メタゲノム統合解析システムの開発

代表研究者: 黒川 顕 (東京工業大学大学院生命理工学研究科 教授)

①目的

海洋や河川、土壌や大気中、さらにはヒトや動物の腸内、皮膚、口腔内など地球上のあらゆる環境には、その環境に特化した多様な細菌が群集を形成し生存しています。これら環境の根幹を形成する細菌群の総体としての生命システムを明らかにするために、細菌群をまるごとゲノム解析する「メタゲノム解析」が実現化しつつあります。しかし、メタゲノム解析では細菌群をまるごとゲノム解析するために、得られるゲノムデータは膨大なものとなります。本研究では、この膨大な情報から有益な知識を効率よく発見するためのデータベースの構築ならびに新規バイオインフォマティクス技術の開発を実施しています。

②研究概要

メタゲノム遺伝子を比較し、環境の違いによる生命システムの相違を効率よく発見するための各種技術開発を実施し、それらを統合した解析パイプラインの構築をおこなってきました。メタゲノム研究の中でもヒト腸内細菌叢メタゲノム研究においては、ヒトの抗体全体の60%が腸管で作られていると見積もられていることからも、腸内細菌叢とヒトの腸管免疫系との因果関係の解明が重要な課題となってきています。このような背景を受け、本継続課題では、開発した解析パイプラインのヒトメタゲノムに特化した「HumanMetaBodyMap」の構築を目指すとともに、細菌群集をとりまく環境因子の各要素を記述したデータ「メタデータ」とメタゲノムデータとを組み合わせて解析するための解析技術の開発を目指します。また、新型シーケンサー由来の膨大なメタゲノムデータを、スーパーコンピュータを利用することでリアルタイムに解析可能なシステムの構築を目指します。

③研究概要図

黒川顕メタゲノム統合解析システムの開発

④成果

これまで本研究で開発してきた基盤技術を、ヒト腸内細菌叢のメタゲノム解析に応用しその成果を発表しました(http://metagenomics.jp/)。また、シークエンサーで得られる短い配列断片からも正確に遺伝子領域を予測するソフトウェアMetaGeneAnnotatorを発表し、世界中のメタゲノム研究にて利用されています。また、すべての細菌がもっている16S rRNA遺伝子の配列を利用した大規模な群集構造解析用の解析ツールVisualization tool for taxonomic Compositions of microbial community (VITCOMIC)を公開しています。
(2011/03/01更新)