三菱電機株式会社と国立大学法人 東北大学は、長距離通信が可能なマイクロ波帯(5GHz)注1)と超高速通信が可能なミリ波帯(60GHz)注2)の受信回路を、低コストなSi-CMOSで1チップ化した「5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFIC」を開発しました。
複数の無線規格に対応し、切り替え可能にすることで、安定した通信環境と高速な無線通信の実現に貢献します。
注1)
建物などで通信経路の見通しがつかない場合でも、長距離通信が可能。無線LANなどに用いられる。
注2)
通信を妨げる障害物がなく見通しのつく(近距離である)場合に、超高速通信が可能な周波数帯。
5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFIC
<開発の背景>
無線通信ネットワークには大規模災害時を含め、どんな状況下においても安定した通信環境を提供できる高い信頼性と、通信の高速化が求められています。東北大学は、一つの端末で複数の無線規格に対応(ヘテロジニアス)し、最適なシステム回線を選択することで、長距離通信と超高速通信をシームレスに(途切れなく)切り替え可能にする構想を「ディペンダブル・エア」として提唱してきました。
本構想に沿って三菱電機と東北大学は今回、マイクロ波帯(5GHz)とミリ波帯(60GHz)を、低コストなSi-CMOSで1チップ化した「5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFIC」を開発しました。
本開発は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術」(研究総括 浅井 彰二郎)における研究課題「ディペンダブルワイヤレスシステム・デバイスの開発」(研究代表者 東北大学 電気通信研究所 坪内 和夫 名誉教授)での成果です。
<開発の特長>
複数の無線通信規格の周波数に対応したICの小型化を実現
・5GHz帯と60GHz帯に対応した回路を一部共有することで、周波数帯ごとに分けた場合と比べ、回路面積を約30%削減
・基板にICを実装した時の電波経路を電磁界シミュレーションで予測することで、ICの試作回数を減らし、開発コストを削減
本成果の詳細な技術的内容は、2014年10月5日(日)からイタリアで開催される国際会議「EuMW 2014(European Microwave Week 2014)」にて発表します。
<今後の展開>
本プロジェクトの成果を用いて、IEEE802.11系の無線LAN規格などの標準化に貢献していきます。また、本開発で得られた技術的成果は、三菱電機の高周波デバイス事業、特にミリ波帯の通信製品の開発にも順次応用していく予定です。
<特長の詳細>
1.回路の共有化による面積の削減
受信感度で有利なスーパーヘテロダイン方式注3)を60GHz帯受信回路に採用することで、ダイレクトコンバージョン方式注4)を採用した5GHz帯受信回路の周波数変換部と回路を共有することが可能になり、回路面積を約30%削減しました。
注3)
受信した無線信号をそれよりも低い周波数である中間周波数に変換し、それをベースバンド信号に変換する方式。受信感度で有利。
注4)
受信した無線信号を直接ベースバンド信号に変換する方式。電子部品数を減らすことができ、回路面積を削減できる。
図1 開発した受信RFICの回路構成
2.IC実装時の解析技術による開発コストの削減
ミリ波帯を扱うICを基板に実装する際、意図しない電波経路ができることがあります。今回、電磁界シミュレーションにより電波の経路を予測し、高周波性能への影響を把握することで、ICの試作回数を減らすことが可能になり、開発コストを削減しました。
図2 開発したICの実装写真と電磁界解析
<その他の特長>
分布定数線路による60GHz帯偶高調波ミクサの損失の低減
局部発振器の周波数を所望周波数(60GHz帯)の半分(30GHz帯)にすることが可能な偶高調波ミクサにおいて、分布定数線路を用いることでミリ波帯に適した三菱電機独自の構成を採用しました。これにより、無線信号から中間周波数への変換における損失を低減しました。
図3 60GHz帯偶高調波ミクサの構成
<主な仕様>
5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFIC |
周波数 |
利得 (dB) |
雑音指数 (dB) |
IP1dB注5) (dBm) |
5GHz帯 |
32 |
5 |
-42.2 |
60GHz帯 |
32 |
8 |
-43.5 |
注5)
通過利得が1dB低下する入力電力
<お問い合わせ先>
<開発内容に関すること>
【報道担当】
三菱電機株式会社 広報部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
Tel:03-3218-2865 Fax:03-3218-2431
【開発担当】
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 業務部
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
Fax:0467-41-2142
http://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html
東北大学 電気通信研究所 21世紀情報通信研究開発センター(IT-21センター)
名誉教授 坪内 和夫(連絡担当: 准教授 亀田 卓)
〒980-8577 宮城県仙台市青葉区片平2-1-1
Tel:022-217-6121 Fax:022-217-5533
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<JST事業に関すること>
科学技術振興機構 戦略研究推進部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2064
<報道担当>
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