ポイント
- CT、MRI、レントゲン検査などの医用画像データをスマートフォンやタブレットコンピュータで簡単に閲覧することができるアプリを開発した。
- 医療従事者であっても、外出先などで医用画像を手軽に見ることは困難であったが、本アプリは医用画像データがあればどこでも誰でも使える。
- 医療従事者間もしくは医療従事者と患者さんとの間において、医用情報がより正確に共有されることや、遠隔医療、災害地や医療過疎地での医療の質の向上につながることが期待される。
東京大学 医学部附属病院 脳神経外科(教授:齊藤 延人)の金 太一 助教の研究グループは、スマートフォンやタブレットコンピュータでCTやMRI、レントゲンX線検査など医用画像を手軽に閲覧できるアプリケーションを開発しました。
医用画像は一般の方には馴染みの薄いものです。自分自身の画像であってもじっくり見る機会もツールもありません。また、医師や医療従事者、医学生、研究者であっても、画像を見るためには難解な操作を要するソフトウェアを使用しなければなりません。しかし本アプリによって、これまで敷居の高かった医用画像情報が広く社会に行きわたり、一般の方の医学的知識の啓発や医用情報の正確な共有化、および医用研究開発の促進が期待されます。また、どこでも簡単に閲覧できることによって、遠隔医療、災害地や医療過疎地での医療の質の向上につながることが期待されます。
本アプリは2018年6月12日に株式会社Kompathから無料でリリースされます(2018年6月12日時点ではiPhoneおよびiPadにのみ対応しており、その他のスマートフォンやタブレットコンピュータには対応していません)。データの取り込みはiTunes経由で簡単に行えます。
本研究成果は、国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「研究開発成果実装支援プログラム」プロジェクト名「医師の高度な画像診断を支援するプログラムの実装」による成果の一部です。
<研究の背景>
病気の診断や治療方法の検討などにおいて、医用画像は最も重要なものです。医用画像の種類は、レントゲンX線検査、CT、MRI、核医学検査など非常に多種多様です。これらの医用画像は特殊なフォーマットで作成されているため、例えばデジタルカメラの写真のような一般的なデジタル画像と違って、簡単に見ることはできません。このため、一般の方にとって医用画像は馴染みの薄いものであり、たとえ自分自身の画像であってもじっくり見る機会もツールもありません。さらに医師や医療従事者、医学生、研究者であっても医用画像を見るためには、高度な知識と難解な操作を要するソフトウェアを使用しなければなりません。一方で、遠隔医療や災害時などの救急医療において、病院外で簡単にすばやく医用画像を見ることができる機能が必要とされています。また、患者さんでも自身の医用画像をじっくり見たいと思う方は少なくなく、どこでも誰でも簡単に医用画像を見ることができるツールが望まれていました。そこで、東京大学 医学部附属病院 脳神経外科の金 太一 助教の研究グループは、スマートフォンやタブレットコンピュータで医用画像を手軽に見ることができるアプリケーションを開発しました。
<研究の内容>
- 世界的に最も多くの人が所有している電子デバイスである、スマートフォンとタブレットコンピュータ上で動作することによって「どこでも誰でも」を実現。
- 説明書を熟読しなくても直感的で正確な操作を可能とさせるユーザインタフェースを実装(図1)。
- 医用画像の世界的標準規格であるDigital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)フォーマットに対応しているほぼすべての医用画像(レントゲンX線検査、CT、MRI、核医学検査、脳血管撮影検査など)の高速な表示が可能(図2)。
- 画像の拡大や平行移動、輝度値の調整、観察断面の再構成など、医師にとって必要十分な機能を実装(図3)。
- 撮像時期の異なるデータや、CTとMRIなど異なる種類の医用画像の同時表示が可能で、それらのスライス移動がシンクロする機能を実装(図3)。
- 医用画像の種類、検査日、撮像条件、患者名などの画像に付加している情報に関して、表示・非表示を選択できる(図3)。
<今後の期待>
本アプリは、医用画像データがあれば誰もがどこでも簡単な操作で、その画像を見ることができます。これまで敷居の高かった医用画像情報が広く社会に行きわたり、一般の方の医学的知識の啓発や遠隔医療、災害地や医療過疎地での医療の質向上、および医用研究開発の促進が期待されます。また、医療従事者間もしくは医療従事者と患者さんとの間において、医用情報がより正確に共有されることが見込まれます。
<参考図>
図1 データの取込方法
データの取込は、iTunes経由でフォルダをドラッグ&ドロップするだけ。
図2 患者選択画面
取り込んだ医用画像データは、医用画像の種類や検査ごとにアプリが自動で仕分けしてくれる。
図3 医用画像の閲覧画面
医師が閲覧する場合にも必要十分である下記の機能を搭載
- 高速な表示
- ズーム、平行移動、輝度値変更
- 異なるデータセットにおいてスライス移動のシンクロが可能
- 3方向の断面画像の再構成
- テキスト情報の表示・非表示
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
金 太一(キン タイチ)
東京大学 医学部附属病院 脳神経外科 助教
Tel:03-5800-8853
E-mail:
<JST事業に関すること>
加藤 豪(カトウ ゴウ)、木谷 徹(キタニ トオル)
科学技術振興機構 社会技術研究開発センター 企画運営室
Tel:03-5214-0133
E-mail:
<報道担当>
東京大学 医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター
Tel:03-5800-9188
E-mail:
科学技術振興機構 広報課
Tel:03-5214-8404
E-mail: