お知らせ


平成11年6月17日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団  
電話(048)-226-5606(総務部広報担当)

「外部磁場を要しない磁気バブルメモリ」

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)の戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「電子波の位相と振幅の微細空間解像」(研究代表者:北沢宏一東京大学教授)で進めている研究の一環として、外部からの磁場を必要としない画期的な磁気バブルメモリの可能性を見出した。
 この研究成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科・北沢宏一教授の共同研究者である東京工業大学応用セラミックス研究所・長谷川哲也助教授らのグループとアトムテクノロジー研究体(JRCAT)の十倉好紀グループリーダーらのグループとの共同研究により得られたもので、6月18日付けの米国科学雑誌「サイエンス」で発表される。

 磁気バブル(注1)メモリは、低価格で大量の情報を記憶させることが可能となることが期待され、電子計算機の記憶装置などに用いられていたが、外部から常時磁場を加えなければならないこと(図1)、加えた磁場が外部に漏れるのを防がなければならないことなどの問題があり、現在広く用いられるまでに至っていない。

 今回、層状構造を有する遷移金属酸化物(LaSrMnO単結晶)を走査型ホール素子顕微鏡(注2)で観察(図4)した結果、ある温度領域では外部から磁場を加えなくても、微細な磁気バブルが発生していることを見出した。磁気バブルが外部からの磁場を必要とせず、自発的に形成されるのは、この結晶の強磁性体(注3)多層膜構造(図2)に起因する。すなわち、この結晶層に垂直な方向の磁化の向きが、結晶層で互いに逆向きになっている場合(図2)、この2つの磁化が互いに作用して、磁気バブルが生じたものと考えられる。しかも、従来は外部から磁場をかけると磁気バブルの磁化の向きは結晶層に対して1つの方向(図1)を向いていたが、この場合は磁化の向きは二方向(図3)をとることができるため、記録密度を高めることができる。

 この研究成果は、高密度の記録を可能とするとともに、磁場をかける機構も磁場を遮蔽する機構も不要になるため、信頼性の高い、小型で安価な磁気バブルメモリの実現が期待される。

「層状構造強磁性体結晶にビルトインされた自発的なバブル磁区」(補足説明)

用語説明

(問合わせ先)
(研究内容について) 長谷川哲也(はせがわてつや)
東京工業大学応用セラミックス研究所 助教授
〒226-8503横浜市緑区長津田町4259
TEL:045-924-5363
FAX:045-924-5363
(事業について) 石田秋生(いしだあきお)
科学技術振興事業団 基礎研究推進部
〒332-0012 川口市本町4-1-8
TEL:048-226-5635
FAX:048-226-1164

This page updated on July 8, 1999

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