研究課題別中間評価結果(量子8)


1.研究課題名

 スピン計測 -スピンSPMの開発とスピン制御-

2.研究代表者名

 武笠幸一(北海道大学大学院工学研究科 教授)

3.研究概要

 電子スピンの関与する量子現象を積極的にとりあげる。最大の目標は、走査プローブ顕微鏡(SPM)技術を用いて、原子レベルの空間分解能を有するスピン計測技術を創出することで、その一つは走査トンネル顕微鏡(STM)を用いるもの(SP-STM)、他の一つは原子間力顕微鏡(AFM)を用いる交換力顕微鏡(EFM)を開発することである。この開発途上でスピンメモリーなどのスピンデバイスへのいとぐちを見出す。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 スピン走査顕微鏡を開発する目標は明確であるが、その達成には多大な困難が予想された。目標に向けた実験的研究の見通しと立ち上げに遅れたことが反省点である。最近になってSP-STM法で、スピンからと思われる信号像を観測できるようなった。これがスピン信号像であるこが検証できれば、原子レベル分解能のスピン検出という本来の目標へ向けて本格的な取り組みが出来ることになる。交換力顕微鏡(EFM)については、まだスピン信号の観測には至っていないが、基礎となるAFM技術は進展してきている。漸くスピンSPMを研究するための体制が整ってきている。ぶれのない研究方針のもと、目標達成のために知恵とパワーを集結することが肝要。本チームは特許出願に対する意識は高く、現時点で本研究領域で特許出願件数は最多である。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
1)円偏光照射によるSP-STM信号像の検出。
 MgO上のFe原子層レベルのエピタキシャル薄膜成長技術の成功と、高真空STM装置の改造によってスピン像と思える像を観測した。この信号の確実な検証を期待する。その上で、分解能の向上を図ることを期待する。
2)EFM開発のためのAFM技術の進展。
 NiO単結晶表面の原子配列をSi探針を用いて観察することに成功した。強磁性探針を用いたEMF信号の確認を期待する。 
3)理論計算
 分子軌道法による探針先端ナノ構造のスピン電子状態の計算、第一原理による磁気交換相互作用の計算がなされた。これらは、スピン像の実験的検証がなされて意味を持つもので、スピン像の検証を確実にする実験的努力を期待する。
4-3. 総合的評価
 原子レベルの分解能を有するスピンSPMという、極めて困難な目標を達成させるためには、SPM技術で究極の実験技術を必要とされるが、当初は開発テーマを分散しすぎて、SPMの実験的技術開発に立ち遅れがかなり見られた。最近になってSTM方式によるスピン像と思える信号を捉えることに成功したとしているが、これに期待する。漸くスピンSPMを開発するための体制が整ってきている。ぶれのない研究方針のもと、目標達成のために知恵とパワーを集結することが問われている。

This page updated on Feburary 3, 2000

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