お知らせ
平 成 11年4月8日 埼玉県川口市本町4-1-8 科学技術振興事業団 電話(048)-226-5606(総務部広報担当) |
科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)の戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「遺伝子改変に基づく生体防御システムの解明」(研究代表者:審良静男大阪大学教授)で進めている研究の一環として、キナーゼ(リン酸化酵素)の一種であるIKKαが四肢、皮膚の発生に必須の分子であることを解明した。この研究成果は、大阪大学微生物病研究所の審良静男教授(3月31日までは兵庫医科大学教授)のグループによって得られたもので、4月9日付の米国科学雑誌「サイエンス」で発表される。
DNAからRNAが合成される過程において重要な役割を果たしている転写因子の一つであるNF−κB(nuclear
factor kappa B)は、無刺激の状態では、細胞質内でその因子の働きを抑制する蛋白であるIκBと結合している。ところが、ある種の生理活性物質(ある種のサイトカイン)やストレスといった刺激が加わると、生体内にもともと存在しているIκB
kinase(IKK)という大きな複合体が作用し、IκBがリン酸化されて分解される。そして、NF−κBの動きが自由になって核内へと移動し、DNAからRNAが合成されるプロセスを誘導する。最近になってようやく、IKKの構成成分としてIKKα、IKKβという2種のキナーゼが発見されたものの、その実体は不明であった。
今回、IKKαの生体内での役割を探るべく、遺伝子操作によりこれを欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作製し解析した。その結果、このマウスは、四肢、尻尾の伸長が著しく阻害され、また皮膚が異常に光沢をもっており、出生後数時間以内に死亡した。また、受精後12.5日を経過した上記ノックアウトマウスの胎児を調べたところ、その四肢末端では転写因子NF−κBの働きが抑制され、四肢末端の発育に異常が見られた。さらに、受精後18.5日を経過した上記ノックアウトマウスの胎児では、表皮が通常より肥厚しているなど、組織学的な異常が見受けられた。これらのことから、キナーゼIKKαは四肢および皮膚の発生において必須の役割を担っていることが証明された。
この研究成果は、四肢や皮膚の発生異常をともなう遺伝性疾患の原因の解明に一つの光明をもたらすものと期待される。
本件問い合わせ先:
(研究内容について)
竹田潔(たけだきよし)
大阪大学 微生物病研究所
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1
TEL:06-6879-8303
FAX:06-6879-8305
E-mail:ktakeda@biken.osaka-u.ac.jp
(事業について)
石田秋生(いしだあきお)
科学技術振興事業団 基礎研究推進部
〒332-0012 川口市本町4-1-8
TEL:048-226-5635
FAX:048-226-1164
E-mail:ishida@jst.go.jp
This page updated on April 15, 1999
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