研究課題別中間評価結果(環境5)


1.研究課題名

 森林衰退に係わる大気汚染物質の計測、動態、制御に関する研究

2.研究代表者名

 佐久川 弘 広島大学総合科学部 助教授

3.研究概要

 全国各地の森林衰退に係わる汚染物質の計測を行い、さらにその動態および制御に関する大気化学的,気象学的解析を行う。又,土壌環境の調査や樹木への生理活性に立ち入って調査・解析する。この研究により、大気汚染物質が森林に与える影響の評価を踏まえた、新たな大気環境基準の提案に寄与する。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 全国4地点、丹沢・大山、乗鞍岳、瀬戸内海沿岸広島地区、九州山岳地域での森林衰退に関連する大気汚染・酸性雨・酸性霧の状況等、汚染物質の測定データが蓄積された。又、汚染物質の植生への影響を、暴露実験(温室実験または、オープントップチャンバー)により、評価している。汚染物質の被害を受ける植生の生理活性関連データについては、4地点で進捗に差は有るものの、部分的に集積されている。今のところ、汚染物質がどのようなメカニズムを通して、植生の衰退にいたるのかについての解析には至っていない。オープントップチャンバーを中心とする暴露実験は継続し明確な結果と評価を行う。今後2年間に、生理活性をはじめとする、これらデータの充実をはかると同時に、研究目標に沿った、研究方針の確認、研究活動の重点化をとおして、従来の研究に無かった、独自の成果を期待したい。本研究プロジェクトの周辺で、過去に行われた研究の実績を踏まえ、本研究の成果を位置付けることが必要である。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 汚染物質の動態を含む、4地点固有の大気汚染状況はかなり、把握された。得られた結果は、さらに広範な地域に関する、汚染物質のマクロな動態研究とも符合する。暴露実験による汚染影響評価、及び生理活性を中心とする、植生側のデータの充実は、今後の課題である。森林衰退のメカニズムについては、オゾン由来の活性化酸素について精力的に研究を進めているが、過去の研究実績を踏まえた、十分説得力を持ったデータの蓄積、及び解析が望まれる。4地点を代表として選択しているが単に、各地域の独立した結果ではなく、各地域における研究実績のインテグレーションを目指したい。又、地域固有のデータとするにとどまらず、一般化した、結論を望みたいところである。今後、研究目標の再確認、焦点の絞込み等を通じて、最終ターゲットへの道筋を効率よく辿ることにより、独自の成果を挙げることを期待したい。
4-3. 総合的評価
 全国4地点、丹沢・大山、乗鞍岳、瀬戸内海沿岸広島地区、九州山岳地域の大気汚染物質とその動態に関する測定データは蓄積された。森林衰退と大気汚染物質との関連を明確に把握するには、今一層の計測、分析の努力が必要である。今後、更に、大気汚染物質の制御に対する提案に進むためには、主要な対象地域、および植生に焦点を絞込み、研究活動を重点化する必要がある。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp