研究課題別中間評価結果(生体4)


1.研究課題名

 「免疫系と神経・内分泌系の立体的分子機構の解明」

2.研究代表者名

 奥村 康 順天堂大学医学部教授

3.研究概要

 従来まったく個別にとらえられてきた免疫系、神経系、内分泌系の現象の相互作用を、我々の新たに見出した種々の遺伝子のノックアウトマウスの作製やその解析を通じて総合的に解明することを目的とする。具体的には、神経疾患における免疫機能分子を明らかにするために、マウスEAEモデルにおけるCD27/CD70およびOX40/OX40Lの役割について検討した。PIMTノックアウトマウスを作製し、その生理的な役割を明らかにした。FasLが好中球に対する遊走能を有することを初めて明らかにし、またマウスのFasLに多型性が存在し、それが活性に影響していることを明らかにした。さらにヒトTRAILに対するモノクローナル抗体を作製し、TRAILの生理的な意義を明らかにした。TNFRファミリーの下流に存在するシグナル伝達分子、TRAF5をクローニングし、in vitroにおける機能を解析するとともにノックアウトマウスを作製してin vivoにおける機能を明らかにした。さらにIκB kinaseの活性化のメカニズムを明らかにした。IL-1α,β,α/βノックアウトマウスを用いた解析から、テレピン油による発熱がIL-1βによっていることを明らかにした。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 当初の目的通りに、マウスの神経疾患モデルであるEAEおける種々の免疫機能分子の役割について明らかにすることができた。また、FasLやTRAF/IKKの研究も進展しており、国際的な評価は高いと思われる。またTRAILの機能解析から予想以上にこの分子が腫瘍特異的な標的細胞破壊において重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあり、今後癌の遺伝子治療を考えるうえで一つの重要な候補分子となりうる可能性が示されるなど、新たな展開も生じている。最初に種々のテーマをプロジェクトのテーマとして遂行しようとしたため、プロジェクトの方向性が散漫になったが、リホームして、まとまってきた。今後はグループメンバーをしぼりこみ、さらにテーマも免疫系におけるTNF/TNFRファミリー分子の生理的な役割にしぼり、研究を遂行していくことが望まれる。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 マウスの神経疾患モデルであるEAEおける種々の免疫機能分子の役割を明らかにし、また、FasLやTRAF/IKKの研究では着実に成果がでており、発表論文もNature Medicine、Journal of Biological Chemistry、Journal of Immunology、Proceedings of the National Academy of Sciences, USA等、国際的に一流の雑誌が多く、十分な成果はでている。その仕事は一流雑誌にも引用されており、国際的な評価は高いと思われる。FasL, TRAIL, TRAF, IKKなどの仕事に関しては、世界の一流のラボとの共同実験もスタートしていることから、今後の成果が期待される。TNF/TNF-Rファミリーの分子の多様性の由来、細胞の死と活性化を左右する中心的分子の存在理由とその使い分けなど、総合的に考えるフィロソフィーの樹立が望まれる。
4-3. 総合的評価
 当初の予定通り神経疾患における免疫機能分子の役割を明らかにすることができた。さらに、FasL、TRAIL、TRAF、IKKの仕事は国際的にも高い評価を受けている。しかし、応用面を目指した研究では国際的にも優れているが、やや独創性に欠ける。

This page updated on Feburary 3, 2000

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