すること及びそのようなデータベースの存在を広く認識してもらうことが必要である。その際、少なくとも事業団のデジタルコンテンツ統合システムなどを用いて積極的に公表していくことを考えるべきではないか。
データベース化支援は3000万円/年で3年間という短期ではなく、メンテナンスも含めより長期にわたる継続的な支援をして、その分野では世界に通用するものにする必要がある。
共通事項
本事業分野においても、事業団の強みを活かすことを前提とした事業の方向性の明確化をすべきである。
そのような観点から他の事業との関係、重点分野の設定、課題採択方針(選定委員の選考)について工夫すべきである。

This page updated on June 15, 2000

Copyright©2000 Japan Scienceand Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp