両機関は、幹細胞研究を一刻も早く世界人類の再生医療などの実用化に結びつけるためには国際協力が重要であるとの認識を共有して、今後、シンポジウムの開催、研究者交流、共同研究の実施などの協力を進めていくことに合意しました。
JSTとCIRMは、日本とカリフォルニアとの間で、今日存在する最も深刻な疾病のうちのいくつかに関して、幹細胞を使った治療法をさらに発展させるため共同研究の基盤を築きます。この合意により、カリフォルニアと日本の研究者たちは、再生医療における特定の分野の研究において求められる専門知識の幅を広げるための共同の財源を得ることが容易になります。また、この合意に基づき、幹細胞に関するセミナーや会議を共同で開催することにより、研究者間の交流が今後一層活発になることも期待されます。
シュワルツネッガー カリフォルニア州知事は、「今回の協定により、世界の一流の頭脳が結集し、より多くの命を救うための新しい治療法が開発されることでしょう。日本とカリフォルニアの科学者や医師が協力することにより、現在、死に至る危険のある病に苦しむ何百万人もの人々に希望を与えることができます。今回の協定により得られる医学的発見は、今後何世代にもわたって、大きな影響を及ぼすことでしょう。」と述べました。
アラン・トロンソン CIRM理事長は、「私たちは、幹細胞研究分野全般を急速に促進することがCIRMの使命だと認識しています。地理的な距離を乗り越えて、より効率的に研究を進めるために最善の努力をはらいます。また、カリフォルニアと日本が幹細胞研究において連携することは、あらゆる深刻な疾病に対する新しい医学的治療法を発見するという目標に向けた大きな前進です。」と述べました。
北澤 宏一 JST理事長は、「幹細胞研究を一刻も早く世界人類のための再生医療などの実用化に結びつけるためには、国際協力が重要であり、このためJSTはCIRMとの協力を積極的に推進していきます。」と述べました。
クライン CIRM評議会議長は、「この合意は、カリフォルニアと日本の科学者間における強固な協力の絆をさらに強めるものです。これらの協力関係は、京都大学の山中 伸弥 教授が、サンフランシスコのグラッドストーン研究所に研究の場を広げてからこの1年で非常に強化されています。CIRMは、この合意の仲介の労を執って頂いたことに対し、山中教授に感謝します。」と述べました。
京都大学の山中 伸弥 教授は、「iPS細胞研究に携わる研究者の目的は、一刻も速く創薬や再生医学での応用を実現させることです。そのためには、各研究者の開発競争とともに、研究者間の協力も同じくらい大切です。フェアな開発競争で得られた新しい成果や技術は、速やかに国境を越えて共有される必要があります。それが次の成果の発展を促進します。iPS細胞研究に関しては、国際間競争のみが強調される傾向にありますが、国際協力なくして、早期の応用実現はあり得ません。今回、国際協力を促進する第一歩として、日米の代表的研究資金提供機関であるJSTとCIRMとの提携を提案いたしました。両機関のご理解と多大なるご尽力により、提携が速やかに調印されたことに感謝しております。これを機に、研究者の交流や共同研究が活発化し、iPS細胞研究の進展とその実用化が促進されることを期待しております。」と述べました。
なお、本年6月に、CIRMはカナダ癌幹細胞共同体およびオーストラリア・ヴィクトリア州と同様の合意内容を発表し、また、先月、英国医療研究委員会との3番目の合意を発表しています。
・セミナーやシンポジウムの共同開催
・研究者交流
・共同研究
・双方の合意によるその他の協力
科学技術基本計画の中核的実施機関として、日本のイノベーションの創出の源泉となる「知の創造」から「研究成果の社会・国民への還元」までを、総合的に推進し、それとともに、その基盤となる「科学技術情報の提供」、「科学技術に関する理解増進活動」などを推し進めている機関です。
京都大学の山中 伸弥 教授のiPS細胞の研究は、JSTが実施している戦略的創造研究推進事業CRESTから生まれました。
ホームページURL:https://www.jst.go.jp
カリフォルニア再生医療機構(CIRM:California Institute for Regenerative Medicine)
2004年11月にカルフォルニア州の住民投票により大学・研究機関の幹細胞研究を対象とした10年間で最大約3000億円($3B)の債権発行が承認され、併せて2005年初めにCIRMが再生医療を支援する新たな州の機構として創設されました。厳格な倫理・医療基準のもと幹細胞研究・再生医療の支援と振興を行い、慢性的な疾患や怪我を対象とした医薬、治療法、診断、研究技術の発見と開発に資する幹細胞の研究および関連する生命研究と研究施設整備を対象とした研究費の支給と融資を行っています。
ホームページURL:http://www.cirm.ca.gov/
<経歴>
アラン・トロンソン 理事長
アラン・トロンソン博士は、カリフォルニア州サンフランシスコにあるカリフォルニア再生医療機構(CIRM)の理事長です。2008にCIRMへ参加する以前は、ステムセル・サイエンス社の教授であり、かつ、モナシュ大学のモナシュ免疫・幹細胞研究所 所長も務め、現在も名誉教授の肩書きを有しております。また、トロンソン博士は国立バイオテクノロジーセンターとしての中心拠点である『オーストライリアステムセル研究所』の創設したことでも知られています。
トロンソン博士は、モナシュ大学における1977年の創立以来、多くの職位に携わっておられます。1985年にはヒト初期発生研究センターの所長、1991年には産科学および婦人科医科学/小児科学の学科長、2003年には幹細胞科学の学科長を歴任しました。また、ロイヤルカレッジの産科学・婦人科学フェロー、オーストラリアおよびニュージーランドカレッジの産科学・婦人科学名誉フェロー、ブリュッセル大学 医学部の名誉博士の称号を得ております。
トロンソン博士はヒト試験管内受精のパイオニアであり、関連する種々の生殖技術、例えば着床前期胚での遺伝性疾患診断、ヒト胚性幹細胞の発見と樹立およびその神経・前立腺組織および呼吸器への分化能の発見を行ってきました。
北澤 宏一 理事長
昭和41年 3月 | 東京大学 理学部化学科 卒業 |
43年 3月 | 東京大学 大学院工学系研究科工業化学専門課程修士課程 修了 |
47年 1月 | マサチューセッツ工科大学 材料・冶金専攻博士課程 修了 |
[47年 2月 | Doctor of Science(理工学博士)学位授与] |
47年12月 | マサチューセッツ工科大学(セラミックス部門) 研究員 |
48年 1月 | 東京大学 工学部合成化学科 助手 |
54年 3月 | 東京大学 工学部合成化学科 講師 |
57年 4月 | 東京大学 工学部物理工学科 助教授 |
62年 7月 | 東京大学 工学部工業化学科 教授 |
平成元年 4月 | 東京大学 工学部超伝導工学専攻 教授 |
3年 1月 | 東京大学低温センター センター長 併任 |
7年 4月 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
11年 4月 | 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授 |
14年 5月 | 同大学 退職 |
14年 5月 | 科学技術振興事業団 専務理事(~平成15年9月) |
15年10月 | 独立行政法人 科学技術振興機構 理事(~平成19年9月) |
19年10月 | 独立行政法人 科学技術振興機構 理事長 就任 |
高温超伝導セラミックスの研究論文を内外に数多く発表し、この分野の最高権威。超伝導物質の開発に大きな業績を残す。1980年代後半に起こった高温超伝導フィーバーの火付け役として知られる。
昭和63年 | 日本セラミックス協会セラミックス大賞、日本応用物理学会賞(論文賞)、日本IBM科学賞(物理部門) |
昭和64年 | アメリカセラミックス学会フルラス賞 |
平成 8年 | 日本応用磁気学会論文賞、超伝導科学技術賞 |
平成12年 | 日本セラミックス学会“20世紀のセラミックスを先導した論文”論文名「セラミックスの粒界拡散の研究」 |
平成13年 | 粉体粉末冶金協会論文賞 |
平成14年 | 紫綬褒章 |
日本経済の現状を客観的に検証・考察した「科学技術者のみた日本・経済の夢」(アドスリー)など。
<お問い合わせ先>
瀬谷 元秀(セヤ モトヒデ)
科学技術振興機構 戦略的創造事業本部 研究領域総合運営部
〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル
Tel:03-3512-3524 Fax:03-3222-2064 E-mail:
Don・Gibbons(ドン・ギボンス)Chief Communications Officer
California Institute for Regenerative Medicine
210 King Street, San Francisco, CA 94107
Tel:+01-415-396-9117 E-mail: