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<用語解説>

(注1)ジスルフィド結合:
 蛋白質上のアミノ酸である二つのシステインが、二つの電子を失う酸化反応を受けることにより形成される、二つの硫黄原子(S)により結ばれる共有結合です。有機分子をRと表現した場合、R-S-S-Rと表されます。

(注2)ユビキノン
 細菌の細胞膜やミトコンドリアの内膜に存在する電子伝達体の一つで、細胞呼吸の代謝機構の最終段階である電子伝達系において、呼吸鎖複合体(後述)の間の電子の仲介を行う物質です。なお、狭義では酸化型のユビキノンのことを指し、還元型のユビキノンは「ユビキノール」と呼ぶことがあります。

(注3)呼吸鎖複合体:
 細胞が酸素を取り入れて最終的に二酸化炭素を放出する細胞呼吸を行うほとんどの生物に見られる、細菌の細胞膜やミトコンドリアの内膜に存在する分子量10万~100万程度の巨大蛋白質です。ミトコンドリアでは4種類の呼吸鎖複合体があり、細胞呼吸を行うときに起こる複数の代謝機構の最終段階の反応である電子伝達系の機能を担っています。

(注4)メチオニンマーキング法:
 アミノ酸であるメチオニンの硫黄原子がセレン原子に置き換わったセレノメチオニンを含む蛋白質の結晶を用いると、重原子であるセレンにより発生するX線の異常散乱を測定できます。そこで、遺伝子操作により特定の部位にセレノメチオニンを取り込ませた変異蛋白質の結晶を作成します。この蛋白質結晶のX線回折像を本来の蛋白質のX線回折像と比較することによって、セレン異常散乱の場所を電子密度地図上に位置づけることができます。それを立体構造を組み立てる際の目印として活用することにより、分解能の低いデータからの立体構造モデルの構築が容易になります。

(注5)ペリプラズム空間:
 大腸菌などのグラム陰性細菌において、内膜と外膜の間に存在する領域のこと。

(注6)小胞体:
 真核細胞の細胞小器官の1つ。分泌蛋白質は小胞体上で合成されつつ膜を越えてその内腔に到達します。ここで、ジスルフィド結合の形成や糖鎖付加が行われ、分泌蛋白質の高次構造の形成反応が進行します。

(注7)ミトコンドリア:
 真核細胞においてエネルギー合成や呼吸代謝を担う細胞小器官のこと。好気性細菌が真核細胞と共生することでミトコンドリアに進化したと考えられています。

(注8)PDI:
 正式名称Protein Disulfide Isomerase。小胞体内腔に豊富に存在し、複数のチオレドキシン(後述)ドメインからなる酸化還元酵素。特異的な酸化酵素で酸化されると小胞体内でのジスルフィド結合を導入する酵素として働くが、その他にジスルフィド結合の異性化(架け替え)機能を持つとされており、蛋白質の酸化還元反応で中心的役割を果たします。最近の研究によれば、これ以外の細胞機能も担う多機能蛋白質と考えられています。

(注9)チオレドキシン:
 細胞質に存在する小型の蛋白質で、酸化還元活性を担うCys-Xaa-Xaa-Cys配列をもっています。チオレドキシン自身は還元活性が強いですが、類似の立体構造と活性部位をもつチオレドキシンドメインは様々な酸化還元酵素に見いだすことができます。