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参考

<成果の詳細:実験の概要と補足>

1.開発した光スイッチ構造

今回開発した光スイッチ(図1)は、厚さ200ナノメートル(ナノは10億分の1)のInGaAsP薄膜に微細な空孔を460ナノメートルの周期で三角格子状に配列したフォトニック結晶中に作製されています。中央部に1か所2個の空孔を85ナノメートル外側にシフトさせた領域が配置されていますが、この各領域が非常に強い閉じ込め効果を持つ光共振器として働きます。共振器のQ値注8)は6500と比較的高く、共振器中の光の閉じ込め体積は0.025立方ミクロンしかなく、誘電体をコアとして持つ高Q共振器としては最も小さなサイズの共振器が実現しています。この共振器の両側に入力用と出力用の導波路がつけられており、入力導波路から入力された信号光が出力導波路に抜け出てくる出力強度を、同じ導波路から別途入力する制御光パルスによってスイッチすることによって動作します。

2.スイッチング測定実験

図2には、信号光の出力導波路への出力強度を時間分解で測定しながら、制御光パルスを入射した測定結果を示しています。制御光パルスが入力された間だけ、信号光の出力が遮断されて光スイッチとして機能しています。スイッチングに必要な制御光パルスのエネルギーは、3dBのスイッチングコントラスト比を得るためには(光強度を半分にすることに相当)420アトジュール、10dBのコントラスト比を得るためには(光強度を10分の1にすることに相当)640アトジュール必要でした。このエネルギーはこのスイッチを毎秒100億回(10ギガビット)で動作させた場合でも、消費パワーがそれぞれ4.2マイクロワット、6.4マイクロワットにしかならないこと意味します。

3.各種光スイッチの性能比較

得られた結果をこれまでに報告されている光スイッチと比較したものを図3に示します。従来のスイッチでは高速化すると消費エネルギーが上がってしまうという問題が明らかでしたが、今回NTTの研究所が開発した素子は、従来の素子に比べると高速化と低エネルギー化が同時に達成されています。図4にサイズを含めた別の比較を示しますが、本素子のサイズが従来の素子に比べて圧倒的に小さいことがわかります。高速化と低エネルギー化が同時に実現できたのは、素子サイズを超小型化できたことが要因です。