JSTは、平成26年3月及び10月に国立大学法人北海道大学(大学)から提出を受けた調査報告書等に基づき、その内容を精査するとともにJSTが直接執行した研究費(JSTの直執行研究費)についても調査した結果、大学に研究委託したJST事業に係る研究費(大学への委託研究費)の執行において一部で不適正な経理処理があったほか、JSTの直執行研究費においても一部で不適正な経理処理があったことを確認しました。
このため、JSTは、大学、大学の研究者及び取引業者に対して、以下の措置を講じました。
1.不適正な経理処理の内容
調査の結果、大学の研究者13名が、JST事業に参画し、不適正な経理処理に関与していました。なお、私的流用はありませんでした。
(1)大学への委託研究費
大学への委託研究費において、大学の研究者13名が、平成16年度~22年度で架空請求と預け金、品名替え(会計書類の書き換え)により研究費の不適正な使用を行っていたことを確認しました。不適正な研究費総額は、11,249,396円(直接経費)でした。(別表参照)
なお、大学の報告書によると、「預け金」は、架空発注により大学から支払われた研究費を取引業者に預け金として管理させ、翌年度以降に他の研究用消耗品等を納品させていたものでした。また、「品名替え(会計書類の書き換え)」は、取引業者に取引実態と異なる品名や数量を書換えさせた虚偽の会計書類を作成するよう指示し、大学から研究費を支払わせたもので、研究用消耗品の購入に充てるため、当該消耗品でない品名をもって会計伝票の書換えを行ったものでした。
(2)JSTの直執行研究費
JSTが直執行研究費において、大学の研究者5名(上記(1)と重複)が、平成17年度~19年度で取引業者4社(このうち1社は倒産)との間で架空請求と預け金による不適正な使用を行っていたことを確認しました。不適正な研究費総額は、3,642,977円(直接経費)でした。(別表参照)
(別表)
合計額 | 11,249,396円 | 3,642,977円 | ||
研究者 | 事業名(平成年度) | 不適正研究費 | 申請等資格停止年数 | |
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大学への委託研究費 | JSTの直執行研究費 | |||
遺伝子病制御研究所 特任教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (18~21年度)1,735,356円 | (19年度)197,820円 | 4年 |
工学研究院 教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (18年度) 193,074円 | 2年 | |
歯学研究科 教授 | 重点地域研究開発推進事業 | (17年度)1,045,037円 | 4年 | |
触媒化学研究センター 教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (18年度)859,845円 | 4年 | |
先端生命科学研究院 教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (19年度)330,660円 | 3年 | |
先端生命科学研究院 教授 | 戦略的創造研究推進事業 | (18年度)900,000円 | 3年 | |
戦略的国際科学技術協力推進事業 | (20年度)600,012円 | |||
電子科学研究所 特任教授 | 戦略的創造研究推進事業 | (19年度)190,425円 | 3年 | |
農学研究院 教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (18年度)214,414円 | 3年 | |
薬学研究院 教授 | 戦略的創造研究推進事業 | (16年度)499,995円 | 3年 | |
薬学研究院 教授 | 地域イノベーション創出総合支援事業 | (18年度)300,000円 | (17~19年度)2,043,797円 | 4年 |
同 准教授 | 3年 | |||
薬学研究院 教授 | 戦略的創造研究推進事業 | (17~18、20~22年度)1,036,897円 | (17年度)501,360円 | 4年 |
地域イノベーション創出総合支援事業 | (17年度)34,487円 | |||
理学研究院 教授 | 先端計測分析技術・機器開発事業 | (16~17年度)4,209,194円 | 4年 |
2.措置の内容
- (1)研究費等の返還
- 大学、及びJSTと直接取引のあった取引業者に対し、不適正な経理処理により支払われた研究費について、当該研究費、間接経費及び遅延損害金(年5%)の合計金額の返還をそれぞれに求め、その全額を返還させました。
なお、JSTと直接取引があり、倒産した取引業者1社に対して機構が支払った不適正な研究費は、これに関与した研究者1名から遅延損害金(年5%)を加算した合計金額が返還されました。 - (2)申請等資格停止
- 大学の研究者13名に対し、JSTの全事業への申請資格及び新たに共同研究者として参加する資格を平成27年度から2年間~4年間停止することとし(別表参照)、通知しました。なお、13名のうち、直執行研究費で不適正な使用のあった研究者5名に対しては、併せて文書により厳重注意を行いました。
- (3)取引停止
- JSTと直接取引のあった取引業者3社(倒産した1社を除く。)に対し、JSTにおける全事業に関する取引を平成27年3月26日から2社については2ヶ月、又1社については1ヶ月間停止することとし、通知しました。また、併せて文書により厳重注意しました。
- (4)厳重注意と再発防止策の徹底
- 大学に対し、本件は遺憾であり、このような事態を招いたこと、及び調査に長期間を要したことついて厳重注意するとともに、かかる事態が再発しないよう研究者等への周知徹底を図るなど再発防止策を確実に実施するよう要請することとし、文書により通知しました。
なお、JSTの直執行研究費については、既に過年度において改善措置を講じており、今後、国の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成26年2月18日付改正・文部科学大臣決定)の対応として、JST役職員等に対して一層の注意喚起を図ることとしました。 - (5)その他
- 本件で措置された上記(2)の応募等の申請及び参加制限については、文部科学省に文書により通知しました。