JST(理事長:沖村憲樹)は、戦略的創造研究推進事業の堤治元研究代表者(東京大学医学部教授)に係る研究費の不適正な経理処理の情報を受け、関係書類の確認、元研究代表者、研究関係者及び取引企業に対する聞き取り調査を実施した。その結果は次の通りである。 |
1:研究概要 |
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戦略的創造研究推進事業のチーム型研究(CRESTタイプ) |
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研究領域「内分泌かく乱物質」平成10年度採択 |
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研究課題「ヒトを含む哺乳類の生殖機能への内分泌かく乱物質の影響」 |
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研究期間 平成11年1月1日~平成15年12月31日終了 |
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2:調査概要 |
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不適正な経理処理の内容(概略)
元研究代表者のCRESTタイプの研究に関連して、平成11年3月から平成14年3月までの期間に、3社で合計15,509,210円の不適正な経理処理があったことが判明した。 |
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予算管理体制
元研究代表者の研究室の予算管理は、元研究代表者が自ら予算管理することなく、研究員や事務員の複数の人に任せていたが、その責任体制が明確でなく統制のとれた管理がなされておらず曖昧であった。このため、予算使用について一部誰の指示かも不明なまま執行されていた。 |
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3:個別調査内容 |
(1)A社
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物品未納分相当額:1,056,825円 |
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JSTに金額を請求したものについて、A社の担当者は納品したと主張しているが、それを証明する企業側受領書がないため、A社との話し合いの結果未納扱いとし、未納分の金額を返還してもらうこととした。 |
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(2)B社
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物品未納分相当額:3,984,445円 |
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B社は、以前に納品した分について支払いがなされていないため、研究室の事務員に支払いを依頼したところ、JSTから支払われたと主張している。元研究代表者は、B社に未払金があるとの話があり、支払うように指示したことは認めているが、どの予算との指示はしていない、とのことであった。
以前に納品されたものに対して、請求内容と納品物が合致しているかどうか確認できないこと及び企業側受領書がないため3,984,445円を返還してもらうこととした。 |
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(3)C社
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物品未納分相当額:10,467,940円 |
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元研究代表者の研究室から発注を受けたが、納品指示がないため未納となっているものである。この未納分について、C社は発注を受けているので早く納品したいと事務員に複数回伝えたが、納品指示がなく未納の状態になっている、と主張している。一方事務員は、C社から未納分があると聞き元研究代表者に口頭で伝えたと思う、と述べている。これに対し元研究代表者は未納分があることも知らなかったとのことであった。 |
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C社は発注を受けているので納品したいとの申し出であったが、JSTとしては納品せずに請求がなされており不適正な経理処理であるので、未納分の金額については返還をしてもらうこととした。 |
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4:関係者の処分 |
(1)元研究代表者に対する措置
元研究代表者に対し以下のとおり措置する。
今回の案件については、直接的に元研究代表者が企業に購入指示を行うなどの関与は認められないが、予算管理の責任がありながら、納品がなされていないにも拘わらず支払いの手続きが進められていたことなど、実際は予算管理をしていない状態であり、その管理責任は重いものと考えられる。
以上のことにより、元研究代表者の不適正な経理処理の管理責任に対し「今後JSTの各事業への応募の資格停止(当年度+4年間、平成16年度~20年度)」の処分を文書で通知した。 |
(2)企業に対する措置
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A社
・返還金:1,056,825円+105,038円=1,161,863円
・取引停止措置:通知後1ヶ月( 10月8日から11 月7日まで) |
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B社
・返還金:3,984,445円+362,421円=4,346,866円
・取引停止措置:3ヶ月以上当分の間停止。( 10月8日から )
納品の確認ができなかったことに対し注意するともに、これらの改善の報告に基づき停止措置の解除を検討する。 |
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C社
・返還金:10,467,940円+1,373,915円=11,841,855円
・取引停止措置:通知後3ヶ月( 10月8日から1 月7日まで) |
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5:再発防止について |
(1)研究者に対する再発防止の周知・徹底
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注意文書の発出 |
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新規領域発足時、研究者の採択時(募集説明会及び研究代表者説明会で実施)領域会議その他研究者が集まる場で周知 |
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事務処理担当者説明会において周知 |
(ブロック単位の説明会の実施:平成15年7月22日~31日全国8ブロックで実施)
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(2)事業本部関係者への指導及び研究室での物品確認の徹底
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事業本部関係者への周知・徹底(技術参事会議、事務参事会議等) |
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物品確認マニュアルの見直し及び物品確認の徹底(各研究室において実施) |
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(3)「不適切経理に係る研究費の執行停止等に関する達」を制定
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研究費の不適正な経理を行った研究者に対する研究費の執行停止及び申請資格の制限措置を規定 |
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公募要領において、不適正経理を行い研究費の返還等がなされた研究者については一定期間応募できない旨記載。 |
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(4)事業のスキームの一部見直し
研究者に密着した経理事務を行うことにより、さらに適切な管理・事務処理を図るため平成16年に発足したチーム型研究領域から、大学等研究者の所属機関に研究費の執行を委託化。 |
(5)事業本部として、新たに各研究室に赴き監査及び調査を実施する。 |
以 上 |
*本件についての問い合わせは、
独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造事業本部 研究支援部
部長 藤原 正博 までお願いします。
Tel:048-226-5637、fax:048-226-5654 |
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