研究課題別中間評価結果(単一5)


1.研究課題名

 高次構造有機分子の極微細触媒構造を基軸とする立体選択的構築

2.研究代表者名

 福山 透(東京大学大学院薬学研究科 教授)

3.研究概要

 現在、使用されている医薬の中には、不斉中心をもった高次構造の制御された有機分子が極めて多い。しかし、天然品以外の合成医薬は光学分割によって、光学活性体を得るかラセミ体をそのまま用いている場合が多い。一方、近年、不斉有機合成は、その目覚ましい進歩により光学活性な医薬合成に実用化されている例が増えつつある。しかし、触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応が応用されている例は極めて稀である。本研究では、新たに鍵物質の立体選択的な合成法を開発するとともに、共同研究者らの開発した不斉炭素-炭素形成反応をも効率的に応用し、複雑な構造を有し、且つ医薬的に重要な有機化合物の立体選択的全合成研究を行っている。
 現在までに、エクチナサイジン等、抗腫瘍性物質の全合成に関し、合成過程での鍵物質たるインドール誘導体の新規で効率的な合成手法を確立した。そして、この知見を用いて数種の全合成に成功している。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 有機天然物全合成に関する研究は、標的分子の合成の難易度、合成手法の斬新さ、合成物質の社会的重要性等、多くの因子により評価される。福山教授のチームは、国際的に力量のあるチームであり、今までに難度の高い天然物合成において成果を上げてきた。特に共同研究者の応援も得て、急速に研究が進展した。今後は、福山グループを中心とした体制で独自のアイデアの実証を進めて欲しい。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 エクチナサイジン、ビンブラステイン等、アルカロイド系有用生理活性物質の全合成に成功した。特に、鍵物質たるインドール誘導体の新しい合成法を開発したこと、及び、臨床試験等をにらんで、大量合成を可能とする方法を開発したこと等、インパクトの大きい成果を出している。
 複雑な化合物の大量合成という大目的にそった方法論の開拓を常に心がけている姿勢からは、将来さらに優れた成果が創出されることと期待される。
4-3. 総合的評価
 希土類金属を含む錯体を不斉合成触媒として用いる方法や、インドールユニットの効率的合成法などは、生理活性物質の新規合成手法として意義があると評価される。
 今後はターゲットをにらんで、手法は勿論、コンセプトの面でも斬新な成果を挙げて欲しい。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp