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補足説明

※1 カーボンナノチューブ
「炭素(カーボン)」できた、直径が「ナノ」メートルの「チューブ(筒)」状の物質。1991年に飯島澄男博士により発見。(ナノは10のマイナス9乗。)

※2 テラヘルツ波
0.3テラヘルツ(THz)~10テラヘルツの周波数を有する電磁波(テラは、10の12乗)。ミリ波・サブミリ波・遠赤外線が該当する。

※3 電磁波とデバイスの相互作用・検波
電流電圧特性が直線ではない非線形な電子デバイス(例えばダイオードなど)と電磁波の相互作用には、古典的な相互作用と量子的な相互作用がある。前者を利用した電磁波の検出を「古典検波」、後者を利用した電磁波の検波を「量子検波」という。量子物理学によると、電磁波は波の性質を持つとともに、粒子(光子)としての性質も持つ。周波数が低いほど波としての性質が表に出るが、周波数が高くなってくると粒子としての性質が出てくる。一般に、温度と周波数に対応するエネルギーの大小で電磁波のどちらの性質が前面に出てくるかが決まる。周波数が温度に対して十分に高くなると粒子的な性質が前面に出てくる。たとえば、可視光は1eV(エレクトロンボルト)程度のエネルギーを持つが、室温のエネルギーは30meV(ミリエレクトロンボルト)程度なので、前者の方がずっと大きく、光子としての性質が強く表れる。テラヘルツ波は10meVくらいのエネルギーを持ち、状況によってどちらの性質も出てくる。このような電磁波と電子デバイスの相互作用を考えたときに、電磁波が単に電子デバイスの両端に振動する交流として重畳されるだけ場合を「古典的な相互作用」という。これに対して、電磁波が光子として電子デバイス中の電子に吸収される場合、「電子は電磁波に対して量子的に応答した」という。

※4 量子ドット
電子を微小な空間に閉じ込めるために超微細構造を人工的に形成した導電性結晶のこと。材質や形状は様々で一般に数ナノメートル~数十ナノメートルほどの大きさ。量子ドットに閉じ込めた電子は、とびとびのエネルギー準位を持ち、これが原子を取りまく電子と同じ性質であることから、「人工原子」とも呼ばれる。

※5 クーロンブロッケード現象
非常に微細なトンネル接合における1個の電子の帯電効果のこと。一つの電子がトンネル障壁を通り抜けることで、系の静電エネルギーが増加し、外部からその増加分のエネルギーが与えられない限り電子のトンネルが抑制される。しかし、この静電エネルギーは通常、非常に小さく、効果の観測は極低温に限られている。

※6 半導体量子井戸
電子を2次元的な薄膜に閉じこめた構造。江崎玲於奈博士により1970年頃に提案された。量子ドットではすべての方向に電子を閉じこめるので、0次元的ともいえる。

※7 電磁波とのコヒーレントな相互作用
「コヒーレント」の定義は広い。ここでは、量子コンピュータに本質的な電磁波とのコヒーレントな相互作用に関して述べる。一般に、電磁波が電子に当たると電磁波の電界によって電子は揺さぶられるが、このことを量子物理学で取り扱うには、電磁波と電子の相互作用を取り込んだシュレディンガー方程式を解かなければならない。シュレディンガー方程式は電子の量子状態が時間的にどのように変わってゆくかということを与えてくれるが、一般に固体デバイスでは、電子は格子や不純物などによって頻繁に散乱されるために、シュレディンガー方程式が予測するような時間変化をしない。この場合、電磁波と電子の相互作用の時間変化を直接シュレディンガー方程式で追いかけることはできず、近似解が使われる。このような状況を、電磁波と電子のインコヒーレントな相互作用という。これに対して、シュレディンガー方程式にしたがって時間変化する場合を、コヒーレントな相互作用といい、量子コンピュータにはこのようなコヒーレントな相互作用が必要である。