JST(理事長 濱口 道成)は、平成26年12月に東京大学から公表された内容に基づき平成28年1月に同大学から調査報告書などの提出を受けました。その内容を精査した結果、JSTの事業において研究活動の不正行為があったことを確認しました。
このため、JSTは、同大学および不正行為が認定された研究者に対して、以下3.の措置を講ずることとしました。
1.研究活動の不正行為の内容
次に掲げるJST事業において、31報の論文の図の一部で捏造・改ざんが行われたことが大学より認定され、JSTは研究活動の不正行為があったことを確認しました。
JSTは4名の研究者がJST事業において不正行為に関与したことを認定しました。
2.不正行為が行われた事業
事業名 | 研究課題または研究領域名 | 研究期間 | 研究代表者 | 不正行為が認定された論文 |
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戦略的創造研究推進事業 (CREST) | 遺伝情報制御分子としてのステロイドレセプター | 平成9年度~14年度 | 加藤 茂明 (東京大学 元教授) | The Journal of Biological Chemistry, 274:12971-12974(1999) Molecular and Cellular Biology, 19:5363-5372(1999) The Journal of Biological Chemistry, 275:33201-33204(2000) The Journal of Biological Chemistry, 276:42684-42691(2001) The EMBO Journal, 20:1341-1352(2001) Molecular Cell, 9:553-562(2002) Biochemical and Biophysical Research Communications, 294:779-784(2002) Molecular and Cellular Biology, 22:3698-3706(2002) Nature Cell Biology, 5:224-230(2003)* |
戦略的創造研究推進事業 発展研究 (SORST) | 遺伝情報制御分子としてのステロイドレセプター | 平成14年度~16年度 | 加藤 茂明 (東京大学 元教授) |
Cell, 113:905-917(2003) Nature Cell Biology, 5:224-230(2003)* The EMBO Journal, 23:1598-1608(2004) Oncogene, 23:6000-6005(2004) |
戦略的創造研究推進事業 総括実施型 (ERATO) | 加藤核内複合体プロジェクト | 平成16年度~21年度 | 加藤 茂明 (東京大学 元教授) | The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 315:545-552(2005) The EMBO Journal, 24:3881-3894(2005) Genes to Cells, 10:1095-1102(2005) The Journal of Biological Chemistry, 281:20-26(2006) Genes to Cells, 12:1281-1287(2007) Nature Cell Biology, 9:1273-1285(2007) Molecular and Cellular Biology, 27:7486-7496(2007) Molecular and Cellular Biology, 27:7947-7954(2007) Molecular and Cellular Endocrinology, 265-266:168-173(2007) The EMBO Journal, 26:764-774(2007) Archives of Biochemistry and Biophysics, 460:166-171(2007) Nature Cell Biology, 9:604-611(2007) Genes to Cells, 13:1279-1288(2008) The Journal of Biological Chemistry, 284:32472-32482(2009) Nature, 461:1007-1012(2009) Molecular and Cellular Biology, 29:83-92(2009) Nature, 459:455-459(2009) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 106:9280-9285(2009) Molecular Cell, 36:340-347(2009) |
3.措置の内容
- (1)研究費などの返還請求
- 東京大学および加藤元教授に対し、不正行為に該当する研究費の返還を求めます。
- (2)申請等資格制限
- 加藤元教授、栁澤元助教授、北川元特任講師に対して、JSTの全事業への申請資格および共同研究者として参加する資格を平成28年4月から平成35年3月までの7年間制限します。また藤木元助手に対して、JSTの全事業への申請資格および共同研究者として参加する資格を平成28年4月から平成31年3月までの3年間制限します。
4.再発の防止について
このような事態が再発しないよう大学の研究者などへの周知徹底を行うなど、研究活動の不正行為の防止のための改善措置を確実に実施されるよう大学に要請いたします。
今後、JSTにおいてこのような事態が二度と起きないよう、大学その他研究機関などと連携し再発防止に全力を挙げて取り組み、研究者やJST役職員の倫理観の再徹底、保持に万全を期すとともに、信頼回復に努めてまいります。