研究課題別中間評価結果(環境7)


1.研究課題名

 環境影響と効用の比較評価に基づいた化学物質の管理原則

2.研究代表者名

 中西準子 横浜国立大学環境科学研究センター

3.研究概要

 化学物質による環境への負の影響(リスク)とベネフィットを評価し、そのバランスにたって化学物質の管理原則を導くこと、最終的には、化学物質に関する環境政策に科学的な根拠を提供することに資することを目的に研究を行っている。
 これまでに、いくつかの化学物質を選び、その環境中動態の把握、人の健康へのリスク評価で一定の実績を挙げ、また、生態リスク評価手法の開発でも評価がでつつある。特に、ダイオキシン、内分泌撹乱性物質についての研究では、この研究の独自性、先進性、有効性を証明できた。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 化学物質の環境中動態の予測、実測、リスク評価においては、ダイオキシン、大気中ベンゼンなどを対象物質とし、人や生物への暴露解析を行い、リスク評価につなげてきた。これまでに、ダイオキシンについては、主たる発生源の推定に成功した。その結果、歴史的には農薬不純物の影響が最大であることを見出した。
 生態影響についてのフィールド調査と実験室試験の研究では、化学物質、開発などが生態系に与える影響を生態リスクとして定量的に評価することができるように調査・試験が進められている。
 リスク評価手法に関する研究では、損失余命を尺度とする人の健康リスク評価手法、種の絶滅確率を尺度とする生態リスク評価手法の開発、およびリスク・ベネフィット原則に基づく総合評価の手法の確率と事例研究を目的として、基礎理論体系の構築といくつかのモデル構築を試みてきた。
 今後は、これらの3つの大課題についてさらなる展開が期待される。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 これまでの本研究の成果は、(1)代表的な化学物質の環境動態の解明と、人への健康に対する化学物質のリスクの評価およびその手法の一般化、(2)生態リスク評価の手法開発、(3)リスク・ベネフィット解析であるが、これまでの研究は順調に推移している。
 今後、動態解析においては、ダイオキシン、大気ベンゼンに焦点を当てた研究を進める。また、特に河川の内分泌撹乱物質の研究にも着手して予定である。生態リスク評価では、バイオアッセイによる水系、土壌系での検討を行って行く計画である。
リスク・ベネフィット評価では、基礎理論の充実をはかるとともに、実例を増やして行く予定である。
 本研究の最終的な目的は、開発した評価手法や具体例を今後の環境政策に科学的な根拠を持たせることに資することにある。本研究は、現在ことさら社会的な関心の中心である化学物質についての研究であるだけに、多いに成果が期待される。
4-3. 総合的評価
 本研究は、重要な研究課題であるが順調に推移しており、外部にも評価が高い。化学物質の管理についての今後の環境政策に、ひとつの科学的な根拠を提供できる可能性がある。

This page updated on Feburary 3, 2000

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