研究課題別中間評価結果(量子7)


1.研究課題名

 3次元集積量子構造の形成と知能情報処理への応用

2.研究代表者名

 廣瀬全孝(広島大学工学部 教授)

3.研究概要

 シリコン量子ドットの自己形成及び位置制御により、共鳴トンネル素子、量子ドットメモリーなどの素子機能を実現し、これを超微細MOSトランジスターと融合させた知能情報処理システムを探索する。また量子ドットを二次元及び三次元的に集積し、その量子効果を利用した知能情報処理機能システムの基礎を確立する。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 当初の目標はSi量子ドットによる3次元量子構造と超微細MOSトランジスターの入出力系によって知能情報機能体を構築することである。困難な目標を掲げている。本研究では、各グループの成果と力の総合力が目標に近づく鍵であり、そのことが意識されたチーム運営により研究が推進されている。
 量子ドットの均一化と位置制御技術、超微細MOSFET技術など、各要素技術についてのプロセス的見通しは立ってきている。また、量子ドットを使った連想メモリーデバイスのアーキテクチャーを設計した。残念ながらシステムとしてのデバイスの試作までには至っていず、目標達成はまだ見えていない。プロセス要素技術の更なるブラッシュアップが必要である。後半期の成果に期待する。2次元デバイス回路での機能発現を早く確実にするということに、研究パワーの集約が必要であろう。3次元については構造形成をプロセス的に達成することを期待する。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
1)Si量子ドットの選択領域への高密度形成と量子ドットMOSFETの試作に成功。
 SiO2上に選択的に量子ドットを形成する技術を確立し、その技術に基づいた量子ドット位置制御装置を完成させ、位置制御を実現することが見込まれる。また、量子ドットを用いたフローティングゲートMOSFETの試作に成功しており、産業への波及効果が見込まれる。
2)ゲート長30nmの極微細MOSFET作成のための基本要素技術を確立。
 1nmレベルの極薄膜ゲート酸化膜技術、微細素子分離技術、低エネルギーSbイオン注入による浅接合技術などを確立し、極微細MOSFETプロセス技術は最先端レベルにある。早急に安定なデバイス特性の達成が望まれる。
3)確率的連想メモリーアーキテクチャの実現性の進展
 単電子トランジスターCMOS回路と既存のCMOS集積回路の融合により、確率的連想メモリーアーキテクチャを構築し、システム設計とシミュレーションによって実現性を確認した。1)の量子ドットと2)の微細MOSにより、具体的なデバイスとして実現が期待される。
4)量子細線の自然形成
 シリコン基板上のアルミニウム膜を陽極酸化して直径数十nmの微細孔が2次元配列したアルミナのナノホール構造を作成した。ナノホールへCu埋め込み、銅細線の2次元配列に成功。2次元配列した金属細線のフィールドエミッターなどへの応用が期待できる。
4-3. 総合的評価
 量子ドットを用いた知能情報処理システムの構築という困難な目標に向かって、研究努力がなされている。システム構築の要素技術の着実な進展はみせている。しかし、システムとしてのデバイスの試作までにはプロセス要素技術の更なるブラッシュアップが必要である。今後の更なる努力と目標へ向けての集中が必要である。
 量子ドットデバイスの機能発現、MOSFETの微細化の極限を示すとともに、サイズ限界の次にくるものとして、Siテクノロジーの将来方向が示されることを期待する。

This page updated on Feburary 3, 2000

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