研究課題別中間評価結果(量子4)


1.研究課題名

 量子場操作

2.研究代表者名

 清水 明(東京大学大学院総合文化研究科 助教授)

3.研究概要

 極微細構造を持つ系において、電子と光子の両方がその量子性を示す現象を探索し、それを発現する極微細構造を人工的に創生することを目標としている。具体的には、原子のボーズアインシュタイン凝縮系の創生と制御、原子波ホログラフィー、サブポアソン光の発生、少数光子による光非線形などに関し、実験と理論の両面から追究する。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 原子のボーズアインシュタイン凝縮(BEC)など話題性の高いテーマであり、世界に競争者も多い。この分野の第一線の研究者を擁している本チームの研究の進捗は世界的レベルの競争という面が大きい。その中で、BECの実現は日本では最初の成功であったが、世界の先端グループからは遅れをとったのは残念である。広帯域サブポアソン光の発生でトップデータを更新し続けているのは評価される。原子波ホログラフィ-では1998年の仁科賞を受賞した。理論では量子場での独自の理論体系の構築に挑戦続けている。今後は、BEC実現の遅れを挽回し新たな展開をはかること、サブポアソン光の微細LEDによる高性能化などに成果の迅速化を期待する。テーマが多いので発散の懸念があるが、自由に議論する場がチーム内にあるので、あるべき方向を見出すことが期待される。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
1)BECの実現。世界に遅れたが、今後どのように独創性を発揮して行くかが問われる。
原子凝縮系と光子との相互作用を積極的に制御し、原子波レーザーの実現などを目指し世界の先陣を切るところへ追いつくことが期待される。
2)原子ホログラフィ-は独自の技術として展開をしてきている。微細加工などへの実用的な展開は困難が予想されるが、BECの成果と相俟って新しい科学・技術への展開を期待する。
3)サブポアソン光の発生は広帯域化(300MHz)及び低ノイズ化の記録を更新している。微細発光ダイオードによる、さらなる性能向上(1GHz)が最終目標であり、そこまでの達成を期待する。また、応用への具体的展開が期待される。
4)量子暗号の提案はホモダイン型検出によって高い検出効率と盗聴による量子状態の変化を観測するというもので、当初の目標には無かった成果であるが、実用面からも興味深いものであり、実験的な検証を確実なものとすることが期待される。
5)量子場操作の新理論構築。
 BEC理論、微細構造の非平衡定常状態の新理論構築など独創的な挑戦をしている。
この理論が実験的に検証されること、また、実験的確証が新しい理論を生み出すという良い関係がチーム内で作られてきている。
4-3. 総合的評価
 当初、独創的な方法によるBEC実現を目指したが達成できなかった。このため、一般的な方法でのBEC実現が遅れたが、その姿勢は評価したい。この経験をどのように生かしていくかが問われる。サブポアソン光の発生、評価については順調に展開しているが最後の微細LEDによる広帯域化の達成が問われている。その他、実験、理論両面で挑戦的な研究を進めており、今後の成果が期待できる。テーマが多いので発散の懸念もあるが、自由に議論する雰囲気がチーム内に旺盛であることを評価する。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp