JSTトッププレス一覧 > 共同発表

平成29年12月7日

Karydo TherapeutiX株式会社
科学技術振興機構(JST)

「ドラッグ・リポジショニングの宝箱」を提供します

~医薬品作用の全身網羅データベース「D−iOrgans Atlas(ディー・アイ・オーガンズ・アトラス)」開設~

ポイント

JST 戦略的創造研究推進事業(ERATO)佐藤ライブ予測制御プロジェクトの基礎研究の成果と基盤技術の実用化を目的とするKarydo TherapeutiX株式会社(代表取締役 佐藤 匠徳)は、ヒトを含む動物の多器官連関ネットワーク注1)に基づく遺伝子発現網羅解析とAI解析とを用いて、世界各国で広く使われている医薬品の、その全身に与える影響を解析して、生データおよび考察データを提供するWEBサイト「D−iOrgans Atlas」(ディー・アイ・オーガンズ・アトラス)を平成29年12月7日から運用開始します。

◆「D−iOrgans Atlas」(https://www.d-iorgans.karydo-tx.com/

解析対象は、がん、糖尿病、神経疾患、高コレステロール、代謝疾患等の疾患治療のために世界で汎用されているブロックバスター医薬品注2)などの医薬品。これらを、大学、研究機関、製薬会社でヒトの疾患研究や医薬品開発に常用されるモデル動物(マウス)に投与し、マウス全身のほぼ全器官(24器官)への作用をまとめたデータベースです。

従来の医薬品候補物質スクリーニングとは一線を画する概念に基づく網羅解析であり、このデータから、医薬品の未知の効能(ドラッグ・リポジショニングの候補)や、隠れた副作用リスクの発見が期待できます。

本事業は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた成果を基盤とした取り組みです。

戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)

研究プロジェクト 「佐藤ライブ予測制御プロジェクト」
研究総括 佐藤 匠徳(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 佐藤匠徳特別研究所 所長)
研究期間 平成25年10月~平成31年3月

上記研究課題では、生命現象の多階層システムの「根底にある支配的メカニズム」を解明し、さらに多階層システムの破綻と疾患との因果関係を明らかにします。そして、多階層システムの全体像から個別の現象までが統合的に捕らえられる「いきものの設計図」を作成することを目指しています。

また、Karydo TherapeutiX社に対しては、平成28年12月にJST出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)にて第三者割当増資の引き受けを実施し、支援を開始しています。

<当WEBサイトの用途>

WEBサイト「D−iOrgans Atlas」が提供するデータの利用例(一部)。

◆創薬研究の現場(大学・企業);

◆教育の現場(大学・高専・SSH等);

◆一般社会(個人、市民団体、患者団体等);  

当データは生命科学研究における一次情報であり、治療のアドバイスや医学的な判断を提供するものではありません。治療方針・方法などに関する判断は主治医にご相談いただくよう当WEBサイトにも付記しております)

<開発の背景と経緯>

1つの医薬品には、良い作用 (治療効果) も悪い作用 (副作用など) も含まれています。従来、各医薬品のからだに対する影響は、限られた数個の器官 (臓器)で検査されていました。しかし、私たちのからだには数十個もの異なる機能・役割を持った器官が存在し、それぞれの器官は、血管 (循環器系) や神経系を介して相互にコミュニケーションを取り合って、私たちのからだを維持しています。したがって、各医薬品が全身に及ぼす作用を知るには、これらすべての器官への影響を網羅的に知る必要があります。

各器官の作用を知るうえで、信頼できる指標の一つに遺伝子発現があります。遺伝子発現は、器官の微小な変化にも敏感に反応して発現のパターンを変えるので、鋭敏な、器官機能変化の指標となる可能性があります。

そこで当社は、JST 戦略的創造研究推進事業(ERATO)佐藤ライブ予測制御プロジェクトが確立した「iOrgansテクノロジー」を用い、世界の医療現場で広く用いられている医薬品の、全身レベルでの作用(からだへの影響)を、体内に存在するほぼすべての遺伝子の発現パターンの変化として記述したデータの取得を進めて参りました。このほど一定数の医薬品作用データが蓄積できたことから、国内外の創薬研究・生命科学研究に広く役立てていただきたく、当WEBサイトを開設しました。

<事業の内容>

がん、糖尿病、神経疾患、高コレステロール、代謝疾患などの治療に世界中で多く使用されている医薬品を選び、それらのマウス(モデル動物の一種)計24器官への作用をまとめたデータベースが「D−iOrgans Atlas」です注3)

◆解析した医薬品

◆解析した器官

膵臓 頭蓋骨 脳 下垂体 腎臓 副腎 肝臓 脾臓 胸腺 心臓 肺 耳下腺 甲状腺  大動脈 骨格筋 皮膚 精巣 白色脂肪 目 胃 空腸 回腸 大腸 骨髄

WEBサイトで欲しいデータの【投与医薬品/器官/遺伝子】の組合せを選び、1パターンから購入可能。国や地域の経済状況、所得格差に左右されにくい提供価格(1パターンの価格を税別100円)に抑えました。見放題プラン(年額)も2種類あります。

【プラン設定】

データは、大学・企業の研究現場において、研究者それぞれの創薬研究・生命科学研究、バイオインフォマティクス研究者の教育等に自由に利用可能です。研究に従事していない方にとっても、ご自身や家族・友人が投与を受けているなどの理由から関心のある医薬品について、既存の医薬品情報とは異なる角度からの科学的知見を得る一助となります。バイオインフォマティクス注6)が専門外であるユーザー様向けの数理解析の入門マニュアルや、「D−iOrgans Atlas」のデータをドラッグ&ドロップするだけで、その医薬品のおおまかな傾向が見られる簡易アプリも無料公開しています。

<今後の展開>

反響に応じて医薬品データを追加予定。世界の誰もがいつでも解析希望の医薬品を投票できるアンケートも設置。ご要望を参考にして、さらなる医薬品解析を進めて参ります。

<参考図>

図1 シスプラチン投与による遺伝子発現パターン変動の器官間比較

世界的に広く使われている抗がん剤「シスプラチン」を投与したときに、体内24器官の遺伝子発現パターンが、それぞれ、どう変化したか、また、そのパターンが器官どうしで、どの程度類似しているかを表した図です。外周の円を構成する各色付きの点は、中央に描かれた同色の器官それぞれに相当しています。具体的には、外周に向けて並んでいる各色付きの点の組合せで、単一の特異的器官でのみ(つまり1色の点のみが外周に向けて縦に並んでいる列)、あるいは複数の特定の器官でのみ(つまり複数の色の点が外周に向けて並んでいる列)において共通に著しく変化した遺伝子の数が、それぞれの列から中央に向けて伸びている棒グラフの高さで示されています(高い棒ほど数が多いことを示します)。これにより、シスプラチンの投与で、各器官特異的、あるいは複数の特定の器官でのみ発現量が変化する遺伝子の数の比較を読み取ることができます。

図2 「D−iOrgans Atlas」トップページ

トップ画面から、データ選択・購入ページ、D−iOrgans解析の詳説ページ、実際の解析データ(実物見本)入手ページなどにアクセスしていただけます。また、搭載した医薬品の情報や、最新の医薬・生命科学の知見を解説する【読み物】ページも設けており、データを購入しなくても科学的な情報を得られるWEBサイトとしました。

また、挑戦的な試みとして、当データを活用した新しい数理解析手法や解析アプリケーションの開発コンテスト(賞金100万円)を実施しています。応募資格に国籍・所属・職業などは不問。当データを素材とした、データサイエンティスト等からの自由な発想を、広く募っています。

<用語解説・備考>

注1) 多器官連関ネットワーク
「生命体は体内すべての器官が連関しあう全体的なネットワークで成り立っている」という生命科学の概念。心腎連関や糖尿病の合併症、多臓器不全などのヒトの全身性疾患が、この概念で説明することができる。
注2) ブロックバスター医薬品
画期的な薬効を持つ大型新薬を意味し、全世界での1年間の売上高が1000億円もしくは10億ドルを超える医薬品を指すことが多い。
注3) 当社の動物実験について
当サイトに搭載するデータを得るための動物実験は、社外専門家および一般市民で構成された、Karydo TherapeutiX株式会社動物実験倫理員会の審査を経て承認された手順および方法で行われています。
注4) FPKM値データ
それぞれの遺伝子がどれだけ発現しているかを相対的に示す1つの指標。FASTQデータをもとに作成される。
注5) FASTQデータ
生体サンプルを次世代シーケンサで読み込んだ際に出力される、そのサンプルの遺伝子発現情報を格納したテキストデータ。
注6) バイオインフォマティクス
生物学の各種データを、情報科学の手法によって解析する学問ならびに技術。全ゲノム解析の遺伝子データや医療ビッグデータの応用展開に向けて、近年、次世代育成が急務とされている。

<お問い合わせ先>

<Karydo TherapeutiX株式会社に関すること>

杉坂 恵子(スギサカ ケイコ)
Karydo TherapeutiX株式会社 管理部
〒102-0082 東京都千代田区一番町6 相模屋本社ビル7階
Tel:03-6671-9094(携帯:080-6611-6424)
E-mail:

<ERATOの事業に関すること>

大山 健志(オオヤマ タケシ)
科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3528 Fax:03-3222-2068
E-mail:

<SUCCESSの事業に関すること>

石井 雅弘(イシイ マサヒロ)
科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail:

<報道担当>

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:

(英文)“A bodywide drug effects database 'D-iOrgans Atlas' opened