研究課題別中間評価結果(量子5)


1.研究課題名

 自己組織性分子を用いた新規発光機能材料の設計

2.研究代表者名

 筒井哲夫(九州大学大学院総合理工学研究科 教授)

3.研究概要

 有機材料の高度な自己組織性と分子配向性を活用した発光機能材料の開発及び量子構造機能として新しい発光機能を発現させ、革新的な発光デバイスの突破口を切り開くとするのを目標としている。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 有機材料により革新的な発光デバイスの突破口を切り開くとする本チームの目標に向けて、多様な試みを積極的に取り上げて研究を進めてきている。その結果、個々の研究としては進展し、研究成果にはなって来ている。ただし、発散気味のところもあり、これが本命というものが十分に見えてきていない。ただ、幾つか芽はあるので、目標に向けたテーマの絞り込みをして、それからの展開が必要であろう。
 有機ELの研究開発に貢献してきた実績をもとに、従来の有機ELにはない、新しいフォトニック有機材料の創出が期待されている。その期待に応える成果を出して欲しい。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
1)液晶中の発光中心からの円偏光発光を発現した。
 円偏光発光というのは従来にない発見である。現状は光励起発光であるが、これを電気励起発光に進展させることができれば、いろいろなデバイスへの応用も期待される。
2) 微小共振器から指向性の強い発光デバイスの開発。
 一次元微小共振器の設計指針を確立し、指向性発光の高性能安定デバイスを実証した。民間企業との共同研究であり、具体的デバイスの実現を期待する。一方、三次元微小共振器の探索は研究途上で、微細加工にかなりの困難が予想される。有機分子の自己組織性を取り入れるような何らかの新展開を図ることが必要である。
3) 層状ペロブスカイト系化合物研究の進展。
 有機アミン成分への発色団の組み込みに成功し、無機ペロブスカイト半導体層の励起子から有機発色団へのエネルギー移動の確認、また、蒸着法による薄膜成長の成功などが評価される。今後はエピタキシャル成長と薄膜構造の制御を期待する。
4) シリカ微小球の2次元フォトニックバンド。
 シリカ微小球による2次元配列体を形成し、可視領域のフォトニックバンドの創出に成功。自己組織性有機分子による3次元フォトニックバンドが創出できれば光導波回路に新しい展開が期待できる。
4-3. 総合的評価
 研究代表者は有機ELの研究開発に貢献してきた実績をもとに、従来の有機ELにはない、新しいフォトニック有機材料の創出を目標として研究を展開している。その要素技術になるような成果を種々出してきていることは評価される。しかし、まだ革新的な発光デバイスの突破口が何かの姿が見えていない。目標へ向けてのテーマの絞込みをどうするかが問われている。新しい有機分子デバイス創出につながる一層の成果を期待する。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp