研究課題別中間評価結果(単一6)


1.研究課題名

 フェムト秒領域の光反応コントロール

2.研究代表者名

 山内 薫(東京大学大学院理学系研究科 教授)

3.研究概要

 本プロジェクトでは、「化学反応の経路をフェムト秒レーザー光によって選択的にコントロールし、特定の生成物の生成を可能とするための具体的な方法を確立すること」を目指している。具体的には、多原子分子の光解離反応の「現実的な制御」を念頭においており、反応生成物への経路に分岐が存在するとき、その一方のみを選択的に進行させることを目指すものである。特に、2つ以上の超高速(フェムト秒領域)レーザー光パルスの「時間差」、「位相」、「波長」、「輝度」をコントロールすることによって、化学反応制御のための最適な方法を探索し、提案することが狙いである。ここで、光反応コントロールの方向としては、大別して、レーザー光子場が弱い場合の「摂動領域におけるコントロール」と、レーザー光子場が強い場合の「ドレスト領域におけるコントロール」の2つに分けられる。特に、ドレストポテンシャルの形成に関する成果は、光によって分子の構造を変化させる可能性を初めて示したものである。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 山内教授のグループは、若いチームであり、野心的な研究目標を設定しているが、理論と実験の連携も良くとれ、当初の目標の一つであった分子内振動エネルギー再分配(IVR)を明確にとらえることが出来た。また、いくつかの実験手段が開発され、特に質量選別運動量映像解析(MRMI)は、合目的性の高い方法で、今後これらの手段の活用でさらなる展開が期待される。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 強光子場での分子の配向、ドレスト状態のコントロールなどの成果は、世界に先駆けて見出されたものである。今後、強光子場における多原子分子の化学としてダイナミックスを追求することで化学反応のコントロールに途をひらく可能性が考えられる。
 現在は、具体的な経路選択の図式が出ていないが、CREST期間中に選択性の解明に至って欲しい。また、強光子場の実験研究の中で、極端紫外光の取り出しにも成功している。今後、分光学的応用が期待される。
4-3. 総合的評価
 強光子場の化学は、まだ、取り組んでいる研究者が少ないが、このグループで見出したいくつかの実験手段や特徴的なドレスト状態の発見などは、世界に先駆けているものが多い。実験データに、理論が裏打ちされれば化学の世界に大きなインパクトを与えると考えられる。

This page updated on Feburary 3, 2000

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