研究課題名: | 無機固体表面にナノ空間を創る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究者名: | 小川 誠 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究の狙い: | 無機化合物と有機化合物の界面における自己組織化を利用して分子サイズの空き間を有するナノ複合構造を設計し、特定の化学種を選択的且つ効率的に吸着する物質を合成することを目的とした。従来の結晶質多孔体では実現できない空間サイズの構造制御を念頭に、界面活性剤のメソ構造を鋳型として利用すること、また拡がりうる二次元空間を提供する層間化合物を用いることを試みた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究結果及び自己評価: | 界面活性剤の集合体を鋳型としてシリカの構造制御を行い、大きな比表面積で均一なサイズ分布をもつナノ多孔性シリカを合成することに成功した。形態制御も可能であり、基板上へのコーティング膜、数十ミクロンの厚膜、中空球状の固体などとして生成物を得ることができた。研究期間の3年間、この種の物質に関する研究が注目を集めるようになったが、全く新規な合成ルートの開発で構造と形態の制御が可能となった。これら多孔質シリカについてはマクロな形態とナノ構造の空間的な関係を解明することが今後の課題である。また得られたナノ孔を色素の組織化媒体として利用し、アゾベンゼンの光化学反応、ピレンなどの蛍光挙動を検討した。色素のナノ孔への導入は可能となったが、得られたナノ孔でなければ実現できない特性の発現には至らず、i)さらなるナノ孔の構造制御、ii)導入するゲストの選択肢の拡張、により引き続きこの課題に取り組んでいる。ナノ孔に物質をとじこめることによってのみ実現する物理化学現象を見出していきたい。 また層状物質の層間という二次元の空間を利用した物質設計について、層表面に反応活性なシラノール基を有する層状ケイ酸塩を有機基で修飾した層間化合物の合成を行った。合成法の工夫によりフルオロアルキル基、長鎖アルキル基など嵩高い有機官能基の層間への固定が可能となり、層間での有機基の分布を制御することにも成功した。その結果生成物はさらにある種の有機化合物を選択的に吸着しうることも明らかとなった。この手法により様々な有機官能基を二次元ナノ空間に組織化することが期待でき、重金属イオンや有機塩素化合物などの選択的吸着除去、また有用化合物の濃縮などを目的に官能基の選択とその分布の制御による新規なナノ空間の設計と人類が直面している深刻な環境汚染の浄化に実用可能な機能の発現が今後の課題である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
領域総括の見解: | 表面活性剤を巧みに用いてナノメーターサイズの空孔を規則的にもつシリカの構造体を最初に創りあげたことは、特筆すべきさきがけ研究の成果と言える。この分野のリードを保ちながら、更に有効な応用機能をもつ構造体の創造が期待できる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
主な論文等: |
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This page updated on September 1, 1999
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