JSTトッププレス一覧 > 共同発表

平成30年3月28日

科学技術振興機構(JST)
株式会社Lily MedTech

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
株式会社Lily MedTechへの出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、株式会社Lily MedTech(本社:東京都、代表取締役 東 志保、以下「Lily MedTech」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施しました。

Lily MedTechは、乳がん用画像診断装置を開発する東京大学発のベンチャー企業です。JSTの「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム注2)」の平成25年度採択課題「自分で守る健康社会拠点」(中核機関:東京大学)の研究開発成果を基に、平成28年5月9日に設立されました。

乳がんの画像診断には現在、X線マンモグラフィ、MRI、超音波エコーなどが用いられています。X線マンモグラフィは、乳房を圧迫しX線を照射して撮影するため痛みと被曝の問題があり、また若い日本人女性に多い高濃度乳房と呼ばれるタイプでは乳がんの兆候とされる石灰化部位を見つけにくく、MRIは装置が高額で検査に時間がかかるため高コスト、超音波エコーは従来ハンドヘルドタイプが主流ですが、技師の手技に診断の結果が左右されるという課題があります。

Lily MedTechが開発中の「リングエコー」は、超音波を用いることで痛みや被曝がなく、自動で全乳房を3次元スキャンするため習熟した技師が取り扱う必要がなく、MRIより低コストながら再現性の高い画像診断を可能にします。再現性が高いので、経時変化を見ることにより、がんの診断精度の向上や治療後の経過観察にも寄与すると期待されます。

これまで、臨床試験を積み重ねることにより、基本機能の有効性を確認(プルーフオブコンセプト:POC)し、ハードウエア開発や撮像アリゴリズムの改良に多くのフィードバックを得てきました。臨床的なPOCの第1段階が完了したので、第2段階として、高機能化に関わるアプリケーション開発を充実、加速する段階に入りました。具体的には、血流を可視化し新生血管を画像化する機能など、がんの各種診断の補助となる機能を追加していきます。これにより、針生検に替わる低侵襲な検査で、さらにがんの見落としを低減する技術を確立することを目標としています。

Lily MedTechでは、「『がんと闘う』この言葉のない世界を目指して」を企業理念として、乳がんの早期発見、早期治療により乳がんサバイバーのQOLを向上させることで社会に貢献していくことを目指しています。

JSTは、先端技術を実用化し社会へ還元するため、平成26年4月より「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage Companie)を実施しています。

本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対してJSTが出資し、JSTのネットワークを活用して人的・技術的援助を行うことで、その創出と成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的としています。JSTが出資してベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」も志向しています。

SUCCESSホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

<企業概要>

企業名 株式会社Lily MedTech
設立日 平成28年5月9日
本社所在地 東京都文京区
代表取締役 東 志保
事業内容 超音波を利用した検診装置、診断装置、治療装置の製造および販売

<事業展開計画>

Lily MedTechは、習熟した技師が取り扱う必要がなく、自動で全乳房を3次元スキャンして、再現性の高い画像診断を可能とする乳がん用画像診断装置を開発し、今後、事業展開していきます。

まず、基本機能を確立した製品について医療機器承認を受け、上市します。その後段階的に、血流可視化機能、エラストグラフィ機能、代謝計測機能注3)など、疾患検出の正確性の向上や、鑑別に関わる情報量を増やすアプリケーションを付加した高機能機を製品化する計画です。

図 製品イメージ

図 製品イメージ

<用語解説>

注1)第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができる。
注2)センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム
目指すべき将来の社会像を見据えた、ビジョン主導型の研究開発を支援するJSTの事業。企業や大学だけでは実現できないチャレンジング・ハイリスクで革新的なイノベーションを産学連携で実現することを支援するとともに、そのプラットフォームを整備している。
注3)エラストグラフィ機能、代謝計測機能
がんでは組織が硬くなり(いわゆるしこり)、活発な分裂を伴うため代謝が激しくなる。組織の硬さを可視化するエラストグラフィ機能や、代謝を計測する機能を付与できればがんの診断精度は向上する。

<お問い合わせ先>

<株式会社Lily MedTechに関すること>

株式会社Lily MedTech
担当:東
〒113-0033 東京都文京区本郷七丁目3番1号
東京大学 アントレプレナープラザ 共用インキュベーション室
Tel:03-6240-0017
E-mail:
URL:http://www.lilymedtech.com

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail:

<報道担当>

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail: