お知らせ


平成11年10月12日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(広報担当)

心表象プロジェクトの成果について
大脳の記憶検索を制御する信号を発見

***大脳前頭葉から側頭葉に向け発信されているトップダウン記憶検索信号の存在を世界で初めて明らかにした***
[英科学誌(ネイチャー)への掲載]

 10月14日付 Nature (Vol. 401, No. 6754) 誌に、大脳の記憶検索を制御する信号について記載した上記の論文が発表される。この研究成果は、東京大学と科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」との共同研究で得られた成果である。

研究実施機関
東京大学医学部および科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」
研究員:冨田兵衛、大林真知子、中原潔、長谷川功
代表研究者:宮下保司(東京大学教授、科学技術振興事業団 国際共同研究事業 「心表象プロジェクト」代表研究者) 
概要
 記憶は大脳側頭葉に貯蔵される。物忘れの大部分は貯蔵された記憶がうまく検索できなくなっておこる。こうした記憶検索の過程を制御するために、大脳前頭葉から側頭葉に検索信号が出されている可能性が心理学的に予想されていた。
 しかし、この検索信号(注1)は、実際に発見されたことはなく、本当に存在するのか、また存在するとしてもどんな性質をもった信号なのか全く不明であった。今回の研究で記憶想起中のサル大脳神経細胞の出す電気信号として、このトップダウン信号を直接とらえるのに成功した。この信号は記憶検索に必要な情報、すなわち対象のカテゴリーの情報や連想によって想起されるべき対象についての情報を含むことが判明した。
 このトップダウン信号の発見は大脳記憶システムの動作様式を明らかにする画期的なものであり、これによって記憶検索の成功/失敗がどのようにして起こるのかを調べる道が開かれたといえよう。この研究成果は英科学雑誌[ネイチャー](平成11年10月14日発行)に掲載される。

注1)前頭葉がヒト大脳皮質の最高の中枢であるとの考えから「トップダウン信号」とよばれる。これは、通常の知覚認識の信号が、後頭葉から側頭葉/頭頂葉、さらに前頭葉へと流れることから「ボトムアップ信号」とよばれているのと対比される。

研究の背景と成果の内容および意義

図の説明

本研究の詳細な内容についての問い合わせは、
  科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」
  代表研究者 宮下保司 までお願いします。
  Tel. 03-5684-3335, Fax. 03-5684-3337

This page updated on October 18, 1999

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