ポイント
- 患者の心電波形を「いつでも」「どこでも」リアルタイムに確認でき、異常発生時にアラーム通報も可能。
- 医師不足や高齢化など医療過疎地域の在宅医療の質を向上。
株式会社イメージワン(本社:東京都新宿区 代表取締役社長 高田 康廣 以下、イメージワン)、国立大学法人 東北大学(以下、東北大学)、および株式会社リアルデザイン(本社:宮城県仙台市 代表取締役社長 布川 憲司 以下、リアルデザイン)は、共同し、独立行政法人 科学技術振興機構の復興促進プログラムの支援を受け、7日間連続リアルタイム転送を可能にしたテレメトリー式心電計「商品名duranta®(デュランタ®)(医療機器認証番号:226AIBZX00055000)」の開発と製品化に成功しました。
イメージワンは、2014年12月12日から本製品「duranta®」の販売を開始し、被災地を中心とした東北地域沿岸をはじめとして、高齢化社会の進行に伴いニーズが高まっている在宅医療・介護福祉分野事業を立ち上げ、地域包括ケアなどに取り組みます。
本開発成果は、以下の事業・課題によって得られました。
事業名 |
復興促進プログラム(マッチング促進) |
課題名 |
「在宅終末期見守り用小型軽量無線式省電力心電計の開発」 |
代表企業 |
株式会社リアルデザイン |
研究責任者 |
東北大学 サイバーサイエンスセンター 先端情報技術研究部 吉澤 誠 教授 |
参加企業 |
株式会社イメージワン |
研究開発期間 |
平成24~26年度 |
JSTはこのプログラムで、東日本大震災からの復興に向けて、被災地発の科学技術イノベーション創出に貢献することを目指します。
<開発の背景と成果>
慢性期医療において、医療施設を要しない「在宅医療」の充実は、今後の医療を見据えた有力な選択肢として注目されています。
しかしながら、在宅医療の現場では、緊急時連絡は患者家族からの連絡によるもので、医師などの医療従事者が患者のバイタルデータを簡便かつ正確にリアルタイムで客観的に把握する手段が不足しています。
上記課題の解決のため、東北大学 サイバーサイエンスセンター 先端情報技術研究部(吉澤 誠 教授)とリアルデザインの開発チームは、東北大学がもつシーズ(植込み型除細動器のためのソフトウェア技術)を応用して、電池交換無しで連続7日間の心電波形伝送が可能な小型心電計(duranta®)の開発と製品化に成功しました。
医療従事者は、duranta®から伝送された心電波形を、スマートフォンを通じてインターネットから、「いつでも」「どこでも」リアルタイムに確認でき、また心拍の異常時には、アラームを表示画面やメールで通報する機能があります。
特に被災地を中心とした東北沿岸地域では、病院や医師の不足している状況に加えて、高齢者の割合が高く、病院までの交通手段が少ないため、在宅医療のニーズが増えています。同地区での実証実験では、患者と家族、医療従事者の三者が、心電図を見ながら容態を確認する「コミュニケーションツール」として、有効な効果を得ることができました。
さらに現在、日本各地の医療・介護の現場で検証を進めています。
<今後の事業展開>
① 国内での事業展開
在宅医療、高齢者施設での活用を見据え、在宅医療や介護福祉分野における医療従事者の負担軽減や医療・介護等の質の向上を目指し全国へ展開します。そのため、イメージワンは全国の営業拠点を通じて、既存顧客及び既存医療系代理店への迅速な事業展開を開始します。
② 海外での事業展開
- ⅰ)欧州各国でのサービス提供:
イメージワンは、フィンランドと日本の企業・大学が行うサービス・機器開発およびビジネスマッチング支援を行う仙台フィンランド健康福祉センタープロジェクトを推進する公益財団法人 仙台市産業振興事業団の紹介を受けて、日本と同様に高齢者先進国であるフィンランドの「RIVERPARK社※」と本年11月に「ビジネスパートナー契約」を締結し、同社を経由して下記の欧州各国への事業展開を予定しています。フィンランドは、若者の都市一極集中が進んでおり、独居高齢者のサポートに問題を抱えています。既にユニバーサルサービスとして確立している「医療コールセンター事業」とリアルタイムにバイタルデータを閲覧できるduranta®は、高齢者医療のサポートで相乗効果を生むことと期待します。
※RIVERPARK社:欧州を中心に世界的に事業展開している医療ソリューション会社
(欧州での事業展開先)
北欧4国 フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー
欧州各国 イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベネルクス(3国)
- ⅱ)台湾での試験運用:
イメージワンは台湾にて、高齢者介護医療分野で台湾各県市のモデル病院となっている国立大学 台湾大学 付属病院金山分院とduranta®のテスト運用を2015年1月より開始致します。
同院では、在宅患者向けチーム医療ケアにduranta®を使用して、心電図の長時間リアルタイムモニタリングの効果測定を行い、同国での次世代の高齢者医療モデルの確立に事業協力いたします。
<参考1:システム概要図、製品仕様など>
1.ネットワーク構成図
在宅での慢性医療患者の胸部に取り付けた小型心電計duranta®からBluetoothにより、リアルタイムで患者の心電波形を患者の側に置かれた中継機(スマートフォンなど)に送信して、その心電波形データをさらに外部の管理者用サーバーに転送して集中管理をおこないます。
この患者の心電波形データはサーバーを介して患者を担当している医療従事者の保持するタブレット端末などでリアルタイムに閲覧が可能です。
同時に医療従事者が設定した心拍数が正常範囲から外れた場合はアラームメールやコールセンターから医療従事者および関係者に配信されます。
2.機器の装着イメージと表示画面
3.基本的な仕様
- <アプリケーション仕様>
- リアルタイム心電波形表示、送信
- <ハードウェア仕様>
- 入力部
記録誘導 | 単極誘導1チャネル |
入力範囲 | ±5mVp-v |
周波数特性 | 0.67 ~ 40 Hz |
量子化ビット数 | 12ビット |
サンプリング周波数 | 160Hz |
入力インピーダンス | 2.5MΩ以上 |
サイズおよび重量 | (W) 78.4 mm ☓ (H) 35.1 mm ☓ (D) 14.7 mm (typ), 35 g (typ) |
- 無線送信部
無線方式 | Bluetooth SIG Core Spec v4.0 準拠 |
送信出力 | 0 dBm |
受信感度 | -93 dBm |
プロファイル | GATTプロファイル |
- ※参考値
電池持続時間(初期時)7日以上(心電図データ伝送状態)
管理医療機器/特定保守管理医療機器
一般的名称:テレメトリー式心電送信機(JMDNコード:36367000)
販売名:デュランタ
医療機器認証番号:226AIBZX00055000
<参考2:duranta®の由来>
duranta®は花の名前です。花言葉は「あなたを見守る」。durantaの花は、16世紀のローマ法王の侍医であり植物学者でもある「デュランテス(C.Durantes)博士」から名付けられました。 患者と家族、医療従事者を結ぶ「見守りコミュニケーションのツールとしてご利用頂きたい」という想いが込められています。
<参考3:株式会社イメージワンについて>
イメージワンは、PACS(医療画像ファイリング&配信システム)を主軸に全国の医療機関(約400施設)にユーザーを持つ独立系ICTベンダーです。近年では、医療情報統合システム、地域医療連携システムの構築など、広範囲な医療ICTソリューション事業を展開しています。
名称 |
株式会社イメージワン |
上場市場 |
ナスダック・ジャパン(現JASDAQ)証券コード2667 |
本社所在地 |
〒160-0022東京都新宿区新宿6-27-30新宿イーストサイドスクエア6F |
ホームページURL |
http://www.imageone.co.jp/ |
<参考文献>
吉澤 誠,杉田 典大,阿部 誠,本間 経康,大内 仁,布川 憲司,山家 智之:在宅看取り用遠隔医療システム,生体医工学,Vol. 52,No. Supplement,p. SY-15-SY-16 (2014)
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/52/Supplement/52_SY-15/_pdf)
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
吉澤 誠(ヨシザワ マコト)
東北大学 電子情報システム・応物系内 サイバーサイエンスセンター 先端情報技術研究部
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
Tel:022-795-7128
E-mail:
向田 陽一(ムコウダ ヨウイチ)
株式会社リアルデザイン 総合企画部
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区花京院2-1-5 第8ダイワビル10階
Tel:022-713-6531 Fax:022-713-6534
E-mail:
<販売製品・事業に関すること>
岡庭 貴志(オカニワ タカシ)
株式会社イメージワン 営業企画グループ
〒160-0022 東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア6F
Tel:03-6233-3414 Fax:03-6233-3411
E-mail:
<JST事業に関すること>
櫻間 宣行(サクラマ ノリユキ)、松澤 義朗(マツザワ ヨシロウ)
科学技術振興機構 JST復興促進センター
〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町4丁目6番1号 仙台第一生命タワービルディング20階
Tel:022-395-5712 Fax:022-395-5830
E-mail:
<報道担当>
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail: