用語説明

 受精卵で形成される精子由来の核。精子が運んできた父親の遺伝情報を保持する。雄性前核は受精卵の端部で形成された後、受精卵の中心部へ移動し、雌性前核と融合する。雌性前核は母親の遺伝情報を保持する卵子由来の核である。雄性前核と雌性前核の融合により、父親と母親の遺伝情報を保持する子供の核が作られる。

*2. 微小管
 チューブリンと呼ばれる蛋白質が結合してできた直径約25nm(ナノメートル:1ミリメートルの100万分の1)の管。細胞内で常に伸縮を繰り返す。核の移動のほか、細胞の形の維持や細胞内の物質の運搬などにも使われる。


 コンピュータを使って行う模擬実験。さまざまな実験条件での物体の挙動や状態の変化を、コンピュータで計算し予測すること。本研究では、[押しモデル]と[引きモデル]のしくみを使った雄性前核の移動をコンピュータで計算し予測した。

 実験対象物の性質や実験条件をあらわす定数。コンピュータ・シミュレーションで必要。本研究では、雄性前核の半径(5μm)、微小管の本数(100本)など。細胞の性質に関するパラメータの正確な測定は難しいことが多い。結論がパラメータの値に依存しないことは、本研究の大きな特徴である。

 体長1mm程度の糸ミミズのような形の虫。体細胞数が1000以下で全身透明であることなどから多細胞生物の発生の研究に適する実験モデル生物。2002年のノーベル医学生理学賞はC. elegans研究の先駆者3名に与えられた。

 特定の遺伝子を、人工的に機能しなくする実験。突然変異体を用いる実験が代表例。本研究では、ダイニンの遺伝子(dhc-1遺伝子)を機能しなくした。dhc-1遺伝子を機能しなくすると、雄性前核は移動しなくなった。

 動力を発生する蛋白質の総称。細胞のさまざまな動きで使われる。ダイニンはモーター蛋白質の1つで、微小管と結合すると、微小管に沿って一定の方向に動く。ダイニンが細胞質に固定されている場合は、ダイニンは、結合した微小管を一定の方向に引く。