研究課題別中間評価結果(量子1)


1.研究課題名

 人工ナノ構造の機能探索

2.研究代表者名

 青野正和 (大阪大学 大学院工学研究科 教授、理化学研究所 主任研究員)

3.研究概要

 様々な興味深い機能が期待される人工ナノ構造を設計、構築し、かつそれらが示す機能を新しい計測法の開発によって積極的に計測、評価して、人工ナノ構造の新しい機能を探索し、ナノサイエンスとナノテクノロジーの世界にブレイクスルーをもたらすことを目的とする。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 新しいSTMの開発とそれらを用いた表面物性探索および表面ナノ構造の解析などに独創的な成果を上げ、研究は順調に進展している。また、理論的にも興味ある発見をしている。ただし、機能性をもつ人工ナノ構造が何なのかまだ見えていない。STM技術のさらなる進展と、それと表裏一体をなすが、機能性人工ナノ構造の構築、さらに、その機能を検出するところまで研究を高めることが期待される。若手研究者が自由な発想のもとに研究を進めており、多様な成果がでてきている。この多様な成果を人工ナノ構造機能としてブレイクスルーとなる成果に結実させていくために、研究代表者の舵取りが重要な時期になってきている。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 1)2探針STMの開発。それぞれの探針を独立に制御し、それぞれで同位置ナノ空間領域を観測する技術を確立している。現在までに達成された探針間距離は100nmであるが、目標の10nm以下の達成を期待する。
2)新方式のSPSTMの開発。スピン偏極電子の探針への入射によって発生する円偏光の偏極度を観測する確度の高い技術である。当初目標には大きく掲げていなかったが、大きな成果である。原子レベルの分解能へ一層の進展が欲しい。
3)Si表面伝導に関する成果。Si(111)表面電気伝導に関し、表面電子準位による電気伝導を観測するなど、一連の研究は評価される結果である。ただ、これらの結果を人工ナノ構造の機能創出にどのよう結びつけていくかの視点が欲しい。
4)固体表面の非磁性原子で形成された鎖が強磁性を示す可能性、原子鎖の局所構造個所での渦電流とそれによる磁気モーメントの発生などの理論提案をしている。これらの、実験グループによる実証を期待する。
 以上のように個々には成果は出ているが、人工ナノ構造の機能と云う以上、単なる表面の構造・物性の観測に止まることなく、表面ナノ構造からどのような有意な機能を人工的に構築するかの現実的な展開が欲しい。例えばSTMによる単電子トランジスターの作製と3探針による計測評価はどのようにしたら可能になるのであろうか、表面微細構造による磁性の発現が実験的に実証され、新規な人工磁気構造の構築が可能となるのであろうか、などである。
4-3. 総合的評価
 独立駆動の多探針STMなどの新しい技術を開発し、それらを用いて人工ナノ構造を構築し、その機能を探索するのがこのチームの主目標であるが、新しいSTMの開発とそれらを用いた表面物性探索および表面ナノ構造の解析などに独創的な成果を上げ、研究は順調に進展している。ただし、人工ナノ構造の機能探索と言うことで、今までの成果から何が柱になるのか見えていない。実験家メンバー、及び理論家メンバーが共同して、この点を明確にして、その達成を目指すことが問われる。

This page updated on Feburary 3, 2000

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