実践による超分子ネットワークモデリングシステムの開発

代表研究者: 白井 剛 (長浜バイオ大学バイオサイエンス学部 教授)

①目的

「生物学は積み木細工ですね」と言ったのは、意外なことに理論物理学者の湯川秀樹博士であったといいます。この言葉は的を射ています。なぜなら我々は今まさに"積み木"をしなくてはならないからです。この場合の積み木はタンパク質・DNA・RNAなどの生体分子です。生体分子は積み木の様に寄り集まって超分子複合体という巨大な構造を作って働き、生命活動を支えています。しかし、この超分子複合体の模型を効率よく構造解析したり、計算機を使って予測する手段はまだありません。この研究の目的はバイオインフォマティクス(計算機生物学)研究と構造解析実験が一丸となって超分子複合体のモデリングツールBOXを開発することです。

②研究概要

この研究では、ゲノムの複製や維持に必須の3R(DNA複製・修復・組み換えの頭文字)超分子複合体の立体構造をX線結晶解析と電子顕微鏡解析で決定しながら、その構造解析の過程で必要でありながら欠けている超分子複合体モデリングツールを開発・整備しています。例えば、既に解明された構造の中に参考になる複合体があれば、それを利用して分子模型を作るためのプログラムや、複合体の構成要素がどの場所で相互作用して超分子を形成するかを予測するメソッドを開発しています。特にゲノム計画によって大量に蓄積したデータベースの情報を、新たな超分子複合体構造の解明に有効に活用するためのツール開発に力を注いでいます。

③研究概要図

白井剛実践による超分子複合体モデリングシステムの開発

④成果

本研究により、3R(DNA複製・修復・組み換え)系の要となる、DNAポリメラーゼ-PCNA(DNAの留め金分子)-DNAやDNAリガーゼ-PCNA-DNA超分子複合体の構造解析にはじめて成功しました(図参照)。また、開発したモデリングツールが、これらの超分子複合体の構造を組み立てる能力を持っている事が分かりました。ツールで構築した模型は実験で得られたデータと良く似ています(同じく図参照)。開発されたSIRDシステム(PDB2次データベース構築検索システム)のβ版はインターネットを通じてアクセス可能です。(SIRDシステム(β版)[外部リンク])。
(2010/05/07更新)