JSTトッププレス一覧共同発表 >用語解説

<用語解説>

注1)IpgB1タンパク質:
赤痢菌が持つ針状のIII型分泌装置から菌体外へ分泌される病原タンパク質。

注2)低分子量Gタンパク質(RhoGタンパク質、Rac1タンパク質):
細胞の運動や形を司るアクチン骨格の重要な制御因子であり、代表的なものとしてRho、Racなどが存在します。Rhoはアクチンストレスファイバー、Racは波状仮足(細胞膜の辺縁部が幅広く薄くなり波状になった細胞膜)の形成を誘導します。

注3)III型分泌装置:
赤痢菌、O-157、サルモネラなどの病原体が持つ、宿主細胞へエフェクターを分泌する針状の器官。なお、ヘリコバクター・ピロリなどの病原体が持つ繊毛に似た分泌器官はIV型分泌装置と呼ばれています。

注4)エフェクター:
病原細菌のIII型分泌装置やIV型分泌装置など特殊な分泌装置により宿主細胞に移行し宿主に様々な影響を与えるタンパク質。

注5)ELMOタンパク質:
Engulfment and Cell Motilityの略名。線虫からヒトまで広範囲に発現しており、細胞運動に関わっているタンパク質。ELMOタンパク質にはN末端側に活性化RhoGタンパク質が、C末端側にDock180タンパク質が結合することが報告されています。

注6)Dock180タンパク質:
Rac1タンパク質と結合し、活性化させることのできるタンパク質。ELMOタンパク質と複合体を形成しており、通常は細胞質に存在していますが、外部からの刺激により細胞膜へと移行するとRac1タンパク質を活性化させることが報告されています。

注7)アクチン:
アクチンには単量体であるG-アクチンと複数のG-アクチンが重合したF-アクチンとがあります。宿主細胞内ではF-アクチンが繊維状に重合した構造物(アクチンフィラメント)が細胞の背骨の役割を果たし、細胞の形態維持に重要な役割を担っています。赤痢菌は菌体表面の一極に発現されたVirGタンパク質により菌体の一極でF-アクチンの重合を促進し、菌体の後部にアクチン凝集束を形成して菌体を前に押し出すことで運動の推進力を作り出すことが知られています。その様子は彗星が尾を引いて動いているように見えることから、アクチン凝集束を「アクチンコメット」と呼ぶこともあります。

注8)ラッフル膜:
細胞を刺激したり細胞が運動したりする際に、細胞膜の辺縁部が幅広く薄くなり波状になった細胞膜(波状仮足)のこと。ラッフル膜の部分ではアクチン骨格の再構成が活発で、この部分は活発な運動性を持ちます。なお、従来よりラッフル膜形成には低分子量Gタンパク質のRac1が重要な役割を果たすことが知られています。