お知らせ


平成11年7月23日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)-226-5606(総務部広報担当)

「アルカリ土壌で生育するイネ(稲)の開発に成功」

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)の戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「極限ストレス土壌における植物の耐性戦略」(研究代表者:森敏東京大学教授)で進めている研究の一環として、アルカリ土壌で生育するイネ(稲)の開発に成功した。
 この研究成果は、7月25日(現地時間)の米国植物生理学会で発表される。

 世界の耕地の67%もの面積は植物の生育に適さない不良土壌で、約半分はアルカリ土壌、残りの半分は酸性土壌である。酸性土壌は石灰などの肥料で改良が可能であるが、アルカリ土壌を改良できる安価で効果的な肥料はこれまで全くない。

 今回、イネ科植物の中で最もアルカリ土壌に強いオオムギからアルカリ耐性に関与する遺伝子を分離し、イネ科植物の中でもアルカリ土壌に最も弱いイネ(稲)にその遺伝子を導入した結果、飛躍的にアルカリ耐性が向上した、アルカリ土壌で生育するイネ(稲)の開発に成功した。

 イネ科植物の生育には鉄(Fe)が必須の元素であるが、アルカリ土壌中では多くの鉄は水に溶けない酸化鉄(Fe2O3)の形で存在するため、そのままではイネ科植物は鉄を吸収できない。イネ科植物は吸収できる鉄が不足していることを根で感知すると、ムギネ酸(鉄と結合し、水溶性の化合物を作るもの)を根の周辺に分泌し、鉄を水に溶ける形にかえて根から吸収する。そこで本研究では、ムギネ酸の生合成能を高める遺伝子をイネ科植物に導入した結果、世界に先駆け、アルカリ土壌で旺盛に生育するイネの開発に成功した。
 今後は、このイネを母本にしてアルカリ土壌で生育する高収量性の優良新種を開発する予定である。

 この研究成果は、爆発的な人口増が予想される21世紀の食糧増産への寄与が期待される。

石灰質アルカリ土壌でも元気に生育する「鉄欠乏耐性イネ」の作出

(問合わせ先)
(研究内容について) 森 敏(もりさとし)
東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授
〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1
TEL:03-5684-4822
FAX:03-5684-4822
(事業について) 石田秋生(いしだあきお)
科学技術振興事業団 基礎研究推進部
〒332-0012 川口市本町4-1-8
TEL :048-226-5635
FAX :048-226-1164

This page updated on July 28, 1999

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