平成15年10月29日
埼玉県川口市本町4-1-8
独立行政法人 科学技術振興機構
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戦略的創造研究推進事業(チーム型研究/CRESTタイプ)における
研究者の測定費用の架空発注疑惑についての追加調査の結果及び助成団体に係る
研究機材購入についての調査結果、並びに措置内容について

1.測定費用の架空発注疑惑についての追加調査の結果
 当機構の戦略的創造研究推進事業のうちチーム型研究(CRESTタイプ)の研究代表者である堤治東京大学医学部産婦人科教室教授(平成10年度採択課題「ヒトを含む哺乳類の生殖機能への内分泌かく乱物質への影響」:研究期間は平成11年1月1日から平成15年12月31日まで)について、平成15年6月3日に発表した堤研究代表者の「測定費用の架空発注疑惑」に関し、関係企業及び研究室関係者に対しての、その後の調査については、次のとおりである。
no1 関係企業に対する調査については、当該企業の取締役社長に確認を行ったところ、平成11年の秋から冬の間に堤研究代表者と会談した際、堤研究代表者から「測定費用については支払う」との話があったことを認めている。しかし、具体的な測定費用の内容については、双方共確認しておらず、堤研究代表者は「共同研究の際に試験的な測定に対する費用の支払い」であると思い、取締役社長は「今後の測定費用に対する支払い」と思っていたとの事であった。両者は思い込みによる誤解があったかも知れないと言っている。
no2 当時の研究室関係者に対し接触を試み、電話での応答が得られたが、その回答は「事業団の件は知らない」とのことであり、これ以上の回答は得られなかった。
no3 これらの状況を鑑みるに、事実の詳細までは解明されていないが、明らかに一部不適切な経理処理があったと判断できる。機構としての調査範囲は全て試みた結果であり、調査は基本的には終了したものと考えている。
2.助成団体に係る研究機材購入についての調査結果
 堤研究代表者について、助成団体に対し虚偽報告の疑惑があるとの報道を受け、堤研究代表者、助成団体、関係企業その他関係者に対して、聞き取り調査及び関係書類の調査を行った。
 その結果、次の事実が判明した。
no1 堤研究代表者が助成団体に提出した報告書に記載された備品6点のうち5点について、機構が関係企業A社から購入した備品であることが判明した。
 また、備品6点のうち残りの1点(紫外・可視分光光度計)について追跡して調査を行った結果、当該備品の購入につき、その費用として、平成12年2月に機構から関係企業A社に支払われた消耗品(研究材料の伝票3枚)の支払代金1,218,000円が充当され、実際には伝票記載の消耗品の納入はなされていないことが判明した。
no2 堤研究代表者は、備品の購入につき消耗品の伝票で処理した件については、今回の機構の調査を聞いて初めて知ったもので、このような処理の指示を出したことはないと主張している。
no3 A社は、備品1点については、当時の研究室関係者から消耗品で請求を行うよう指示を受けたが、実際には当該消耗品の納入は行っていなかったことを認めている。
no4 当時の研究室関係者は複数いるが、消耗品での請求を指示した件については、「指示したことはない」または「担当外のため知らない」との主張であり、確認できなかった。
 しかしながら、備品の1点については、不適切な経理処理がされていたことは明らかである。
no5 機構の費用で購入した備品6点のうち5点については(残り1点は消耗品購入として不適切な処理)、助成団体への報告前である平成11年3月に購入しており、機構の物品であることを「物品標(シール)」を貼付して明示している。さらに、毎年事務参事が研究室に赴き、実地で物品の確認も行っており、機構の所有物品であることは確認済みである。
 また、堤研究代表者は、平成11年8月頃、助成団体に寄付申請を行うことを考え、購入予定物品として、平成11年3月に医学部附属病院本院に納品された機構購入物品と同様の物品を、当時堤研究代表者が勤務していた医学部附属病院分院にも揃えようとの趣旨から物品購入リストを作成し、平成12年4月1日付けの助成金等交付申請書に添付した。その後、当該申請が受理され、同年10月に助成団体から2,000万円が東京大学の口座に振り込まれたが、平成13年4月に本院と分院が統合されたため、同一の物品を購入する必要がなくなり、当該物品の購入は行わなかったと主張している。また、助成団体の報告書に添付されている写真(機器と堤研究代表者が一緒に写っている)について、堤研究代表者は当機構の備品5点を使用したことを認めている。
3.措置内容
(1)堤研究代表者に対する措置
 6月の「測定費用の架空発注疑惑」及び今回の「助成団体に係る研究機材購入」に関し、研究費の取扱いが結果として不適切であったこと、物品等の購入に関し実情を把握せず極めて不透明な取扱いとなってしまったこと、助成団体への報告書の添付写真に当機構の備品を使用するという不適切な行為、及び機構の基礎研究に対する信用を失墜させたこと並びに社会的道義的責任も鑑み、堤研究代表者の管理・監督責任は重いものと考え、以下の措置を講じる。
no1 上記の管理責任及び助成団体への報告書の添付写真に当機構の備品を使用するという不適切な行為に対し「厳重注意」を行う。
no2 「研究代表者」としての職務権限を全て止め、その権限を復活することはしない。しかしながら、既に行われた研究についての責任はとるものとする。
 今後の本研究の実施については、引き続き研究の取りまとめを行うため、研究総括(鈴木継美東京大学名誉教授)を研究代表者の代行として指名し、領域アドバイザーの助言を受けながら、平成15年12月31日の研究終了まで継続を図ることとする。

(2)関係企業A社に対する措置
no1 機構から支払われた金額(1,218,000円)及び延滞利息金の返還請求。
no2 機構の全事業にわたる契約・調達について、3ヶ月間の取引停止措置。
4.再発防止の対応について
 JSTの基礎研究については、個人型研究及びチーム型研究において不適切な経理処理が発生したことを踏まえ、再発防止に向け no1ブロック単位の説明会の実施 no2領域会議等の場での周知 no3新規採択時の説明など研究者に対する注意喚起を重点的に行ってきたところである。また、科学研究費補助金制度の見直しも参考とし、JSTにおいても不適切な経理処理を行った研究者については、一定期間研究費交付の対象にしないこととする。さらに、今後とも適正な研究の推進及び経費の執行に十全を期していくこととしたい。
以 上

本件の詳細な内容についての問い合わせは、
独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造事業本部 研究支援部
部長 藤原 正博 までお願いします。
Tel:048-226-5637、fax:048-226-5654

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