平成24年11月15日
三菱重工業株式会社
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
国立大学法人 名古屋大学
独立行政法人 科学技術振興機構
三菱重工業株式会社(MHI)と独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、放射性物質の分布状況を可視化する特殊なカメラ装置「放射性物質見える化カメラ」のプロトタイプ機『ASTROCAM 7000』を共同開発しました。これはJAXAが中心となって開発に成功した「超広角コンプトンカメラ」をベースに改良したもので、感度、画像、視野角などでこれまでにない優れた性能を実現しました。
現在、JAXA、MHIに国立大学法人 名古屋大学を加えた開発チームが、「先端計測分析技術・機器開発プログラム」を推進する独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の協力を得て注1)、プロトタイプ機の更なる高感度化と早期実用化に向けた開発に取り組んでおり、その成果をもって今年度内にMHIが商用機『ASTROCAM 7000HS』を市場投入します。
超広角コンプトンカメラは、JAXAが中心となってMHIと共同で開発を進めてきた「衛星搭載用ガンマ線検出器」の技術を応用したものです。JAXAと独立行政法人 日本原子力研究開発機構(JAEA)は本年2月、このカメラが地上での放射性物質の分布の可視化に非常に有効であることを実証しており注2)、この実証が「放射性物質見える化カメラ」開発の起点となりました。
「放射性物質見える化カメラ」は、放射線の飛来方向とそのエネルギー(波長)をリアルタイムで同時に測定可能で、放射性セシウム134(Cs-134)、同137(Cs-137)、放射性ヨウ素(I-131)など、ガンマ線を放出する物質の識別ができるのが特徴です。
具体的には、ガンマ線が粒子の性質を持つことによるコンプトン散乱注3)の原理を活用することにより、1~5マイクロSv/h程度の環境下で、環境バックグランドの数倍の強度のホットスポットをほぼ180度という広い視野で検出できます。測定は20~30mの距離から可能で、家屋の屋根や敷地など広範囲に集積した放射性物質の分布状況を簡易に画像化することができます。
JAXAとJAEAが本年2月に行った実証試験では、計画的避難区域で線量測定や撮像などが実施され、放射性セシウムの分布状況の高精度画像化などで所期の目的を果たしています。JAXA、MHI、名古屋大学は現在、これら実証試験の結果を踏まえ、更なる性能の充実に取り組んでいます。
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