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<用語の説明>

 レチナール
レチナールはロドプシン内の発色団で、光(可視光)を吸収する役割を持つ。可視光を吸収するとシス・トランスの異性化などの構造変化が起こり、ロドプシン全体が構造変化し、その信号が視神経を通して脳に伝わる。レチナールの構造はビタミンAとよく似ており、実際にビタミンAから作られる。ビタミンAが不足すると鳥のように夜目が見えなくなる、いわゆる鳥目になるのは、実際にはレチナールが不足するため。

 フラーレン
炭素原子からなる籠状の分子。とくに60個の炭素原子からなるサッカーボール型のC60分子がよく知られている。カーボンナノチューブの中にとくに取り込まれやすく、電子顕微鏡観察においても球殻状の形状から認識しやすい。

 カーボンナノチューブ
炭素からなる極細の円筒状物質。ここで扱われる単層カーボンナノチューブは、直径が1~2nmほどで、内部空間にさまざまな物質を取り込むことができる。とくに電子顕微鏡観察において試験管の役割を果たすことが示されてきた。

 シス・トランス異性体(幾何異性体)(cis-trans isomers)
有機分子や錯体の異性体の一種。炭素の二重結合に2つずつの異なった基が結合する場合は、主鎖(炭素数最多の鎖)となる炭素骨格が同じ側(同じ炭素ではない)につくとシス (cis) 形、反対側につくと トランス (trans) 形の幾何異性体となる。

 球面収差補正
電子顕微鏡の分解能は、「入射電子の加速電圧」と「レンズの球面収差」の二点で決まる。球面収差補正は電子顕微鏡の分解能を向上させるため、対物レンズの収差(球面収差)を補正する新技術で、加速電圧を上げることなく分解能を向上させることができる。

 ロドプシン(光受容膜たんぱく質)
網膜にある視細胞で、目に入った光を電気信号に変える。オプシン(7本のαへリックス)とレチナール発色団からなる。視覚のメカニズムの最初のステップを担う物質である。

 コンフォメーション(立体配座、conformation)
相互に変換可能な空間的な原子の配置のこと。とくに生体分子は各結合の立体配座が変化することで立体構造全体が大きく変化する。