科学技術振興機構(JST),アクチュアライズ株式会社

令和元年8月8日

科学技術振興機構(JST)
アクチュアライズ株式会社

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
アクチュアライズ株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、アクチュアライズ株式会社(本社:京都府、代表取締役 杉岡 郁、以下「アクチュアライズ」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施しました。

アクチュアライズは、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)注2)の治療法を開発する同志社大学発のベンチャー企業です。JST「シーズ発掘試験」の平成21年度採択課題「角膜移植の治療成績を向上させる新しいドナー角膜保存液の開発」や「A-STEP探索タイプ」の平成26年度採択課題「フックス角膜内皮ジストロフィーに対する薬物療法の開発」など複数のJST事業の研究開発成果を基に、平成30年5月に設立されました。

FECDは、角膜の透明性を維持する上で重要な役割を持つ角膜内皮細胞が通常よりも早く減少し、進行すると角膜が白濁し視力が著しく低下した状態になる水疱性角膜症注3)を引き起こす疾患です。水疱性角膜症になった段階で角膜移植するのが現状では唯一の治療法とされていますが、角膜移植についてはドナー不足の問題があり必要な人に十分な治療ができていないアンメット・メディカル・ニーズ注4)です。

同志社大学では従来培養が困難だった角膜内皮細胞を移植可能な品質で大量に培養することに成功し、培養した他家角膜内皮細胞を患者の眼内に注入移植することで水疱性角膜症を治療する方法(角膜内皮再生治療)を開発しました。この治療法は京都府立医科大学附属病院で臨床研究が実施され、引き続き医師主導治験が進められています。

また、同志社大学ではFECD患者の病態メカニズムを明らかにし、進行を抑制する効果のある薬剤候補物質を独自の薬物スクリーニングで発見しました。さらに、疾患モデル動物を用いて薬剤候補物質の有効性を確認しています。

アクチュアライズはこれら2つの技術シーズを引き継ぎ、水疱性角膜症の治療法を実用化する予定です。視力回復により患者のQOLを向上させるとともに、FECDで視力を失うことのない社会の実現を目指します。

JSTは、先端技術を実用化し社会へ還元するため、平成26年4月より「出資型新事業創出支援プログラム」(SUCCESS:SUpport Program of Capital Contribution to Early-Stage CompanieS)を実施しています。

本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対してJSTが出資し、JSTのネットワークを活用して人的・技術的援助を行うことで、その創出と成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的としています。JSTが出資してベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」も志向しています。

SUCCESSホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

<企業概要>

企業名 アクチュアライズ株式会社
設立日 平成30年5月
本社所在地 京都府京田辺市
代表取締役 杉岡 郁
事業内容 FECDの治療用角膜内皮細胞再生医療製品、進行予防および改善薬の開発・製造・販売

<事業展開計画>

アクチュアライズはまず、FECDなどにより角膜内皮障害が進行し視力が著しく低下した状態である水疱性角膜症の治療用に他家培養角膜内皮細胞を再生医療製品として日米欧で同時に治験を進め、上市する計画です。

同時に、FECDによる角膜内皮細胞の減少を抑制し病気の進行を予防および改善する点眼薬を開発し、治験を経て販売していく計画です。

<用語解説>

注1)第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができる。
注2)フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)
角膜は黒目の一番外側にある透明な組織のこと。角膜内皮細胞は角膜の透明性を維持する役割を持つ細胞で、生体内では再生しない。フックス角膜内皮ジストロフィーは角膜内皮細胞が通常より早く減少する遺伝性の疾患で、病気が進行すると角膜が白濁し著しく視力が低下する。日本では8.5万人程度、欧米では40歳以上の約4パーセント程度の患者がいると推定されている。
注3)水疱性角膜症
角膜内皮細胞の障害により角膜浮腫(むくみ)を起こし、角膜が白濁し重度の視力低下を生じる疾患。
注4)アンメット・メディカル・ニーズ
有効な治療法や治療薬が確立されていない疾患に対応するための医療上のニーズのこと。

<お問い合わせ先>

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