研究課題別中間評価結果(環境4)


1.研究課題名

 CO2倍増時の生態系のFACE実験とモデリング

2.研究代表者名

 小林和彦 農業環境技術研究所 室長

3.研究概要

 水田の大気CO2濃度をFACE(Free Air CO2 Enrichment:解放系大気CO2増加)装置によって高め、イネを始めとする水田生態系の構成要素および要素間の相互作用が、高CO2によりどう変化するかを、実験的に解明する。さらに実験結果を用いて、イネの成長と生態系の数字モデルを作り、将来の高CO2の影響を予測する。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 FACE実験装置の開発は、平成10年初頭に、完了し、雫石の実験圃場に設置、イネの生育等に対する影響の、第一年目の実験を、ほぼ順調に進行させた。得られた知見をもとにして、実験装置、実験計画等の微修正を施して、第二年目の実験を推進する。
 CO2の濃度制御は、本プロジェクトにおける、重要な管理項目であり、技術的な開発 要素も多いが、現在のところ目標値(500ppm)の±20%の中に収まっており、ほぼ目標どおりと言えよう。今後、加えるべき改良についても、ほぼ見通しを得ているので、問題無く推移することが見こめる。研究期間終了までに、あと、2回の実験を予定しているが、FACE実験の国際性(米国、欧州に次、本実験は3番目、アジアで初)に鑑み、イネの代表的なデータとし、他の地域のFACEデータに比肩しうる質の高い結果を目指すことを期待したい。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 既存のCO2希釈、空気吹き込み方式のFACEに対して、純CO2放出型で空気吹き込みを行わない日本独自の方式を開発した。目標値の±20%の制御はほぼ満たしており、濃度分布もほぼ、満足する範囲にある。今後、制御方式の微修正を含む改善により、FACE装置の完成は見通せる状況にある。イネの生育を中心とする一年目のデータが出ており、成長と収量に対する高CO2の影響が、数値的に明らかにされ始めた(収量は10数%増)。収量のほか、光合成・蒸散、水田生態系の炭素・窒素の動態等、生態系関連のデータも、測定対象としているが、今後の2年間で確実な成果をあげるために、焦点を絞り込み、測定データの種類を重点的に選択することが望まれる。
4-3. 総合的評価
 ほぼ、順調に当初の研究目標に対して、成果をあげつつある。イネの収量をはじめ、予想結果を裏付けるデータが得られているのみならず、新たな興味深い知見も部分的に得られている。本研究期間中、余す所後2回の実験予定において、イネの成長と収量を中心に、対象測定データの重点化を図り、世界各国FACEと比肩しうる質の高い結果を期待したい。

This page updated on Feburary 3, 2000

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