筋収縮を調節する分子メカニズムの一端を解明
<用語解説>

※1 アイソフォーム
 機能はほぼ同一であるがアミノ酸配列が異なるタンパク質分子。複数のアイソフォームが含まれているタンパク質試料からはよい結晶を得ることが難しい。複数のアイソフォームが存在する理由はまだよく判っていない。複数のアイソフォームの遺伝情報は、同一のDNAに由来する場合(スプライシングバリアント)もあれば、異なるDNAに由来する場合もある。

※2 プロテアーゼによる限定分解法
 タンパク質分子(複合体)内で安定に立体構造を保持する部分を同定する方法。ふつうタンパク質分子(複合体)内には、安定に立体構造を保持する部分と、立体構造を形成しないループ状の領域が存在する。この方法では、低濃度のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を短時間作用させることによって、切断されないのは前者、切断される部位は後者であると結論する。

※3 多波長異常分散法
 X線結晶構造解析法の一つ。一連の金属原子のX線散乱能は波長に強く依存することを利用してタンパク質結晶構造を決定する。従来の方法では、構造決定のためには複数種の重金属原子(原子量の大きい金、白金、水銀など)を結合したタンパク質の結晶が必要だったが、この方法ではただ一種の金属原子を結合した結晶を用意すれば解析が可能になる。ただしこの方法では、波長可変のX線を使う必要があること、信号が微弱なため従来よりは輝度の高いX線源が必要でありかつ精度の高い測定が必要となる。以上の理由から、この方法はSPring-8のような放射光実験施設を使ってはじめて可能になった。この方法は最近5年間盛んに用いられるようになった。

※4 Å(オングストローム)
 長さの単位。1オングストロームは1 ×10-10メートル(= 0.1ナノメートル)。X線結晶構造解析においては、高次構造の解像度を示す単位として用いられる。数字が小さいほどより高解像度の立体構造であることを示す。

※5 X線回折強度データ
 結晶などにX線を照射して測定されるデータ。このデータをもとに結晶内に含まれる分子の立体構造を決定する。

※6 疎水性
 水分子との親和性の低い(なじみにくい)性質。逆に水分子との親和性の高い(なじみやすい)性質を親水性という。タンパク質を構成するアミノ酸には疎水性の性質を持つもの、親水性の性質を持つものそれぞれが存在し、タンパク質分子中において疎水性(または親水性)の残基が部分的にまとまって疎水性部分(または親水性部分)を形成していることがしばしば見られる。

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This page updated on July 3, 2003

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