補足説明
1.既存のミッション・プログラム(I)との関係について

 「ミッション研究」とは、「社会的問題の解決のために重要と考えられるミッションを(行政ニーズ等の観点から)設定し、その目標達成のために研究リーダーが、目的・動機を共有する優秀な研究者を各分野から集めて研究チームを組織し、研究拠点において流動的な研究体制で研究を実施する。」という性格を有している。
 平成13年度から第1のミッション・プログラム「安全性に係わる社会問題解決のための知識体系の構築」に関する研究が開始されているが、今般の情報システム・セキュリティに関するミッション・プログラムは、第2のミッション・プログラムとして実施するものであり、既存のプログラムとは並列の関係で進めるものである。

2.「情報システム・セキュリティ」をミッション・プログラムの対象とする理由及び背景について

 「社会技術の研究開発の進め方について(社会技術の研究開発の進め方に関する研究会報告書、平成12年12月22日)」に示された社会技術プロジェクトの課題候補が列挙されており、具体的選定に当たっては「社会への適用を前提とした間に見える成果が期待できる課題」であるべきとの指摘のもと、その課題候補の一つに、「情報セキュリティの社会技術」が挙げられていた。そして、その概要については、「情報科学技術の急速な進歩とネットワークの発展によりもたらされた情報技術の利用の変化を解明し、情報セキュリティの確保のため、社会制度、情報システム、倫理・認識面のそれぞれに必要となる事項の抽出、また、情報技術を利用する人間の行動解析を行う。この成果を活用し、個人、集団、社会の様々なレベルにおける情報セキュリティ強化のための対応方策(マニュアル、指針、講習の実施など)、システム技術への応用(ソフトウェア開発等)といった具体的な対応を合理的・効率的に行うための理論体系を構築する。」とされていた。
 今日における情報技術の進展が急激であること、上記の課題候補のリストアップの時点からの社会情勢の変化等を十分踏まえ、文理融合による俯瞰的かつ開かれた研究手法を用い、社会的影響の全体像の把握、負の影響の解決を内在する技術体系(社会システムのフェイル・セーフ化)により可能となる新たな社会システムの支援技術の開発、シナリオの提示等を目指す「社会技術プロジェクト」の一環として、「情報システム・セキュリティ」に関する調査研究の必要性が改めて高まってきており、今般、これをミッション・プログラムIIとして独立的に開始することとしたものである。

3.「情報(システム)セキュリティ」に関する関係省庁の施策等との関係について

 「情報システム・セキュリティ」に関する政府の取り組みとしては、平成12年2月29日に内閣官房に情報セキュリティ対策推進室が設置され、官民における情報セキュリティ対策の推進に係る企画及び立案並びに総合調整を業務として行っている他、関係省庁においても、ウイルス対策、不正アクセス対策、暗号技術、セキュリティ評価・認証等に関する各種施策がそれぞれの所掌範囲において実施されている。
 しかしながら、新技術の典型例ともいえる「情報技術」に関して、その戦略的利用等により技術体系を再活性化させ、社会のニーズに対応した最適な技術体系を樹立していくと同時に、新しく出現した技術体系を社会が使うための仕組み(制度)、人間の能力の発揮やインセンティブを働かせるやり方を開発し、社会に便益を受け渡していくための文理融合による「社会技術」的視点からの調査研究は、未だ実施されるには至っていない。
 したがって、今般、「情報システム・セキュリティ」に関する調査研究を社会技術研究システムにおけるミッション・プログラムとして開始することは、昨今の情報技術の展開及び多様化がもたらす社会への影響を考慮すれば、まさに時宜を得たものであるといえる。

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